となりのソータロー

第８章

２５

　だが…その様子を、神林君は冷ややかな目で見守る。
「そんなことをしても、ムダだと思うけどなぁ」
妙に悠々とした態度で言うので…
「やってみないと、わからないじゃないかぁ」
宗太郎はムッとした顔をして、言い返す。
「ふぅーん、そうか？
　まぁ、それなら…気が済むまでやれば、いいさ」
やけに落ち着いた口調で言うので…
まさか、あのバンドエイドを、はがされてしまったのか？
ようやく宗太郎は、思い至る。
（えっ？いつ？そんなすきって…あったか？）
思わずギョッとした顔になる。
だが思い返してみても、ピンとはこない。


「まんまと、引っかかったな」
　まるでいたずらっ子が、自分がしたことを見つかったような
顔をする。
「あれは、ダミー。
　本当は、別の場所にロックがあったんだ」
やけに楽し気にそう言った。
「えっ？」
　そんなばかな！
あわてて宗太郎は、扉に取り付く。
ガツッと力まかせに、押すのだけれど…
やはり、ビクともしない。
さらに、引こうとしても、動く気配がしない。
はははははは…
我が意を得たり、という顔付きで、神林君の笑い声が響く。
「だましたな！」
宗太郎が、彼に飛び付こうとしたら、
「おっとぉ」
両手を下げて、降参のポーズを取る。
「キミの視点は、実によかったよ。
　急ごしらえとはいえ、よく考えたと思うよ。
　だけど…かなり惜しかったなぁ」
肩をすくめて、にぃっと笑った。