上 下
55 / 168
第三章 温泉を作る俺

55、竜を祀る

しおりを挟む

 レッドが仲間になったのはいいが、俺はとある事で悩んでいた。

「このまま帰るとレッドのサイズが大き過ぎて、他の冒険者にバレるよな?」

 正直な話、俺にはどうやってレッドを宿屋へと連れて行けばいいのか全くわからなかった。
 悩みながら何か良い方法は無いかと、俺はアーゴを見ながら呟いた。

「レッドがアーゴみたいに小さくなれればなぁ~」
「なれるにきまってるだろ」
「は……? レッドも小さくなれるのか!?」
「もちろん、なにせ俺様は最強だからな!」

 そう言って、レッドは俺の手に収まるぐらい小さくなっていた。

「ふふん、小さくならないと隠れられないところがあるだろ? 俺様はサボるためにスキル全振りだからな!」
「そんなドヤ顔で言われても……」
「そう言う訳だから、ボスの交代早くしろ!」

 そう促された俺は、仕方なくダンジョンリフォームを展開して、火山のボスを赤竜からその周りを飛ぶフェニックスにそっと変えておいた。

「マスター、フェニックス、オレ、ツタエテオク」
「そ、そうか。それは助かる」

 確かに黙っておくのはよくないから、ここは全部アーゴに任せておこう……。
 俺はダンジョンリフォームを閉じると、レッドを改めて見た。

「これでお前はもう戦わなくても多分大丈夫だから、俺たちと一緒に行こう!」
「マスター、俺様のためにサンキュー!」

 そう言って肩に乗ったレッド連れて、俺は宿屋に戻るためにフォグのところに向かう事にした。
 勿論、アーゴには露天風呂用の岩を運ぶのを手伝って欲しいとお願いしておいたので、どの鉱物にするか決めないといけない。
 でも今は庭園温泉のが先だから、後回しにしよう。

「フォグ、帰るぞー」
「おお、マスター! 良く無事だった……ん、その肩の竜って……」
「ああ、火山の元主だった赤竜のレッドだ。今日から俺たちの仲間になる」
「俺様はレッドフェニックス! 気軽にレッドと呼ぶ事を許してやるぞ!」

 凄く上からな態度に、フォグは何度か瞬きすると首を傾げた。

「コイツ、ドラゴンなのか鳥なのかよくわからない愉快なやつだな。俺はフォグウルフのフォグだぜ。森エリアの総括をしてるから、よろしくな!」
「森エリアの総括か、よくそんな面倒な事してられるな……俺様には無理ってやつだな!」

 そう話しながら笑う二体をみて、これなら仲良く出来そうだと俺は安堵する。

「よし、それなら宿屋まで頼むぞフォグ!」

 俺が背に乗ると、フォグはすぐに駆け出したのだったのだった。
 ようやく宿に着いた俺は、すぐにレッドを試したくて、そのまま温泉予定地へと移動していた。

「おお、少しだけ花と草が整えられてる……」

 どうやら、セシノが気になるところを少し直してくれたようだ。
 しかしそのセシノは、今はもう見当たらない。だいぶ時間も経っているし、もう宿に戻っているのだろう。
 本当はセシノにも見てほしかったけど、俺の好奇心は今だといっているので仕方がない。
 そう思い、俺はレッドに向けて庭園のど真ん中にある神殿を指差した。

「さあ、レッド! 今日からここがお前の家だ」
「おお!!」

 喜ぶレッドを見ながら俺は思っていた。
 神殿の真ん中には、やはり祀るものがあった方がいいよな。だからレッドを置いておけばちょうどよさそうだ。

「レッドはあそこの中であれば、好きなところにいてくれていいからな。ゆっくりと寛いでくれよ」
「そうかそうか! それならば俺様の寝床は~」

 そう言って楽しそうに飛んでいくレッドを見守っていると、案の定神殿の真ん中にある台の上に寝転んだ。

「あ~、ここがいいってやつだ。もう動きたくねぇよ~」

 レッドのいるその台は、水に薄っすらと沈んでいるように見える。
 どうやら体が完全に水に浸からないため、レッドにとっても丁度いい場所なのかもしれない。
 それを確認した俺は、池の中に手を入れて温度を確認する。

「流石にまだ温まらないか……」

 お湯になるまでどのくらい時間がかかるのかわからないから、温めてる間に宿屋の方を見に行くか。

「レッド! この水が温かくなるまで、俺は少し席をはずすからなー!」
「おー!」

 神殿から嬉しそうな声がしたので、多分大丈夫だろう。
 俺はフォグを連れて宿屋に戻ろうかと考えて、先程レッドからトロッコで逃した三人の冒険者の事を思い出す。
 もしかするとこの宿に来てるかもしれないから、フォグを連れて行くのはやめた方が良いだろう。

「じゃあ俺は一人で宿に戻るけど、何かあったらまた呼ぶかもしれない。でもダンジョン優先で行動してくれていいからな」
「わかったぜ、マスター」

 俺はフォグを置いて、宿屋の扉を開けた。
 そこには受付係をしてくれてる、マリーがポツンと立っているだけだった。

「マリー、ただいま」
「マスター、お帰りなのじゃ。どうやら火山の方が大変だったみたいじゃが……見た感じ、怪我はしておらんようじゃな?」
「ああ、この通り無事だよ。それよりもここに若い冒険者が3人来なかったか?」
「それじゃったら、今は食堂の方でセシノと話しておるぞ?」
「ちゃんとここまで来てくれたのか……よかった」

 あの3人が無事にここまで辿り着けた事に俺はホッとする。

「しかし、あの3人はもしやするとまた厄介事を持ち込んで気たかもしれんのじゃよ?」
「それはどういう……」
「直接行ってみればわかるのじゃ」

 そう言われて気になった俺は、すぐに食堂へと向かう事にしたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?

Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。 貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。 貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。 ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。 「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」 基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。 さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・ タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

【完結】元・おっさんの異世界サバイバル~前世の記憶を頼りに、無人島から脱出を目指します~

コル
ファンタジー
 現実世界に生きていた山本聡は、会社帰りに居眠り運転の車に轢かれてしまい不幸にも死亡してしまう。  彼の魂は輪廻転生の女神の力によって新しい生命として生まれ変わる事になるが、生まれ変わった先は現実世界ではなくモンスターが存在する異世界、更に本来消えるはずの記憶も持ったまま貴族の娘として生まれてしまうのだった。  最初は動揺するも悩んでいても、この世界で生まれてしまったからには仕方ないと第二の人生アンとして生きていく事にする。  そして10年の月日が経ち、アンの誕生日に家族旅行で旅客船に乗船するが嵐に襲われ沈没してしまう。  アンが目を覚ますとそこは砂浜の上、人は獣人の侍女ケイトの姿しかなかった。  現在の場所を把握する為、目の前にある山へと登るが頂上につきアンは絶望してしてしまう。  辺りを見わたすと360度海に囲まれ人が住んでいる形跡も一切ない、アン達は無人島に流れ着いてしまっていたのだ。  その後ケイトの励ましによりアンは元気を取り戻し、現実世界で得たサバイバル知識を駆使して仲間と共に救助される事を信じ無人島で生活を始めるのだった。  ※この作品は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さん、「ノベルアップ+」さん、「ノベリズム」さんとのマルチ投稿です。

ダンジョンから始まる異世界生活〜異世界転移した勇者なのに誰も拾ってくれませんから、ダンジョン攻略しちゃいます〜へなちょこ勇者の成長記

KeyBow
ファンタジー
突然の異世界転移。いきなりダンジョンに放り出された。女神と契約し、生きる糧を得る為にダンジョンに挑む。転移し、ダンジョンに挑む。転移してから2日目から物語はスタートする。朴念仁なのに周りには美人が集まる?

お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

処理中です...