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第二章 開業準備をする俺
45、二人の冒険者は(サバン視点)
しおりを挟むここでサバン視点を2話。
冒険者のその後がわかります。
ーー▼ーー▽ーー▼ーー▽ーー▼ーー
俺の名はサバン!
暑苦しいギルド職員と言われたら間違いなく俺だと、胸を張って言える男の中の漢。
いつも締めているこのトレードマークの鉢巻が男らしさを上げているはずなのに、愛しのコルトは全く靡いてくれない。
そんなクールな所も好きだからいいのだ。
そんな事を考えながら、先程バンに託されたイベント申請書を直接ギルド長であるコルトに渡して、受理をしてもらった所だった。
「それにしても、よく受理されましたね?」
俺の横に並んで歩いているのは、報告書をまとめ終わったらしいクラウだ。
「イベントと言うものは、ギルドの不利益や非人道的な物じゃない限り殆ど通るんだ。ただコルトには、直接渡しにくるんじゃないと蔑まれてしまったがな……!」
「いや、そこは聞いてないです……って凄く嬉しそうで気持ち悪っ……」
「いやぁ、あの冷ややかな目! 凄く最高だったんだぞ!!」
コルトの可愛いいところは、一言では言い表されない。
すでに逃げようとしているクラウの肩を掴み、一から十までコルトの可愛いところを言おうとしたのに、ちょうど目の前の冒険者が何かを落としたのを見てしまい、真面目な俺は声をかけずにはいられなかった。
「ん、お前ら何か落としたぞ!」
「あぁ? 別にそれはゴミだからいらねぇよ!!」
そうキレる二人組の男を無視して、落とした物を拾う。
それはどう見ても冒険者タグで、俺は持ち主の名前を見て固まった。
「お前ら、コレをどこで手に入れた?」
「はぁ? ギルド職員には関係ねぇだろうがよぉ!!」
「そうだぞ、それはもういらないって言ってんだからもう良いだろう!」
「そう言う訳にはいかなそうだからな」
俺はスキンヘッド野郎の腕を掴んで、逃げられないようにする。
「おい! クソ職員、いてぇだろうが。手を離しやがれ!!」
「そうだ、離してやれよ! 俺たちが何したっていうんだよ、やめないとぶっとばすぞ!!」
「ギルド内で職員に怪我を負わせたものは罰則があるのを忘れたのか?」
「うっせぇなぁ、知ってるっつーの!!」
「くっそ、まじうざいぜこのおっさん!!」
そう切れ散らかす二人組を見て、クラウがコソッと教えてくれた。
「コイツら素行が悪いので有名な、ナインとサーボですよ。それでもランクだけは高いので周りも強く言えなくてですね……」
「成る程」
「それから先程もコイツら問題を起こしてまして、言いがかりをつけてとある冒険を階段から突き落とし、そのうえ投げ飛ばしたらしいんですよ」
その話に俺はタグを改めて見た。
どう考えてもその被害者はこのタグの持ち主であるバンだろう……。
あいつはヘラヘラしてるせいなのか、昔もよく絡まれていたからな。
「良くわかった。お前ら、事情を話すまでは俺から逃げられると思うなよ」
「ああ!?」
「くっそ、ナイン俺は先行くぞ!」
「お、おい!!」
そう言ったのはサーボの方なのだろう。
一人で逃げようと駆け出した。
「クラウ」
「はいはい。スキル発動許可頂きましたよっと!」
クラウが腕を上げて指をパチンと鳴らすと、走るサーボを囲うように檻が現れた。
クラウのスキル『キープ・プリズン』は一度捕まると、簡単に逃げる事はできない。
「なっ! 何だよこの檻!!」
「コイツも入れとくか」
俺はついでにナインの方も檻に入れてもらう。
二人は騒いでいるが、気にならない。
「おい、出しやがれ!!」
「なんで俺たちがこんな目に!?」
クラウが檻を持ったまま移動する準備が終わったようだった。
「よしそのまま、俺の部屋連れて行くぞ」
「じゃあお二方一緒に行きましょうね~」
「お、おい!! 何だこの檻、動くとすっごく揺れて……」
「めっちゃ気持ち悪っ!? ヤベぇ……吐きそ」
「や、やめろ!! 絶対吐くなよ!」
騒いでる二人を無視して俺たちはダンジョン調査班の部屋へと、移動を開始した。
「全く、班長の怒りをかうなんてコイツらはいったい何したんですか?」
歩きながらクラウにそう聞かれたが、俺は曖昧に答える。
「さぁな?」
コイツらは俺のダチを、ただでさえ人間不信気味のダチを傷つけたのだ。
それ相応の対応はさせてもらう事にしよう。
「あー、班長。凄い悪人みたいな顔してますけど……?」
「それは半分もとからだ」
俺の顔は厳つくて鬱陶しいと、よくコルトに文句を言われるからな……。
そんな話をしている間に目的地にたどり着いた俺たちは、檻ごと男たちを連れて部屋に入った。
「えっ! 一体なんですの!?」
俺たちを見るなり驚きの声を上げたのは、部屋で待機していたマヨだ。
「マヨちゃんごめんね~、少し頼みたい事があるんだよ」
「一体何ですの?」
流石クラウ、俺が何も言わなくてもお願いしたかったことを先に言ってくれるとはな。
二人がコソコソ話し合ってるのを見て、俺はウンウン頷いてしまう。
「わかりましたわ、すぐにかけあってみますのでそっちは頼みますわよ!」
「はい、お願いしますね~」
部屋を出て行くマヨを見送ると、クラウはようやく男たちを檻から放り出した。
「いった!!」
「くっそお……ぎもぢわる……ぅぷっ!」
「お前は、吐くなよ!? それにしても酷い目にあった」
男たちはまだ目眩がなおってないのか、床に手をついて動けないようだった。
しかし、俺は容赦なく男たちに問いただす。
「それで、お前たちはこのタグの持ち主に何をしたんだ?」
「はぁ……? そいつがテイマーとかいうクソ雑魚だから、冒険者はやめたほうがいいって親切にいつてやっただけだろうがよ!!」
「親切だと……?」
「そうだよ! 女や子供を連れ歩いてる舐めた野郎には、わからせてやらないといけないだろ?」
確かに側から見たら舐めてるように見えるのはわかるが、それにしてもコイツらの言い訳は悪質すぎる。
「ならば何故階段からつき落としたんだ?」
「落としたんじゃねぇよ!!」
「そうだ! アイツが勝手に落ちたんだから、俺たちは関係ないぞ!?」
「は?」
その発言に俺は一瞬思考を止めたのだった。
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