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しおりを挟むそして四日目には、まだみんながおばあちゃんを探して走りまわっていると言うのに、食事やトイレなどの必要なとき以外は、部屋にこもるようになってしまった。
「おばあちゃんがいなくなって、ショックをうけたんだろう」
お父さんもお母さんもそう言い、そっとしておくことにしたようだ。
六日目、この雪の中で何日も生きられる人はいないだろう、と言った人がいた。
それはみんなが思っていたことだが、誰も口に出さなかったことだ。
しかしそれをきっかけに、捜索活動が鈍ったのは確かだ。
お父さんも仕事をするようになったし、お母さんも日常に戻りつつある。
それこそ家族以外の人は、完全におばあちゃんがいなくなる前の生活に戻った。
警察もあきらめのムードだ。
十日を過ぎたころには、もう誰もおばあちゃんを探さなくなっていた。
そんな中、おじいちゃんだけが相も変わらず部屋に引きこもっていた。
しっかりと入り口に鍵をかけて。
それでもおじいちゃんになにか言う人はいなかった。
好きなようにさせてあげなさい、と言うのがお父さんの意見で、お母さんも同様のようだ。
そしてそれは僕も同じだった。
結婚して五十年以上たつと言うのに、いまだに恋人のように仲のいい夫婦。
その片割れがいなくなったのだ。
しかも生きている望みは極めて薄い。
残された者が平常心でいられるわけがない。
そんな中、おばあちゃんがいなくなって二週間が過ぎた頃のことだ。
その日僕は、おじいちゃんの部屋の前を通ろうとした。
そして気づいた。
部屋に入り口の引き戸が少し開いていることに。
僕は思わずその隙間から部屋を覗き込んだ。
そこにおじいちゃんはいた。
その時おじいちゃんは、胴体のない首だけになったおばあちゃんを両手で持ち、そのおばあちゃんに口づけをしていたのだ。
終
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