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外伝(ロレンツァ視点)
酔っ払った次の日の朝、隣に従兄妹が裸で寝ていた件1
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私は今、人生最大の危機に陥っている。
何故か、隣に鮮やかな青色の髪に、緑色の瞳の高貴なる殿方が眠っている。
「…………」
私はゴクっと生唾を飲み込んだ。
眠っていると美形さが増す気がするわね。少し襟足の長い髪も伯父様にそっくり……。ひょろっこいとばかり思っていたのに、脱ぐと案外筋肉がついていたのね……。
なんて……感心してしげしげ観察している場合ではない。何処からどう見ても、これは我が従兄妹……王太子セシルだ。
「あは、あはは……」
昨日、一体何があったの……!?
私は何をしたの!?
どうしてセシルが私の横で眠っているのよ! しかも裸で!
混乱する頭を押さえながら、下を向いた瞬間、床に散乱する卒業式に着たドレスと酒瓶数本が見えた。
そう酒瓶数本が……見えた……。
「昨日は確か……」
学院の卒業式だった。
私はセシルの婚約者候補だから、セシルがエスコートするとか言ってきたのを足蹴にして逃げたまでは良かったのよ。
エスコートなんてされた日には、婚約者として周知されてしまうし、国王陛下が嬉々として婚約式をしてしまいそうだからだ。
だけど、それどころの話じゃない。一夜を共にした、なんて知られたら、婚約式すっ飛ばして婚礼の儀式でも始めそうだ。
「嫌、それだけは嫌よ。何の為に学院に入ってからの6年、逃げ続けたと思っているのよ」
「何が嫌だというのだ?」
「っ!!?」
お、起きて……。
「眠っているうちにとんずらしようと思ったのに、起きちゃったんですか?」
「ロレンツァ、心の声がだだ漏れだ」
セシルは溜息を吐きながら体勢を変え、ベッドに頬杖をついた。
あ……その表情、カッコ良い……って違う違う。
私は己の頰をぶった。さっさと目を覚ます為に。
セシルは私の奇行を特に気にも留めていないようだ。
「私、昨日沢山呑んでました?」
「ああ、それはもう大量に。リチュカとルージュオも心配をする程に」
「あはは、そうですか……」
リチュカとルージュオというのも、私たちの『いとこ』だ。降嫁した伯母様が産んだ双子の姉弟。
因みに我が父は王弟だ。そのせいか知らないけど、今のところ私が王太子殿下の婚約者有力候補となっている。
でも、お父様は私が王太子妃になるのを厭うているので、全力で逃げ切れと言って、現在お母様を連れて外交の為に外国に訪問中だ。バカンスも兼ねて。
いつ戻って来るか怪しいものなので、助けは求められそうにない。押し掛けたら、叱られるだけでは済まなさそうだし、困ったな。
「…………」
よし! 逃げよう!
「さあ、そろそろ帰ろうかしら。あはは」
「待て、何処へ行く?」
チッ。
ベッドから降りて、落ちているドレスを掴もうとした瞬間、セシルに肩をガシッと掴まれてしまった。
「昨夜は酔っていたし、何も覚えていませんの。王太子殿下は寛大な方ですもの。過ぎた過去は振り返らないって信じていますわ」
あはは。と、乾いた笑いを浮かべながら、セシルの手を振り払うと、セシルが私の腕を掴んで、ベッドへと引き入れた。
「ちょっ、何をするのよ! 馬鹿セシル!」
「良かろう。覚えていないのなら私が教えてやろう」
「え? べ、別に教えて貰わなくても良いし……」
「昨夜は、そろそろ呑むのはやめろと言ったのに、誰が婚約者になるものかと私に絡み続け、更に私の部屋に勝手についてきて絡み続け、挙げ句の果てには暑いと言って着ているものを脱ぎ捨て、私をベッドに押し倒し、上に乗っ……」
「わああぁぁ!!」
私は慌ててセシルの口を塞いだ。
セシルはずっとニヤニヤしている。
「ロレンツァが、あのような情熱的な女性だとは思わなかった。今まで素直になれなかったのだな」
「ち、違います……」
「素直になれないのがロレンツァだからな。許してやる。さあ、早速今日にでも父上と母上に報告しに行こうか? 叔父様たちが帰って来ていないのが残念だが……」
「はぁ? 最低! 誰が報告なんて!」
何を調子乗ってるのよ。
お酒呑んで記憶ないんだから、無効よ、無効。
「ほう。婚約者でもないのに、王太子である私の部屋に勝手に入り、私を押し倒し乱暴を働いたのか?」
「え?」
「不法侵入に強姦か……。いくら王弟殿下のご息女でも不敬罪は免れぬな」
「は? 嫌ですね。私たち、従兄妹なのに不法侵入なんて……」
な、何? 急にどうして恐ろしい事を言うの?
「だ、大体、交わりは一人では出来ないでしょう! セシルにだって非はあるじゃないですか!」
「ふむ。それもそうだな」
良かった。分かってくれた……。
さあ、逃げよう。
「責任を取って結婚しようか」
「は?」
駄目だ、コイツ。
いや、駄目なのは酔っ払ってやらかした私か……。
何故か、隣に鮮やかな青色の髪に、緑色の瞳の高貴なる殿方が眠っている。
「…………」
私はゴクっと生唾を飲み込んだ。
眠っていると美形さが増す気がするわね。少し襟足の長い髪も伯父様にそっくり……。ひょろっこいとばかり思っていたのに、脱ぐと案外筋肉がついていたのね……。
なんて……感心してしげしげ観察している場合ではない。何処からどう見ても、これは我が従兄妹……王太子セシルだ。
「あは、あはは……」
昨日、一体何があったの……!?
私は何をしたの!?
どうしてセシルが私の横で眠っているのよ! しかも裸で!
混乱する頭を押さえながら、下を向いた瞬間、床に散乱する卒業式に着たドレスと酒瓶数本が見えた。
そう酒瓶数本が……見えた……。
「昨日は確か……」
学院の卒業式だった。
私はセシルの婚約者候補だから、セシルがエスコートするとか言ってきたのを足蹴にして逃げたまでは良かったのよ。
エスコートなんてされた日には、婚約者として周知されてしまうし、国王陛下が嬉々として婚約式をしてしまいそうだからだ。
だけど、それどころの話じゃない。一夜を共にした、なんて知られたら、婚約式すっ飛ばして婚礼の儀式でも始めそうだ。
「嫌、それだけは嫌よ。何の為に学院に入ってからの6年、逃げ続けたと思っているのよ」
「何が嫌だというのだ?」
「っ!!?」
お、起きて……。
「眠っているうちにとんずらしようと思ったのに、起きちゃったんですか?」
「ロレンツァ、心の声がだだ漏れだ」
セシルは溜息を吐きながら体勢を変え、ベッドに頬杖をついた。
あ……その表情、カッコ良い……って違う違う。
私は己の頰をぶった。さっさと目を覚ます為に。
セシルは私の奇行を特に気にも留めていないようだ。
「私、昨日沢山呑んでました?」
「ああ、それはもう大量に。リチュカとルージュオも心配をする程に」
「あはは、そうですか……」
リチュカとルージュオというのも、私たちの『いとこ』だ。降嫁した伯母様が産んだ双子の姉弟。
因みに我が父は王弟だ。そのせいか知らないけど、今のところ私が王太子殿下の婚約者有力候補となっている。
でも、お父様は私が王太子妃になるのを厭うているので、全力で逃げ切れと言って、現在お母様を連れて外交の為に外国に訪問中だ。バカンスも兼ねて。
いつ戻って来るか怪しいものなので、助けは求められそうにない。押し掛けたら、叱られるだけでは済まなさそうだし、困ったな。
「…………」
よし! 逃げよう!
「さあ、そろそろ帰ろうかしら。あはは」
「待て、何処へ行く?」
チッ。
ベッドから降りて、落ちているドレスを掴もうとした瞬間、セシルに肩をガシッと掴まれてしまった。
「昨夜は酔っていたし、何も覚えていませんの。王太子殿下は寛大な方ですもの。過ぎた過去は振り返らないって信じていますわ」
あはは。と、乾いた笑いを浮かべながら、セシルの手を振り払うと、セシルが私の腕を掴んで、ベッドへと引き入れた。
「ちょっ、何をするのよ! 馬鹿セシル!」
「良かろう。覚えていないのなら私が教えてやろう」
「え? べ、別に教えて貰わなくても良いし……」
「昨夜は、そろそろ呑むのはやめろと言ったのに、誰が婚約者になるものかと私に絡み続け、更に私の部屋に勝手についてきて絡み続け、挙げ句の果てには暑いと言って着ているものを脱ぎ捨て、私をベッドに押し倒し、上に乗っ……」
「わああぁぁ!!」
私は慌ててセシルの口を塞いだ。
セシルはずっとニヤニヤしている。
「ロレンツァが、あのような情熱的な女性だとは思わなかった。今まで素直になれなかったのだな」
「ち、違います……」
「素直になれないのがロレンツァだからな。許してやる。さあ、早速今日にでも父上と母上に報告しに行こうか? 叔父様たちが帰って来ていないのが残念だが……」
「はぁ? 最低! 誰が報告なんて!」
何を調子乗ってるのよ。
お酒呑んで記憶ないんだから、無効よ、無効。
「ほう。婚約者でもないのに、王太子である私の部屋に勝手に入り、私を押し倒し乱暴を働いたのか?」
「え?」
「不法侵入に強姦か……。いくら王弟殿下のご息女でも不敬罪は免れぬな」
「は? 嫌ですね。私たち、従兄妹なのに不法侵入なんて……」
な、何? 急にどうして恐ろしい事を言うの?
「だ、大体、交わりは一人では出来ないでしょう! セシルにだって非はあるじゃないですか!」
「ふむ。それもそうだな」
良かった。分かってくれた……。
さあ、逃げよう。
「責任を取って結婚しようか」
「は?」
駄目だ、コイツ。
いや、駄目なのは酔っ払ってやらかした私か……。
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