となりのソータロー

第6章

１０

　そんなバカな！
　絶対に…ちがう！
そう思うのに…清子に言われるうちに、その可能性がかなり高い、
ということに、宗太郎は気が付く。
「でも！」
宗太郎は、それでも言い返す。
「清子だって、何も覚えてはいないんだろう？」
最後の切り札を切ると、ぐうの音も出ず、清子はハッと息を飲む。
「そうなんだよねぇ」
ガクンと肩をおとした。
「いいセン、いっていると、思うんだけどなぁ」
清子は、かなりくやしそうだ。
あんまりしょげているので、宗太郎もつい、慰めたくなる。
「だけどまぁ～決まったわけじゃあないし、ボクの記憶違いかも
　しれないし」
　とにかく、あの転校生が、リョウくんのはずがない。
なぜかかたくなに、宗太郎はそう思っていた。

「そんなの、簡単でしょ？」
　いきなり清子が言う。
「へっ？」
「聞けばいい」
「誰に？」
「本人に！」
「はぁっ？」
こともなげに言う清子に…
確かめられないから、こうして悩んでいるのに、とそう思う。
「だって…違ったら、どうする？」
「それも、簡単よ！」
何てことない、と清子は言う。
「そんなの…
　あっ、勘違いでした、ごめんなさいって言えば？」
簡単なことでしょう？
清子は、自信満々に胸を張る。
「う～ん、それよりもさぁ～
　誰かに、聞けたら一番いいんだけどねぇ」
それには、清子もすぐに答えられない。
「その当時のことを、よく知っている人とか…」
「そんな人って、いる？」
そんなデリケートな話…
あまり大っぴらには、出来ないはずだ。
なぜか宗太郎は、そう感じていた。