65 / 168
第三章 温泉を作る俺
65、露天風呂に入ろう
しおりを挟む一旦着替えを済ませた俺は二人と一緒に露天風呂まで来ていた。
そして今はマリーの作ったマジックアイテムを取り付ける場所を探しているところだった。
「このアイテムはかなり熱くなるようじゃから、直接取り付けるのはやめた方がいいと思うのじゃ」
「それなら露天風呂とは別に温度を調整する為の、源泉所を作る必要があるわけだな……」
そう思い俺たちは庭園温泉と、露天風呂の間に更に小さめの源泉用溜池を作り、そこにも露天風呂で余った岩を敷き詰める。
そして隙間には魔力を込めたマジックアイテムを置いてゆく。そして暫く待つと、源泉はボコボコと沸騰する程の温度になってしまった。
「これは流石に熱すぎるな……どうやって温度を調整するべきか?」
「バンさん、近くに川が有りませんでしたか?」
「いや、無いんだよなー。それならもういっその事川ごと作るか!」
俺は開いていたダンジョンリフォームの地形を見て、少し離れている川を分岐させてここまで伸ばす。
作っている川は簡単に飛び越えられるぐらいの幅なので、特に橋を作る必要もなさそうだ。
「あとは、源泉から露天風呂までの道のりをグリグリ作って、その道の途中で川の水を入れて調整すれば……どうだ?」
温度がどれぐらいだろうかと思って、俺は合流地点のお湯に手を入れてみた。
「あっつ!」
「バンさん、大丈夫ですか?」
「火傷はしてないから大丈夫だ。それに少し熱くないと道中で少しは冷めるよな?」
「確かにそうですね、露天風呂に着く頃には丁度よくなってるかもしれません」
二人でお湯が流れていくのをじっと見てしまう。
だけど、お湯が溜まるにはまだまだかかりそうだった。
「よーし、まだ時間がかかりそうだし。俺はせっかくだからフォグとか他の奴らも呼んでくるよ」
でもフラフは水がダメだし、確認したらアーゴもダメだったので最終的に呼べたのはフォグだけになってしまった。
そして露天風呂に戻ってきた俺は今、フォグと一緒に露天風呂用に作った衝立の裏で静かに二人を待っていた。
現在はすでに、セシノとマリーが露天風呂に入っているのだ。
「マスター、後で俺も入っていいのか?」
「ああ、俺たちは二人が出た後に一緒に入ろうな~」
俺はフォグをモフモフしながら、先程お湯が溜まった露天風呂に先に入ったセシノとマリーを思い出す。
マリーは性別がないからともかく、流石にセシノが入っているところに俺も一緒に入る訳にはいかない。例え服を着て入っていたとしても……。
「なんだろう、年頃の娘を持つ父親の気分だな。だけど服を着ながら温泉に入れるってマリーは言ってたけど、どういう事なんだろうか……?」
「ていうか、服着てるなら一緒に入っても良かったんじゃねぇのか?」
「いや、そこはセシノに拒絶されたらショックじゃん……」
こんなおっさん臭する人となんて嫌、とか言われたら立ち直れない……いや、気をつけてるからそんなに匂わないと思うけどさ。
ため息をついた瞬間、衝立からヒョコッとセシノが顔を出した。その髪は軽く濡れている為、まだ入ってる最中なのがわかってしまい、違う意味でドキッと心臓に悪い。
「バンさん! これなら一緒に入れそうなので、せっかくだから一緒に入りましょう」
「は、え? ちょ、ちょっと!」
凄く嬉しそうなセシノに手を掴まれた俺は、そのまま引き摺られるように露天風呂まで連れてこられていた。
そこにはすでにマリーが、タオルをおでこにのせて幸せそうに目を閉じていた。
「これは、いいものじゃ~。体が溶けるのう……」
よく見ると、その体の半分は本当に溶けてスライム化していて、ホラーみたいになっていた。
そして俺は掛け湯をして、服を着たまま露天風呂に体を沈めた。
「あ~、これは疲れに効くな……」
「ふふ、こうして一緒に入れてよかったです」
「だけど服を着たままだと体が重いな……」
「もっとゆっくりしたい人用に、専用の服を作るか別の露天風呂を作るか考えた方がいいかもしれませんね」
「確かにそうだけど……」
俺は露天風呂に浸かっているセシノをじっくり見て、ほんのり赤く色づいた肌に視線を彷徨わせてしまう。
「これは服を着てても男女分けた方がいいと思うぞ?」
「え、そうですか?」
俺は、少し透けているセシノの服を指さした。
それに気がついたセシノは更に顔を赤くすると、自分を抱きしめながら、叫んだ。
「キャッ!」
「なんだなんだ? セシノの嬢ちゃん、マスターに何かされたのか?」
遅れて入ってきたフォグが、露天風呂に浸かりながら不思議そうに言った。
俺は申し訳なくなり、フォグの横に移動する。
「いえ、フォグさん何でもないです……。でも確かに気になる方はいるかもしれませんね、服を透けないものにするとか、少し考えた方がいいかもしれません」
「うーん、そこは問題が発生したら考えようか」
「そ、そうですね。それに今日はようやく露天風呂が出来たんです! ゆっくり楽しみましょう」
「ああ、そうだな」
そう思って横を見たらフォグの毛が気になってしまい、俺はヘタっている毛を撫でる。
「いい石鹸で洗えばもっとフワフワになるかな……」
「何言ってんだ、マスター。俺たちはモンスターだから、フワフワにしてもすぐに戻っちまうぞ?」
「あー、そうか。でも今のままでいてくれるならそれでいいさ」
「ふふ、でもフォグさんを洗うバンさんは少し見てみたいですね」
この大きな体のフォグを洗う俺を想像すると、休みの日の父親みたいだなと思ってしまい、俺は遠くを見つめてしまう。
「楽しそうなところ悪いのじゃが、温泉の鑑定結果が出たのじゃ。効能を知りたくないかのぅ?」
「さっきまで溶けてたのに、そんなこと調べてたのか?」
「勿論じゃ、ワシをなんだと思っておるのじゃ」
「万能スライム?」
「うむ……言われ方はあれじゃが、あっておるのじゃ」
ため息をついたマリーは立ち上がり、俺のところまでくるとその小さな体を俺の膝と膝の間に埋めたのだ。
0
お気に入りに追加
641
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
異世界物語 ~転生チート王子と愉快なスローライフ?~
星鹿カナン
ファンタジー
目が覚めるとそこは、ファンタジーのような異世界で、僕はよくあるように、赤ちゃんだった。前世の記憶は、朧気であるものの神様との話は、よく覚えていた・・・・・・
転生王子の異世界チートスローライフ?
スローライフ要素は3章~4章まで殆ど無いかもしれません。
人名のスペルは、英検4級すら受からない作者が、それっぽい音になりそうな綴りを書いているだけなので、鵜呑みにして、参考にする様なことはしないでください。特に深い意味がある訳でもありません。
地図等、自作していますが、絵はかなり苦手なので、大まかなイメージを掴むための参考程度にしてください。
その他、物語の解説などには、地球上の仕組みの中に、実在するものと実在しないものが、混ざっています。これらは、異世界感を演出するためのものなので、ご注意ください。
R指定は特に出していませんが、怪しい部分が多いので、気になる方は、自主規制をお願いします。
現在最新話まで、本編のための前日譚のような外伝ストーリーです。
本編の時間軸に辿り着くまでの長い前日譚もお付き合いいただけると幸いです。
最終更新日:4月15日
更新話:3-027
次回更新予定日: 4月20日
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる