疲労の極み

ツヨシ

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疲れている。
自分じゃどうしようもないほどに。
常に頭が痛い。
めまいや吐き気もしょっちゅうだ。
幻聴まで聞こえる。
幻聴なんて生まれて初めてだ。
幻覚も見た。
幻覚なんて生まれて初めてだ。
仕事をフルタイムでして、残業まである。
そして生まれてまだ数ヶ月の女の子の子育て。
その上炊事洗濯などの家事全般。
子守は私が仕事の間に義母が少し手伝ってくれるがそれだけだ。
私の負担は大きい。
一日で自分の時間は一切なく、睡眠時間も削られている。
夫はいくら言っても何もしてはくれない。
私に文句を言うだけだ。
もう疲労は極限まで達している。
今日も仕事から帰ってすぐに子守。
さっきまで泣いていたが、ようやく眠ってくれた。
義母はもういない。
赤ちゃんを一人のこして帰ってしまった。
いつものことだ。
夫が言うには今日は会社の飲み会だそうだ。
帰ってくるのは日付を超えてからだろう。
今日は夫の世話をしなくていいんだ。
もう何もしたくない。
冷蔵庫の中にまだ食べられるものがあるはずだ。
それを電子レンジで暖めて食べることにしよう。
本当につらい。
せめて赤ちゃんさえいなければ。
――赤ちゃん、赤ちゃん、赤ちゃん……。
私はレンジの蓋を閉め、スイッチを押した。
そしてソファーで横になった。
――!
何か聞こえてきた。
こもったような赤ちゃんの鳴き声だ。
もう起きたのか。
ベビーベッドを見たが、赤ちゃんはそこにいなかった。
――えっ?
泣き声はまだ聞こえる。
いったいどこから。
そして私の目は、電子レンジに釘付けになった。

       終
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