祖父の声

ツヨシ

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祖父が死んだ。
なんと百四歳だ。
何人もいる孫の一人に孫がいると言う大往生だった。
葬式は葬祭場の人が驚くほどの人数が集まった。
そして全てが落ち着いた頃、俺は祖父の遺品整理に呼ばれた。
子供も孫もたくさんいる中で俺が呼ばれたのは、生前の祖父と特に親しかったからだ。
遺品を整理していると、その中に古びたカセットテープレコーダーがあった。
令和の時代にまだこんなものがあるのかと手に取ってみてみると、中にカセットテープが入ったままだ。
さして期待せずに再生ボタンを押してみると、なんとテープが回り再生されたのだ。
聞こえてきたのは浪曲だった。
――そういえば浪曲が好きだったな。
いまだに動くレコーダーと、伸びることも切れることもなく回るテープを少しばかりの感動を持って聞いていると、急に音声が途絶えた。
――どこか壊れたのか?
見ればテープは相変わらず回っている。
すると突然浪曲ではなく祖父の声がはっきりと聞こえた。
その声はこう言っていた。
「あいつはわしが殺したんじゃ」
――えっ?
確かに祖父の声だった。
あいつ? 
誰のことだ。
殺した? 
祖父が誰かを殺したのか。
考えているといつの間にか祖父の声から浪曲に戻っていた。
俺は再生をやめテープを巻き戻した。
そして聞いてみたが、浪曲しか聞こえてこなかった。
俺は何度も繰り返して祖父の声を聞こうとした。
しかし二度と祖父の声を聞くことはできなかった。

       終
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