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番外編

パーティーで見かけたジュリオ

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 無事に婚礼の儀式が終わって……今はパーティー中だ。久しぶりにジュリオを見かけたけれど、私は近づく事を許されていないので、「大丈夫?」と聞きたかったけれど、その言葉を呑み込んだ。


 でも、以前謝ってくれた時に比べて、顔色が良かったので、少しは安心が出来た。そうよね、あんな事があったのはフィリシラが生まれる前の事なんだもの……。


 それに……それだけじゃなく、王太子妃として皆に挨拶をしなければならないし、王妃様が王妃業をしてくれずに仲の良いお友達と楽しそうにお話をしているので、私は王妃様の代わりも務めなければならないので、実はたとえ許されていたとしてもジュリオとお話が出来ないくらいに忙しい。

 まあ、フィリップも眠っている陛下の代わりを務めているので、それは仕方がないし、役目だから構わないのだけれど……、王妃様は何を考えておられるのかしら、とたまに不思議に思う時がある……。勿論、聞けないけれど……。


 私はフィリップの傍らで挨拶を受けながら、チラッとジュリオを見つめた。シルヴィア様と何やらお話をしていた……。

 混ざりたい……と思ってしまった……。
 何やら、楽しそうに見える気がする……。やっぱり、元気なのね、ジュリオ……。ルカ様は、ジュリオを上手に扱えている、という事かしら?

 良かった……酷い目にあっていなくて、本当に良かった。


 本当は「大丈夫?」だけじゃなく、聞きたい事も言いたい事もいっぱいある。和解出来るなら、もっとちゃんとしたい。心のわだかまりを全てなくして、義姉と義弟として仲良くしていければ良いのに……とは思う。

 でも、ここにいる大半の方々は私がジュリオを好きで、卒業式のパーティーで泣き喚いた事を知っているので、大っぴらにジュリオと交流を持つ事をよく思わないだろう。

 フィリップだって……よく思わないに決まっているもの。だから、これは私のワガママなの。ジュリオにも幸せになって欲しい。今は幸せだよっていう言葉が聞きたい。

 決して許されない私のワガママ……。
 一度は嫌いと思った。だけれど、悪いところだけでなく、良いところだって知っている。知ってしまっているから……簡単に憎んだり嫌いになったりは出来なかった。

 辛い目や苦しい目にあって欲しくないと思ってしまう。甘いのだという事も、愚かだという事も、充分なくらい分かっている。

 いつか何のしがらみもなく、笑って話せるようになったら良いのにな……と思った。



 私がそんな事を考えながら、ボーっとジュリオを眺めていると、いつしか話が終わったのか……ジュリオが席を立ち、代わりにロベルト様がやって来た。

 ロベルト様は……誰? と聞きたいくらい優しい笑みを浮かべていた。遠目から見ても、とても甘い雰囲気だ。
 あのように優しく甘い笑顔を浮かべていると、フィリップに似ているな……と思って少し驚いた。


 それだけじゃなく、ロベルト様はパーティー中だというのに、シルヴィア様を膝に乗せ、口付けをしていた。場所を選ばないところも似ているかもしれない……。

 ま、まあ、フィリップは流石にパーティー中は口付けをして来ない。お仕事中だし。
 ただ執務室で皆がいてもお構いなしに、頭を撫でたり口付けをしてきたりするところが似ている気がしただけだ。

 そういえば、ジュリオも昔は場所を選ばずに女官や侍女と情交に耽っていたし……。人が見ていてもお構いなしなところは……やっぱり兄弟なのかもしれない。



 …………だけれど、この後皆から揶揄われてシルヴィア様は泣きそうなくらい恥ずかしそうにしていたので、シルヴィア様はそういう事が平気な方ではないのね、と思いつつ、ロベルト様を見ると「何がいけないんだい?」という顔をしていたので、やっぱり血筋だと思う。

 シルヴィア様が恥ずかしそうに涙目になっているお顔は確かに可愛らしかった。


「成る程。これが泣かせてみたくなるというお顔なのね……」
「シシー?」

 フィリップは、こういうパーティーなどの公式の場では、私を愛称ではなくチェチーリアと……名で呼ぶのだけれど、きっと私の呟きに驚いたのだろう。声も顔も、とても驚いた顔をしている。そのせいか、いつもの呼び方になっている。


「ごめんなさい……。シルヴィア様が、とても可愛らしかったので……」
「……そう? 君のほうが可愛いけどね」


 私がコソッと謝ると、フィリップはとても真面目な顔をして、そう言ったので、今度は私が恥ずかしくなってしまった。


「く、比べるものではありません」
「そうだね。シシーの可愛さは比べられないもんね。後で、私たちも沢山口付けをしようね」
「っ!!?」


 ぜ、絶対にわざとだ。わざとやってる。
 ロベルト様とシルヴィア様の口付けで感化されたのかは分からないけれど、絶対に私が恥ずかしがると分かってやっているのだと思う。


「どうしたの? チェチーリア」
「っ……」


 フィリップは皆から分からないように私の腰を抱いて、耳元で低い声で名で呼んだ。今まで愛称で呼んでいたのに、突然チェチーリアと呼ぶのは反則だと思う。


 思わず、体が跳ねてしまった。
 私が真っ赤な顔でフィリップを睨むと、フィリップは楽しそうに「続きは後でね」と言った。
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