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第四章 ダンジョンを観光地化させる俺

108、決め事をしよう

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 突然足を生やしたディーネを、俺達はマジマジと見ていた。
 というか驚き過ぎて気がつかなかったけど、何か凄い違和感がある。

「あのさ、ディーネなんか縮んでないか?」
「足を作る為に身体のバランスが崩れただけであるぞ?」
「ディーネさん、マリーさんと同じぐらいの身長ですね。凄く可愛いです~!」
「これじゃ、俺がロリコンだとさらに責められそうな気がするんだけど……」

 マリーとディーネを連れて町を歩いたら、すぐに捕まりそうな予感しかない。
 そんな事を考えてる俺にマリーが冷静に言った。

「いや、ディーネの姿はロリというよりショタに見えるのじゃが……?」
「ショタ?」

 確かにそう言われれば、体格が少しマリーよりはいいかもしれない。
 でも俺からしたら髪は長いし美人顔だから、女の子にみえるんだけど……。

「マリーがそう思うのは仕方がない事であるぞ。モンスター自体に性別はないゆえ、中性的になってしまうものであるからな」
「成る程、ディーネは元の姿そのまま縮んだけど、マリーは自分でその体型を作ってるからちゃんと女の子だと……?」
「その通りじゃ、しっかり女性という物を研究したうえで作り出しておるから、ディーネのような中途半端ではないのじゃ!」

 そう言われても俺にはその細かい違いがよくわからないんだけど……。

「とにかく、色々驚いたけどディーネが俺の手伝いをする為に、働きたいという事はわかったよ」
「なら、働いても良いのであるか?」

 ディーネが働くのは心配だけど、現状人手が足りないのも事実だった。
 だから俺は3つの条件を出す事にしたのだ。

「働いてもいいけど、そのかわりに俺と約束をしようか」
「約束……分かったのであるぞ!」

 今のディーネは側から見たら人に見えるかもしれない。
 だけど完全な人には見えない理由があった。

「それじゃあ、その1。ディーネは肌の色が青いままだし、ヒレや鱗もあるままだろ。それを隠す為に長袖で襟元まである服を着用する事。それと顔も隠した方が良いから俺と同じお面を被る事」
「服……仕方がないから着るのであるぞ!」
「お面は俺が用意する。服についてはセシノ、頼めるか?」
「はい、従業員の服を改造してディーネさんに合わせた可愛い服にしましょう。それとお面の種類は服に合わせたいので、後で相談させて下さい」
「ああ、わかった。これで一つ目は大丈夫と」

 俺は後でディーネに見せる為のメモ書きをしておく。

「それじゃあ、その2だ。ディーネはその姿でも水がないと干からびるだろ?」
「そ、それはそうであるが……」
「だからディーネには水がいつでもある、お風呂周りの管理をお願いしたい。レッドが近くにいるけど、喧嘩せずにやれるか?」
「任せておくがよい、こんなゴロゴロしてる役立たずではなく妾がしっかり管理してやるのであるぞ」

 肩にいるレッドが凄いディーネを睨みつけているけど、多分俺の為に喧嘩しないように耐えてくれてるのだろう。
 これなら二人はなんとかやっていけるかもしれないな……。

「じゃあ、その3。これで最後だ」
「もう最後であるか? これなら妾でも全て楽勝にこなせる気がしてきたのであるぞ!」
「それはこの話を聞いてからにしてくれよ。じゃあ最後に、俺からのお願いだ。どれだけ苛つく事があっても絶対に人を傷つけたりしないでくれ」
「……それは、何故であるか?」

 そんな事、モンスターであるディーネに理解してもらうのは不可能だとわかってる。
 だけどこれは、コイツらを守る為でもあるんだ。

「それはお前らがモンスターだからだよ。もし人を傷つけて、お前たちがモンスターだってバレたらきっと人間は一斉にお前を倒しに来る」
「妾は雑魚なんぞが束になっても勝てぬぞ?」
「大体は雑魚かもしれない。だけどもしかしたら、その中にはお前を倒せる冒険者がいないとは限らないんだ。それに俺は、お前たちを失いたくないからな……」

 そう言う俺の言葉にディーネは首を傾げていた。

「モンスターである妾たちは倒されるのは当たり前の事ゆえに……マスターは変な事をいうのであるな?」
「ディーネからしたらそうかもな」

 モンスターの常識が俺たちと違うのはわかっている。だけど俺はコイツらといる時間が好きなんだ。
 だからそれを壊されるのが凄く怖かった。

「でもそういう訳だから何かあったら俺を呼べ。迷惑な客は、お前らの代わりに俺が追い出してやるからな」
「……それならば、妾はマスターの為に3つとも約束を守るのであるぞ!」
「よーし、偉いぞディーネ」

 俺は最近の癖で、ついディーネの頭を撫でてしまったのだ。

「マスター」
「あっ、これはその……!」
「妾はもっと頑張るゆえ、頑張ったらまた撫でて貰えるのであるか?」

 何故か予想外の反応に、俺はコクコクと頷いた。

「あ、ああ。頑張ったら沢山撫でてやるから、今はここの完成を頑張ろうな!」
「わかったのであるぞ!」

 そう言うと、ディーネは勢いよく湖へと潜っていった。
 その泳ぎっぷりに、魚の尻尾じゃなくても泳げるのかと俺は感心してしまったのだ。

「じゃあ湖の中はディーネに任せて、俺たちはフラワーアートを完成させるか?」
「少し待って下さい、もう少しで下絵が完成しますので!」

 どうやらセシノは俺とディーネが話している間に、フラワーアートの完成図を描いていたようだ。
 その横ではマリーが口出ししているのか、二人で話し合いをしながら楽しそうに作っていた。

「すみません、お待たせしました」
「いや、大丈夫だ。俺もその時間で花の種類を見ていた所だからな」
「それなら、青色のお花ってどれぐらいありましたか?」
「うーん、それがな……青色の花はあるにはあるんだけど、特殊な薬草とか珍しい材料になりそうなレアな花が多いから、そんなに沢山植えられないかもしれないな」

 もしレア物を沢山植えたりしたら、冒険者によってすぐに荒らされるのは目に見えてる。

「それなら、もう青色じゃなくてもいいです」
「え、青じゃなくていいのか?」
「お魚さんには赤色とか黄色とか色々あるって聞きますし、あえてあり得ない色で作って見たら可愛いかなと……」
「ワシは可愛いのなら何でもいいのじゃ」

 色取り取りの魚……。
 それはそれで華やかでいいな!

「うん、俺もいいと思う」
「本当ですか? それならさっそく作ってみましょう」

 そんな訳で、俺たちはようやくフラワーアートを作り始める事にした。
 しかしお花を植えるのは簡単でも、ここからでは上手く絵が出来ているのかわからない為、俺たちは四苦八苦する事になったのだ。
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