上 下
45 / 168
第二章 開業準備をする俺

45、二人の冒険者は(サバン視点)

しおりを挟む

ここでサバン視点を2話。
冒険者のその後がわかります。

ーー▼ーー▽ーー▼ーー▽ーー▼ーー



















 俺の名はサバン!
 暑苦しいギルド職員と言われたら間違いなく俺だと、胸を張って言える男の中の漢。
いつも締めているこのトレードマークの鉢巻が男らしさを上げているはずなのに、愛しのコルトは全く靡いてくれない。
 そんなクールな所も好きだからいいのだ。
 そんな事を考えながら、先程バンに託されたイベント申請書を直接ギルド長であるコルトに渡して、受理をしてもらった所だった。

「それにしても、よく受理されましたね?」

 俺の横に並んで歩いているのは、報告書をまとめ終わったらしいクラウだ。

「イベントと言うものは、ギルドの不利益や非人道的な物じゃない限り殆ど通るんだ。ただコルトには、直接渡しにくるんじゃないと蔑まれてしまったがな……!」
「いや、そこは聞いてないです……って凄く嬉しそうで気持ち悪っ……」
「いやぁ、あの冷ややかな目! 凄く最高だったんだぞ!!」

 コルトの可愛いいところは、一言では言い表されない。
 すでに逃げようとしているクラウの肩を掴み、一から十までコルトの可愛いところを言おうとしたのに、ちょうど目の前の冒険者が何かを落としたのを見てしまい、真面目な俺は声をかけずにはいられなかった。

「ん、お前ら何か落としたぞ!」
「あぁ? 別にそれはゴミだからいらねぇよ!!」

 そうキレる二人組の男を無視して、落とした物を拾う。
 それはどう見ても冒険者タグで、俺は持ち主の名前を見て固まった。

「お前ら、コレをどこで手に入れた?」
「はぁ? ギルド職員には関係ねぇだろうがよぉ!!」
「そうだぞ、それはもういらないって言ってんだからもう良いだろう!」
「そう言う訳にはいかなそうだからな」

 俺はスキンヘッド野郎の腕を掴んで、逃げられないようにする。

「おい! クソ職員、いてぇだろうが。手を離しやがれ!!」
「そうだ、離してやれよ! 俺たちが何したっていうんだよ、やめないとぶっとばすぞ!!」
「ギルド内で職員に怪我を負わせたものは罰則があるのを忘れたのか?」
「うっせぇなぁ、知ってるっつーの!!」
「くっそ、まじうざいぜこのおっさん!!」

 そう切れ散らかす二人組を見て、クラウがコソッと教えてくれた。

「コイツら素行が悪いので有名な、ナインとサーボですよ。それでもランクだけは高いので周りも強く言えなくてですね……」
「成る程」
「それから先程もコイツら問題を起こしてまして、言いがかりをつけてとある冒険を階段から突き落とし、そのうえ投げ飛ばしたらしいんですよ」

 その話に俺はタグを改めて見た。
 どう考えてもその被害者はこのタグの持ち主であるバンだろう……。
 あいつはヘラヘラしてるせいなのか、昔もよく絡まれていたからな。

「良くわかった。お前ら、事情を話すまでは俺から逃げられると思うなよ」
「ああ!?」
「くっそ、ナイン俺は先行くぞ!」
「お、おい!!」

 そう言ったのはサーボの方なのだろう。
 一人で逃げようと駆け出した。

「クラウ」
「はいはい。スキル発動許可頂きましたよっと!」

 クラウが腕を上げて指をパチンと鳴らすと、走るサーボを囲うように檻が現れた。
 クラウのスキル『キープ・プリズン』は一度捕まると、簡単に逃げる事はできない。

「なっ! 何だよこの檻!!」
「コイツも入れとくか」

 俺はついでにナインの方も檻に入れてもらう。
 二人は騒いでいるが、気にならない。

「おい、出しやがれ!!」
「なんで俺たちがこんな目に!?」

 クラウが檻を持ったまま移動する準備が終わったようだった。

「よしそのまま、俺の部屋連れて行くぞ」
「じゃあお二方一緒に行きましょうね~」
「お、おい!! 何だこの檻、動くとすっごく揺れて……」
「めっちゃ気持ち悪っ!? ヤベぇ……吐きそ」
「や、やめろ!! 絶対吐くなよ!」

 騒いでる二人を無視して俺たちはダンジョン調査班の部屋へと、移動を開始した。

「全く、班長の怒りをかうなんてコイツらはいったい何したんですか?」

 歩きながらクラウにそう聞かれたが、俺は曖昧に答える。

「さぁな?」

 コイツらは俺のダチを、ただでさえ人間不信気味のダチを傷つけたのだ。
 それ相応の対応はさせてもらう事にしよう。

「あー、班長。凄い悪人みたいな顔してますけど……?」
「それは半分もとからだ」

 俺の顔は厳つくて鬱陶しいと、よくコルトに文句を言われるからな……。
 そんな話をしている間に目的地にたどり着いた俺たちは、檻ごと男たちを連れて部屋に入った。

「えっ! 一体なんですの!?」

 俺たちを見るなり驚きの声を上げたのは、部屋で待機していたマヨだ。

「マヨちゃんごめんね~、少し頼みたい事があるんだよ」
「一体何ですの?」

 流石クラウ、俺が何も言わなくてもお願いしたかったことを先に言ってくれるとはな。
 二人がコソコソ話し合ってるのを見て、俺はウンウン頷いてしまう。

「わかりましたわ、すぐにかけあってみますのでそっちは頼みますわよ!」
「はい、お願いしますね~」

 部屋を出て行くマヨを見送ると、クラウはようやく男たちを檻から放り出した。

「いった!!」
「くっそお……ぎもぢわる……ぅぷっ!」
「お前は、吐くなよ!? それにしても酷い目にあった」

 男たちはまだ目眩がなおってないのか、床に手をついて動けないようだった。
 しかし、俺は容赦なく男たちに問いただす。

「それで、お前たちはこのタグの持ち主に何をしたんだ?」
「はぁ……? そいつがテイマーとかいうクソ雑魚だから、冒険者はやめたほうがいいって親切にいつてやっただけだろうがよ!!」
「親切だと……?」
「そうだよ! 女や子供を連れ歩いてる舐めた野郎には、わからせてやらないといけないだろ?」

 確かに側から見たら舐めてるように見えるのはわかるが、それにしてもコイツらの言い訳は悪質すぎる。

「ならば何故階段からつき落としたんだ?」
「落としたんじゃねぇよ!!」
「そうだ! アイツが勝手に落ちたんだから、俺たちは関係ないぞ!?」
「は?」

 その発言に俺は一瞬思考を止めたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥
恋愛
 フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。  フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。  だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。  侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。  金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。  父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。  だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。  いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。  さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。  お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。

異世界物語 ~転生チート王子と愉快なスローライフ?~

星鹿カナン
ファンタジー
目が覚めるとそこは、ファンタジーのような異世界で、僕はよくあるように、赤ちゃんだった。前世の記憶は、朧気であるものの神様との話は、よく覚えていた・・・・・・ 転生王子の異世界チートスローライフ? スローライフ要素は3章~4章まで殆ど無いかもしれません。 人名のスペルは、英検4級すら受からない作者が、それっぽい音になりそうな綴りを書いているだけなので、鵜呑みにして、参考にする様なことはしないでください。特に深い意味がある訳でもありません。 地図等、自作していますが、絵はかなり苦手なので、大まかなイメージを掴むための参考程度にしてください。 その他、物語の解説などには、地球上の仕組みの中に、実在するものと実在しないものが、混ざっています。これらは、異世界感を演出するためのものなので、ご注意ください。 R指定は特に出していませんが、怪しい部分が多いので、気になる方は、自主規制をお願いします。 現在最新話まで、本編のための前日譚のような外伝ストーリーです。 本編の時間軸に辿り着くまでの長い前日譚もお付き合いいただけると幸いです。 最終更新日:4月15日 更新話:3-027 次回更新予定日: 4月20日

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

処理中です...