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番外編

女子会開催します1

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「お前ら……俺のことをオモチャだと思っているだろう」

 数日後の良く晴れた日に、お茶会が開催された。
 ジュリオは顔を真っ赤にして、震えているけれど、流石ロベルト様の魔法。ちゃんと女性に見える。


 胸もちゃんとあるわ。淡い青紫色の髪はふんわりとウェーブになっていて腰まであった。シルヴィア様の髪型に似ているので、きっとシルヴィア様の髪型がモデルにつくられているのだと思う。

 そして空色の瞳が、いつもより少し大きめに見える。勝ち気な美人という感じかもしれない。


「そんな事ありませんよ、お義兄さ……いえ、お義姉様」
「そうよ、ジュリアちゃん。可愛いわよ。背も高くスラッとしていて、とても美しいわよ、ジュリアちゃん」
「おねえさまとかジュリアって呼ぶな!」


 ジュリオが顔を真っ赤にして叫んでいるけれど、実はこの東屋が良く見える場所から、フィリップ達が観察? 鑑賞? しているって知ったら、更にどう思うのかしら? 恥ずかしさと怒りに倒れるかもしれない。

 きっと、今フィリップはお腹を抱えて笑っていると思う。


「まあ、そんなに恥ずかしがらないで良いのよ。今日は、ゆっくりお話する為にその格好をして貰ったのだもの」
「そ、そうだな……」
「駄目ですよ、お義姉様。言葉遣いを気を付けなさいとロブとルカ様に言われたでしょう?」
「うるさい……アホ娘」


 駄目だ。ジュリオとシルヴィア様とのやり取りを見ているだけで、笑いが止まらなくなりそう。確かにジュリアちゃんにするのは失敗だったかもしれない。気を抜くと笑ってしまいそう。

 心なしかシルヴィア様も笑うのを我慢しているように見える気がするわね。でも、笑うとジュリオがお臍を曲げそうだから気を付けないと……。

 ふふっ、でも思った以上の出来にニヤニヤしてしまいそう。ジュリオったら、こんなにも揶揄い甲斐があるような雰囲気だったかしら? どちらかと言えば、俺様然としていた感じだったけれど、今は恥ずかしそうに目線を彷徨わせる様とか、着せられているドレスをギュッと握って耐えているところとか、何だか可愛らしいと思ってしまった。

 もっと揶揄って遊びたくなるような雰囲気になっている。言葉遣いは変わらないけれど、なんて言うの? 子猫が必死にシャーと言っているようにしか見えない。

 ルカ様がジュリオに良い影響を与えたのかしら?


「では、お茶会を始めましょうか」
「チェシリー、シルヴィアちゃん……」
「え? ジュリオ?」

 あ、ジュリオじゃない、ジュリアちゃんだ。
 ジュリオが突然、椅子から降りて地面に座り、私とシルヴィア様に土下座をしたから、あまりにも驚いてしまってジュリオと呼んでしまった。


「お義姉様? どうかされたのですか?」
「そうよ、ジュリアちゃん。どうしたの? 今日は仲良く皆でお話する日なのよ。ロベルト様やルカ様に何か言われたの? でも、何も気にせず今日は楽しみましょうよ。ね?」
「違う。ルカに何かを言われたから、こうしている訳じゃない。俺は、チェシリーやシルヴィアちゃんに酷い事ばかりした。無理矢理犯されるのが、どれほど辛いのかも分からず、それをしようとした……。許される事じゃない」


 でも、それはどちらも未遂だった訳だし、それにフィリップやロベルト様、ルカ様から罰を受けたと聞いたのに……。
 だからこそ、ジュリオはいま牙と爪を抜かれた虎……いえ猫のようになっているのだと思う。


「未遂だとかそんなの関係ないだろう? だって、あの時ルカや兄上が来なければ俺は……、取り返しのつかない事をしていた。それに、ロベルトに媚薬を飲ませて、在学中にシルヴィアちゃんを懐妊させて困らせようとした事も、本当に悪かったと思う。それに、チェシリーにも甘えから、沢山酷い事を言った……。謝って許される事じゃないけど、謝らせてくれ」


 ジュリオが……あのプライドの高かったジュリオが……決して自分の非を認めなかったジュリオが……、誰に指示された訳でもなく、自ずから地面に頭を擦りつけるようにして謝っている。


 幼い時からのジュリオを知っている私は、これは驚き以外の何ものでもなかった。それ程、ルカ様がジュリオを変えたのかしら?

 でも、そうね。もっと小さい頃……まだ魔力が開花しないと誰もが諦めてなかった頃は、ジュリオはちゃんとごめんなさいやありがとうが言える子だった。
 優しく思いやりのある子供だった。それを壊したのは、大人達が魔力のないジュリオに向けた失望や落胆という目のせいかもしれない。


 それでも、今までジュリオがした事は、ジュリオの意思によるものだから……全てを幼い日のジュリオが可哀想だった、ではすまされないのだけれど……。


「許します。なので、もう顔を上げて下さいませ、お義姉様。そのかわり、沢山ルカ様のお話を聞かせて下さい。わたくし、お義姉様の本心が聞きたいのです。本当はルカ様が大好きなのでしょう?」


 え? そ、そうなの?
 そうなの?

 私がシルヴィア様の言葉にジュリオを見ると、顔を真っ赤にして大きな口を開けたまま固まっていたので、「あ、これは黒ね」と思ってしまった。

 ジュリオったら、確実にルカ様に堕ちているじゃない。知らない間に何があったのかしら? ふふふ、それについてもちゃんと聞かないといけないわね。
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