いおり

ツヨシ

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いおり

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毎年夏休みに一週間ほど、東京をはなれて母と二人で母の実家に遊びに行く。

母の両親、つまり僕から見て祖父母の二人が住んでいる家だ。

古いが、かなり大きな家である。

昔は庄屋というものであったらしい。

父には仕事があり、その間は東京で一人暮らしだ。

母の実家は人里はなれた山の中にある小さな集落だ。

全ての住人がお互いにことをよく知っており、そこにプライバシーなどほとんどない。

母と僕が集落に着く前から、住民全員がいつやって来るのかを知っていて、祖父母の家に着くと、着いたと言うことがインターネットよりも早く知れわたる。

そんな場所である。

一週間の間にやることは、東京ではできないこと。

虫捕り、川遊び、山登りなどだ。

集落には小学生が二人しかいない。

偶然にも二人とも僕と同い年だ。

一人は女の子で名前はユキ。

もう一人は男の子で名前はワタル。

別に二人は双子の姉弟というわけではない。

別々の家の子供だ。

僕が母の実家に着いてからすぐ、二人とも家に遊びに来た。

「何して遊ぶ?」

ユキが言う。

おませな女の子なので、三人の中ではリーダー格的存在になっている。

普段は優しいが、怒らせるとけっこう怖い。

「うーん、どうしようかな?」

ワタルが言った。

僕もおとなしい方だが、ワタルは僕よりもさらにおとなしい。

気が弱く、ユキの前で自分の意見を言ったことが、ほとんどない。

「川遊びでいいんじゃない」

僕が言った。

最終的にはユキが全て決めるが、僕の意見はそこそこ採用されている。

「川遊びか。それがいいね」

ユキが言ったので川遊びに決まった。

夏のむせるような日差しの下では、川に入るのが一番だ。



川はそれほど遠くない。

三人とも水着などは持っておらず、そのままの服で川に入る。

山の中だがこのあたりは傾斜が緩やかで、川の流れも穏やかだ。

三人で泳いだり水を掛け合ったりしていると、ふと川べりに立っている一人の子供が目にはいった。

――えっ?

この集落で、自分達以外の子供を見るのは初めてである。

それはユキもワタルも同じ。

三人で穴が開くほど見つめたその子供は、八歳くらいの女の子だった。

時代劇で見るような、古めかしくて真っ赤な着物を着ている。

水から上がり、みんなで女の子のところに駆け寄った。

最初に口を開くのは、当然ユキだ。

「ねえ、あなた、だあれ?」

女の子はユキの顔をじっと見つめていたが、何も言わなかった。

ユキも黙っていたが、我慢できずに何か言おうとした時に、女の子が先に言った。

「私は、いおり」

――いおり?

僕はずいぶん古めかしい名前だと思った。

それはユキもワタルも同じだろう。

ワタルは特に反応を見せなかったが、ユキは笑いをこらえるのに必死のようだ。

そのままで誰も何も言わなかったが、ユキがようやくのこと笑いを押さえ込むのに成功して、言った。

「どこから来たの?」

いおりは東の山を指差した。

あの山を越えると、ここと同じような集落がある。

そこから来たという意味なのだろう。

ただ山を越えてここまで来るには、大人の足でもそうとう時間がかかる。

こんな小さな子供が一人で山を越えて来たと言うのか。

それとも車か何かで、誰かに送ってもらったのだろうか。

再びみんな静かになったが、やがていおりが僕の顔を見ながら言った。

「遊びに行ってもいい?」

「えっ?」

それは僕の祖父母の家に遊びに行く、という意味なのだろうか。

考えたが、それしか思いつかない。

「いいよ」

断る理由はない。

友達は多いほうがいいに決まっている。

「それがいいね」

ユキも喜んでいる。

ユキの同意を得たので(僕の祖父母の家なのだが)それに決まった。



「ただいま」

家に着くと祖母がいた。

「おかえり」

「おなかすいた」

僕を差し置いてユキが言った。

「ちょっと待っててね」

奥に引っ込んだ祖母は、しばらくすると戻ってきた。

「はい」

盆の上には梨があった。

しかしその梨は、三等分に切られていた。

いつもならこれでいいが、今日は数が足らない。

「あれっ、数がたらないよ」

ユキがすかさず言った。

「えっ?」

祖母はみんなを見わたした。

その視線は僕とユキ、そしてワタルを交互に追っていたが、僕のすぐ横に座っているいおりの方に向くことは、一度もなかった。

「数は合っているけどねえ」

「でも……」

ユキが言いかけたが僕が止めた。

「うん、おばあちゃん、合っているよ」

「でしょう。びっくりしたじゃないの」

祖母は笑いながら奥へと引っ込んでいった。

「ちょっと、どういうことよ」

ユキが口をとがらせる。僕は答えた。

「見えてないんだ」

「えっ?」

「おばあちゃんにはこの子は見えてないんだ」

「えええっ?」

いおりが口を開いた。

「いいのよ。いつものことだから」

「……」

「……」



三つの梨を、果物ナイフを不器用に使って四つに分けて、食べた。

いおりはちゃんと梨を食べている。

普通の生きている子供にしか見えない。

四人の間に会話というものはなかった。

黙々と梨を食べた。食べ終えるとようやくユキが言った。

「おばあちゃんに見えないなんて、あんたいったい何なのよ」

いおりが答える。

「何だと言われると困るけど、私は子供にしか見えないみたいなの。ずっと昔から」

「ずっと昔から」

と僕。

「うん、ずっとずっと昔から」

ユキが突っ込む。

「ずっとずっと昔からって、あんたいったい何歳なのよ」

「うーん、何歳かと聞かれても、私もよくわかんないんだけど」

この時、ずっと黙っていたワタルが口をはさんできた。

「ざしきわらし」

「えっ?」

「えっ?」

二人で同じ声をあげた後、いおりが言った。

「ざしきわらしねぇ。そう呼ばれたことも何回かあったわ」

「えええっ!」

「えええっ!」



ワタルが珍しく「もう一度川に行こう」と自分の意見を言った。

特に反対する理由は何もない。

四人(なのだろうか?)で川にむかった。

川で遊んでいる姿は、どこから見ても生身の子供だ。

本当にざしきわらしなのだろうか。

そう考えながらしばらくいおりを見ていると、急に僕のほうをふり返り、とことこと、こちらにやって来た。

そして僕の目の前までくると、笑いながら言った。

「はっきりさせといた方が、いいかもね」

来ている着物はずいぶんと古めかしいが、その口調はユキと大して変わらず、平成生まれの少女のしゃべり方だ。

いおりはゆっくり川べりに行き、僕のほうを見た後、再び川に目をむけた。

そして歩き出した。

人間なら川にずぶずぶ入っていくところだ。

さっきのいおりもそうだった。

着物が濡れるのもかまわずに、腰まで川につかっていた。が、今度は違った。

すたすた歩いてゆく。

川底ではない。

水面を、水の上を歩いているのだ。

そのままむこう岸まで歩いてゆき、そして帰りも水の上を歩いて帰ってきた。

「これでわかったでしょう」

「……」

「……」

「……」



そう言えば、ざしきわらしは子供にしか見えないと、聞いたことがある。

僕がそんなことを考えていると、ワタルが言った。

「ざしきわらしが居る家って、福がやって来ると聞いたことがあるけど」

ワタルは、ざしきわらしが現実に存在することに関して、三人の中では一番違和感がないようだ。

「うん、小さな幸せってかんじで、派手なことは全然無いけれど、ちゃんと福はやってくるわよ」

「ふーん、その家がうらやましいな」

僕が言うと、ざしきわらしが僕のほうを見た。

「なに言ってるの。私は今日からあなたの家に住むのよ」

「えっ?」

「ちょっと前まで山のむこうにある家に住んでいたんだけど、そこの子供はみんな村を捨てて、老夫婦二人だけになったの。そのうちおじいさんが死んで、おばあさんも亡くなってしまって。つまり家に誰もいなくなっちゃったのね。実はねえ私は、無人の家に長くいると死んじゃうの。だから家を移ろうと思ったんだけど、あの村は何百年もいたから、もうあきちゃったのね。だから居場所を変えることにしたのよ。で、どこがいいかとうろうろしていたら、あなたに出会っちゃったのね。だからあなたの家に住むことに決めたわ」

「……ああ、そう」

さっき「うらやましい」と言った僕だが、いざ自分の(正確には祖父母の)家に人間でないものが住みつくとなると、不安がないわけではない。

なにせいおりは、立派な妖怪なのだから。



遊ぶだけ遊んだ後、祖父母の家に帰った。

「じゃあ」

「またね」

ユキとワタルは自分の家へと帰ってゆく。

いおりはそのまま縁側に座ったままで、何も言わない。

僕は話しかけるのをためらった。

このままユキもワタルもいないのに会話を続けて、祖母か母にでも見られたら、頭がおかしくなったと思うかもしれない。

それはまずい。

いおりも何も言わず、そのまま外を見ている。

二人並んで縁側で何もない時間を過ごしていると、奥から声がした。

「ご飯だよ」

祖母だ。

「はーい」

奥へむかった。

途中でいおりの方を見ると、じっと座ったままで、僕を見ることはなかった。



夕飯を食べ終えて戻ってみると、いおりの姿はなかった。

――どこに行ったんだろう?

その想いに答えるかのように、声がした。

「ここだよ」

上からだ。

見ると天井からさかさまに、いおりの首だけが飛び出している。

けっこう驚いた。

そんな僕を見て、いおりは笑った。

そしてすっと天井の中に首を引っ込めた。

「またね」

天井から声だけが僕の耳に届いた。



次の日もいおりは居た。

三人で遊んだ。

次の日も。

そして明日、東京に帰るという日、いおりは姿を見せなかった。

ユキが言った。

「どこいっちゃったのかな?」

僕は答えた。

「この家に住んでいるらしいから、どこにも行かないと思うけど」

「ふーん。でもざしきわらしが住んでいるなんて、なんだかうらやましいわ」

「妖怪だけどね」

ワタルが口をはさんできた。

「何かあったのかも」

僕はワタルを見た。

「えっ。何かって、何が?」

「そこまではわからないけど」

ユキが言った。

「まあ、いいじゃないの。あの子もいろいろと忙しいのかもしれないし」

結局、どこかに居るのだろう、と無難な意見に落ち着いた。

どこで何をしているのかは、わからないが。



いおりのことが心配だ。

ワタルの言うように、何かあったのかもしれない。

「そろそろ寝る時間よ」

「はーい」

母にそう言われて、とりあえず明日様子を見ることにした。

ふとんに入り、うとうとしていると、縁側に通じる年季の入った障子が、丸く光り始めた。

――なんだあ?

見ていると、その円の中心からいおりが出てきた。

障子は閉まったままで。

こちらに歩いて来るが、いつもとどことなく様子が違う。

下をむいたままで、動きに元気がない。

あたりは闇に包まれているが、いおり自身が弱々しく光っているために、なんとか見ることができる。

そして僕は気がついた。

いおりは額から、人間と同じ赤い色の血を流しているのだ。

「いおり、どうしたの? 大丈夫?」

いおりが僕の声に反応して、ようやく顔を上げた。

「大丈夫よ。ありがとう」

「いったい何があったの?」

「うん。この家に善くないものがやって来たの。だから追い出してやったわ。でも、ちょっと怪我しちゃったけど」

「善くないもの?」

「そう、善くないもの。そうそう現れるものではないけど、たまたま運が悪かったみたいだわ」

話が本当だとすると、いおりはこの家を守ってくれたことになる。傷つきながらも。僕はなんだか熱いものがこみ上げてきた。

「……ありがとう」

いおりが笑った。

「いいのよ。これが私のするべきことなんだから」

「でも」

いおりは何も言わず、僕のふとんに入ってきた。

そして僕の手を握った。

「私の力の源は人間の生命力だけど、特に子供の生命力は私にとって、とても大事なものなのよ。大人よりもはるかに強いから。だからしばらくこうしていれば、いずれ傷も治るわ。……それと、たまに勘違いする人がいるけど、別に子供の生命力を奪い取っているわけではないのよ。子供には何の害もないわ。だから安心してね」

「そうなんだ」

「……」
ふとんの中で手をつないでいると、なんだかいおりがとてつもなく愛しいものに、感じられてきた。

いおりの方をむこうとしたが、恥ずかしくて見ることができなかった。

いおりも何も言わずに、手をつないだままだ。

時間の流れがいつもよりもやけに遅く感じられる。

このまま朝を迎えるのかとも思ったが、僕はいつしか眠りについていた。



朝起きると、いおりが枕元に座っていた。

「ありがとう。すっかりよくなったわ」

「よかった」

母がやってきた。

「起きたの。今日は帰るんでしょう。はやく仕度しなさい」

「うん」

実家までは遠い。

朝早くにこの家を出なければならない。

いおりを見ると、僕を見て笑っていた。本当に大丈夫そうだ。



準備が整い外にでると、ユキとワタルが来ていた。

「また来年ね」

「うん、また来るよ」

「……」

駅まで送ってもらう車に乗り込み後ろを振り返ると、いおりがユキとワタルの後ろにいた。

三人にむかって手を振る。

いおりが小さく振りかえす。

ユキとワタルも手を振った。

車が動き始めた。



翌年、また夏がやってきた。

祖父母の家に着くと、ユキとワタルが先に来ていた。

「ねえ、なにして遊ぶ」

「ユキちゃんの好きなことでいいよ」

「……」

結局川遊びだ。

暑いという理由で、どうしても川遊びが多くなってしまう。

三人で遊んでいると、ユキが言った。

「いおり、来ないね」

僕は一瞬体が固まった。

昨夏の、血を流していたいおりを思い出したからだ。

ユキが目ざとく気づく。

「どうしたの?」

「……いや、なんでもないよ。ちょっといおりが心配になっただけ」

「ふーん」

西の空が赤く染まるまで遊んだ。



夜、眠りにつこうとすると、いおりの声が聞こえてきた。

「心配しないでね」

「いおり、どうして今日は来なかったの」

声だけで、いおりの姿は見えない。

「ちょっと恥ずかしくて」

「はずかしい?」

「そう、恥ずかしいの。ちょっと」

「意味わかんないよ。何が恥ずかしいの?」

「明日になればわかるわ。明日はみんなに会いに行くから」

「……そう」

「もう、おやすみなさい」

「うん、おやすみなさい」

いおりの「恥ずかしい」と言う言葉が気にはなったが、僕はそのうち眠りについた。



翌朝、縁側で座って待っていると、ユキとワタルがやって来た。

「おはよう」

「おはよう」

「……」

「あれっ、いおりはいないの?」

ユキが聞いてきた。

「まだ来ないね。ゆうべ、今日はみんなに会いにいく、と言ってたんだけど」

「話したの?」

「うん」

「ふーん。だったらそのうち来るんじゃない」

「そう思うよ」

「……」

「じゃあ先に遊びに行こう」

「そうだね」

「……」

ユキの提案で、今日は虫取りに決まった。



「大猟大猟」

帰るころには、ユキの虫かごの中は満員電車のような状態になっていた。

「ただいま」

自分の家でもないのに、ユキが言った。

「おかえり。じゃあ梨を持ってきますからね」

祖母が言う。

この家は、ほんと梨だけは不自由しない。

三人が祖母の持ってきた梨をそれぞれ口に運ぼうとした時、突然目の前に何かが現れた。

「いおり?」

僕が話しかけると、答えが返ってきた。

「うん」

いおりだった。

しかしいおりは、身体が半透明に透き通っていた。

いおりの身体を通して、後ろの景色が見える。

「どうしちゃったの?」

ユキがびっくりするくらいの大声を出した。

それを聞きつけて、祖母と母がそろって顔を出してきた。

「おや、どうしたんだい?」

「いったい、どうしたの?」

僕はあわてて答えた。

「お母さん、おばあちゃん、なんでもないんだよ。ユキが蜘蛛を見てびっくりしただけだから」

「おや、そうかい?」

「そうなの」

二人とも怪訝そうな顔はしていたが、再び奥に引っ込んで行った。

「ちょっとお。私、蜘蛛なんかぜんぜん怖くないわよ。素手で捕まえられるんだから」

「知ってるよ。でもああ言わないと」

僕はまだむくれているユキは無視して、いおりに聞いた。

「それ、どうしたの?」

「うん、子供の成長は早いからね。知っているとは思うけど、私は子供にしか見えないのよ」

「……じゃあ」

僕は思わず身を乗り出した。

いおりが笑って答える。

「うん、いっしょに遊べるのは、今年で終わりね」

「そんなあ」

今度はユキが身を乗り出した。

「しょうがないの。私はそうなるように生まれついているんだから。こればっかりは、どうしようもないの」

「……」

「……」

「……」

「そのかわり、今年は去年よりもたくさんたくさん遊びましょうね」

「うん」

「そうしましょう」

「……うん」

話は決まった。

そうなると子供は立ち直りが早い

。何をして遊ぶかの相談になった。

川遊びをしようか、虫取りをしようか、それとも。

楽しい時間は早く過ぎる。

まるで夢のよう。



東京に帰る日、僕は泣いた。ユキも泣いた。

ワタルも泣いた。

「さようなら、さようなら、さようなら」

「さようなら、さようなら、さようなら」

「さようなら、さようなら、さようなら」

何度も何度も言った。

大人達はみな戸惑った。

今までこんなことは無かったのに。

まるで永遠の別れのようだ、と。



今年も夏がやってきた。

僕はまた、祖父母の家を訪ねた。

「いらっしゃい」

ほどなくして、ユキとワタルがやって来た。

最初は一年ぶりの再会にはしゃいでいたが、やがて三人とも我に返ったかのように静かになった。

「あの子、もう会えないんだね」

ユキが言った。

「うん」

と僕。

「この家には居るんだろう?」

ワタルが聞いてきた。

「うん、いると思う。でも見えないし、声も聞こえない。そうなるって、いおりが言っていた」

「……」

三人が縁側に座って無言で外を見ていると、祖母がやってきた。

「おや、もう帰ってきたのかい。今日はずいぶんと早いねえ」

ずっと居たのだが、祖母はどこかに遊びに行って、帰ってきたと思っているようだ。

「じゃあ、ちょっと待っててねえ」

待っていると予想通り梨を持ってきた。

一つの梨を三等分に切った、いつもの見慣れたやつだ。

「はいどうぞ」

祖母は梨を置くと、奥に引っ込んだ。

三人で手を出すことなくそのまま梨を見つめていた。

が、僕はふと思い立ち、梨を四つに分けて一つを端に置いた。

「それって……」

ユキがその梨を見る。

「うん、いおりの分だよ」

みんなで梨を見つめていると、サクッ、と音がしたかと思うと、梨の一部がかき消すように消えた。

そしてサクッ、サクッと二度三度の音とともに、梨は完全に消えてなくなった。


        終
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