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第1章
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「もう~何を知らんぷりするのよぉ」
メガネの女の子は、ケラケラと笑いながら、彼の顏をのぞき込む。
「え~っ!だってさ、キヨコは遠くへ行ったんじゃあなかったっけ?」
(まぁ、もっとも自分も、そうなんだけどな)
ソータローは、心の中で、そう思う。
この清子は、幼い頃、ソータローの家の近くに住んでいた。
いわゆる、幼なじみ、というやつだ。
じいちゃんの家に、しょっちゅう遊びに来ていたので、両方の
親たちが、この二人のことを見て、
「いずれ、アイツのことを、もらってはくれないか」
冗談めかして、そう言った。
「あ、うちの清子も…ちょっと人見知りが激しいから、よかったらそれで!」
本人たちを抜きにして、勝手に口約束したのだ。
遊びの延長戦とはいえ、半分本気でもあったし、家ぐるみの付き合いだったので、
清子はよく、一人でソータローの家にも、泊まりに来たりしていた。
ソータローの親が離婚する時には、
「必ず、迎えに来てね!約束よ!」
引っ越しの日、清子は涙ぐみながら、そう言った。
それは、ソータローにとっても、淡い初恋だった。
ソータローの中では、キヨコは小さな女の子のままだ。
引っ越しの時に、ちぎれるようにして、手を振ってくれた…という美しい想い出
として、今でもソータローの心に残っているのだ。
メガネの女の子は、ケラケラと笑いながら、彼の顏をのぞき込む。
「え~っ!だってさ、キヨコは遠くへ行ったんじゃあなかったっけ?」
(まぁ、もっとも自分も、そうなんだけどな)
ソータローは、心の中で、そう思う。
この清子は、幼い頃、ソータローの家の近くに住んでいた。
いわゆる、幼なじみ、というやつだ。
じいちゃんの家に、しょっちゅう遊びに来ていたので、両方の
親たちが、この二人のことを見て、
「いずれ、アイツのことを、もらってはくれないか」
冗談めかして、そう言った。
「あ、うちの清子も…ちょっと人見知りが激しいから、よかったらそれで!」
本人たちを抜きにして、勝手に口約束したのだ。
遊びの延長戦とはいえ、半分本気でもあったし、家ぐるみの付き合いだったので、
清子はよく、一人でソータローの家にも、泊まりに来たりしていた。
ソータローの親が離婚する時には、
「必ず、迎えに来てね!約束よ!」
引っ越しの日、清子は涙ぐみながら、そう言った。
それは、ソータローにとっても、淡い初恋だった。
ソータローの中では、キヨコは小さな女の子のままだ。
引っ越しの時に、ちぎれるようにして、手を振ってくれた…という美しい想い出
として、今でもソータローの心に残っているのだ。
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