21 / 43
21
しおりを挟む
近くにいる人のほとんどが、眉をしかめてとしやを見ている。
俺はその人たちと目があう度に、申しわけなさそうに頭を下げて、としやのわき腹を肘でつついた。
しかしそんなもので大人しくなるとしやではなかった。
としやが一旦黙ったのは、高知に着いて電車が止まったときだ。
それでも電車を降りてしばらく歩くと、再び先ほどと同じような状態になった。
たださっきと違って移動し続けているので、同じ人間がずっと傍にいることはない。
なので俺はもうほおっておくことにした。
早口で何かをしゃべりながら、としやはどんどん歩く。
行き先は事前に調べてわかっているようだ。
大通りから裏通りに入り、さらに裏に入った。
駅の周りの騒がしさが嘘のように静かなところだ。
「こっちこっち」
別にどっちだと聞いたわけでもないのに、としやがそう言って前方を指差した。
そこには五階建てでアパートともマンションとも言い難い、どっちつかずの建物があった。
とはいえ俺には、アパートとマンションの境目が、よくわからないのだが。
「あそこの二階だな。203号室」
としやは階段を上りだした。
俺がついて行くと、階段を上りきったとしやが突然走り出した。
――えっ?
としやの走った距離は短かった。
俺はその人たちと目があう度に、申しわけなさそうに頭を下げて、としやのわき腹を肘でつついた。
しかしそんなもので大人しくなるとしやではなかった。
としやが一旦黙ったのは、高知に着いて電車が止まったときだ。
それでも電車を降りてしばらく歩くと、再び先ほどと同じような状態になった。
たださっきと違って移動し続けているので、同じ人間がずっと傍にいることはない。
なので俺はもうほおっておくことにした。
早口で何かをしゃべりながら、としやはどんどん歩く。
行き先は事前に調べてわかっているようだ。
大通りから裏通りに入り、さらに裏に入った。
駅の周りの騒がしさが嘘のように静かなところだ。
「こっちこっち」
別にどっちだと聞いたわけでもないのに、としやがそう言って前方を指差した。
そこには五階建てでアパートともマンションとも言い難い、どっちつかずの建物があった。
とはいえ俺には、アパートとマンションの境目が、よくわからないのだが。
「あそこの二階だな。203号室」
としやは階段を上りだした。
俺がついて行くと、階段を上りきったとしやが突然走り出した。
――えっ?
としやの走った距離は短かった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
初めてお越しの方へ
山村京二
ホラー
全ては、中学生の春休みに始まった。
祖父母宅を訪れた主人公が、和室の押し入れで見つけた奇妙な日記。祖父から聞かされた驚愕の話。そのすべてが主人公の人生を大きく変えることとなる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる