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66.乳母の悪戯(ロベルト視点)

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 つまらない。
 実にくだらないよ。


「そろそろ飽きてきたんだけど……」
「殿下は、面白味がなさすぎます。もっと、泣いて縋ってはどうですか? 受け止めて差し上げますよ」
「……そんな事よりも、姉上の心のケアでも考えた方が良いのではないかい? きっと拗ねていると思うよ」


 僕が嘲笑混じりにそう言うと、ルカがチラッと、姉上とヴィアの方に目をやったので、僕も2人へと視線を動かした。



「きゃっ、だめ、だめですっ……あっ、んんぅ」
「義母上、それやだっ……無理だからっ、ひゃっ」


「…………」
「…………」


 乳母が、姉上の魔法陣の効果を一時的に消して欲しいと言ったから、ある程度予測はしていたけど、ヴィアに触って良いとは言っていない筈だけど。


 ヴィアと姉上は、乳母に手をなぞられているだけで、甘い声をあげている。乳母は、とても楽しそうだ。


「やだ、これ……だめなのっ」
「ひあ、ぁっ」


 …………何が駄目なのか、詳しく教えてほしいところだよ。ここからではよく見えないけれど、乳母が2人の体をなぞって遊んでいる事だけは分かった。


「気持ちの良いところは、当たり前のところだけではないのよ。己でも予期せぬところが性感帯だったりするの。ほら、ゆっくりと探していきましょうね」

「…………殿下。ジュリアの魔法陣は?」
「……今は効果をなくしてあるよ。乳母のたっての頼みだからね」

 僕がニヤニヤしながらそう言ってやると、ルカは僕を冷たい目で睨んだ後、苛立ちをぶつけるように鞭で打ってから姉上たちのところへと向かった。

 とうとう、ルカは我慢が出来なくなったようだ。


「母上、やめて下さい! ジュリアは私のものですよ。母上だとて、触る事は許しません」
「あら、そうは言いますけれど……ロブだって、わたくしのものなのに、ルカ様は先程からベタベタと触っているではないのですか?」
「シルヴィアちゃん、実は怒っていたんだな……いや、怒っていたんですね」


 …………。
 ヴィアへの償いのつもりが、機嫌を損ねてしまったようだね。ならば、この茶番に付き合うのは、もう終いかな。

 僕は魔法で枷を壊し、脱ぎ捨てたシャツを羽織り、ヴィアのところへと向かった。


「ヴィア。茶番はお終いだ。帰るよ」
「えっ? ロブ?」

 ルカが「待ちなさい」と言っているが、ヴィアの気持ちが乗っていないのなら、付き合う道理はないのだよ。


「乳母。今日の埋め合わせは別の日にするよ。ヴィアが世話になったからね」
「あら、一晩預けてくれれば仕上げてあげるわよ」
「いらないよ。やめてくれたまえ」


 まったく……ふざけた奴らばかりだ。
 まあ、そこが良いのは認めてあげるよ。


「あ、あの……ロブ? わたくし、調教というのは嫌です。ロブとルカ様が仲が良いのは知っていますけれど、今回はさすがに行き過ぎです」
「君が早いうちに、どこかに行くからだよ。そもそも、君への償いなのに、ルカに任せて乳母の手に堕ちている君のほうが、余程罪深いよ」
「ですが……」

 君は君のままで良いのだよ。
 奴隷として仕上げるとしても、それは僕の楽しみだ。
 それに、もう主人と奴隷という関係は僕たちには必要がない。

 まあ、仕置きはするけどね。

「ですが、ではないよ。ルカに媚薬を使われて辛いんだ。帰ったら、分かっているね?」
「は、はい。精一杯、頑張ります」
「それで良いのだよ」

 僕はヴィアの手を取り、己の宮へと帰った。

 後日、ルカから聞いた話だと……、今回のことでヘソを曲げた姉上は、兄上に「ルカに浮気された」と泣きつき、王宮に立て篭もり、仲直りをするのに1週間もの時間を要したようだ。
 それに、兄上が浮気、という言葉を聞いて怒ってしまい、姉上を隠すのを手伝ったのも、長引いた要因だと思う。


 所詮、本気で兄上に隠されたら、ルカは姉上と一生会う事が出来なくなるのだよ。まあ、今回はさすがに可哀想だし、僕のせいでもあるから兄上への誤解は解いてあげたけどね。

 憔悴したルカを見るのは胸がすく思いだったし、楽しかったよ。僕に一泡ふかせようとするから、このような事になるのだよ。

 今回は僕の勝ち、かな。
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