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第四章 ダンジョンを観光地化させる俺
88、小結界
しおりを挟む俺は結界を多重に顕現させ、男たちの様子をじっくり観察していた。その姿はよくみると透明な結界が何箇所も体を貫通し、正方形に区切られていた。
今まで俺はプロテクト・ゾーンを人体を貫通するように使用した事はない。というより前までその方法では上手く結界が顕現しなかったのだ。
しかし今の俺はそれが結界内であれば出来ると何故か確信していたため、上手くいった事に握り拳を作っていた。
よし、このままコイツらにはスキル活用方法の実験体になってもらう。最終的に恐怖でビビらせて、二度とアンナに近づかないように約束させればいいだけだからな。
そう思っている間に、叫び過ぎて固まっていた男たちがようやく自分たちの状況を理解したのか、再び叫び出したのだ。
「ひぃぃ!! どうなってんだ体が裂けてる?」
「いや裂けちゃいねぇけど、さっきから全く体が動かねぇよ!!」
男たちの様子からどうやら結界を体に食い込むように展開しても、体が切り取られたりバチっと痺れたりするわけではなく、体が動けなくなるだけのようだ。
だけどもしかしたら直で魔力を吸収している為に吸収率は何倍も良いのかもしれない。
そう考えながら男たちを見ると、何故か一人だけ上手く結界を避けたのか偶然その隙間に入ってしまったのか、狭い結界に隔離されていた。
「俺だけ閉じごめられてるんだけど、お前ら助けてくれぇ!!」
「ふざけんな、俺たちも動けねぇんだって!!」
「こ、このお面野郎……何が目的だ!?」
まあ、形は違うけど全員上手く身動きが取れなくなっているからいいかと、俺は少し不安そうな男たちを見てニヤリと笑いながら言った。
「簡単に言えば、お前らは俺にとって邪魔な存在なんだよ」
「意味わかんねぇ、どう言う事だ!?」
「ようするに、お前らにはもう二度と俺とアンナの前に現れないと約束して欲しいわけだ」
「いや意味わかんねぇし、ふざけんじゃねぇぞ!! アンナは俺たちの復讐相手だ。会えねぇと復讐できねぇじゃねえか!!」
その言葉に俺はつい笑ってしまう。
だってこんな糞どもがアンナに復讐をするなんてありえない。
「くそ、何がおかしい!!」
「だって、これからお前らにはアンナの復讐を諦めてもらうつもりだからな」
「お前……俺たちを脅すつもりなのか?」
「ああ、その通りだ」
「まさかアンナの為なのか……いや、あのクソ女助ける為とか嘘だろ!?」
「それはお前らが知らなくていい事だ! それと俺はお前らが復讐を諦めずに、何処まで恐怖に耐えてくれるのか少し楽しみだからさ、頑張って耐えてくれよ?」
正直な話、コイツらはアンナに全てを押し付けるような屑野郎だから、どうせすぐに諦めると思っていた。
だからそんな糞男たちにどれだけプロテクト・ゾーンを活用できるのか、今はとにかく試させてもらうしかない。
そう思いながら俺は結界内に作った新しい小さな結界、小結界と呼ぶ事にしたそれを少しずつ動かす事にした。小結界は俺がいる場所からでも、パズルを動かすように指を振るだけで動いてくれた。
それならと、俺は結界が貫通している一人の男を小結界ごと動かしてみたのだ。
その男には5つほどの小結界が肩や腰を貫いていた。なかなかバランスが良さそうなその姿に、俺は結界ごと男を持ち上げてみる。
「おお、いい感じに持ち上がるぞ。これは何処まで上昇できるんだろうな?」
「お、おい! やめろ降ろせ、降ろせったら降ろしてくれよ!! お、俺は高所恐怖症なんだぞ!!」
そう叫ぶ男を無視して、その高度をどんどん上げていく。俺は三人を囲っている結界ごと高く伸ばし続け、男を結構な高さまで持ち上げていた。
そして調子に乗った俺は男をとても高くまで上昇させてしまった為、今ではその姿がとても小く見えていた。
それを横で見ていたイアさんは、物騒な事を言いだしたのだ。
「あらまあ、もしあそこから落としでもしたら流石に即死ですわね」
「いやいや落としませんって、今は脅すだけですから。とりあえず高度はこれぐらいでいいですかね? 彼にはあそこで暫く反省してもらいましょう」
そう言って他の二人を見ると、宙吊りの仲間が悲痛な叫び声をあげているのにビビったのか、顔を青くして言葉が出ないようだった。
そんな一人を指差して俺は言った。
「それじゃあ次はお前にしようかな?」
「お、俺!? や、やめてくれ!! 俺は悪くねぇ、悪くねぇんだ!!!」
そんな叫び声を無視した俺は結界に貫通されて動けないもう一人の男、頭上約一人分ほどの高さに沢山の小結界を生成していた。
そして正方形の小結界をそのまま男に向けて自由落下させてみる事にした。
「いってぇ!! な、なんだバチッとしたぞ……一体空から何が降ってやがる!? いだだだ、やめろ……とめてくれ! もう、ちくしょう痛ぇって、もうわかったから。諦める、俺は諦めるから!!」
いくらなんでも早すぎる降参に、俺はガッカリしてしまう。
こんな弱すぎる意思で、アンナに復讐するとか言っていたのが俺には許せなかった。
だから俺は許す条件を付け加える事にしたのだ。
「残念だけど三人が全員一緒にアンナを諦めてくれるまでは、これを止めるつもりはないからな?」
「な、なんでだよ!! って、痛っいででっ!!」
痛がる男に、正方形の結界たちは次々降り注いでいく。
質量はなくても、この小結界はぶつかるとバチッと痛いらしい。そして何度かぶつかると弾けて消えるみたいだ。
それを見ながら、もしかしたら俺は小結界で攻撃する事が出来るのではないかと考えていた。
だから俺は、試しに一つの小結界を勢いよく男にぶつける。
「っぐぁあっ!!」
小結界は男の腹にぶつかると、バチッと大きく弾けて消失した。
なんか地味に痛そうだし、中々の威力があるかもしれない。そう思った俺はもう少し確認する為、男に何個かぶつけて見る事にした。
「こんなのはアンナが感じた屈辱に比べたら大した事ないし、まだまだ耐えてくれるよな?」
その言葉に男が顔を青ざめた瞬間、小結界が勢いよく男にぶつかり弾けたのがよく見えたのだ。
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