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番外編
洗って?1
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「今日はシシーに洗って欲しいな」
「え?」
ある日の夜、輝くばかりの笑顔でフィリップがそう言った。
私に洗って欲しい……?
洗って欲しい?
「あれ? シシー、どうしたの? 固まっちゃうほど驚かせた?」
フィリップが私の顔の前で手を振った後、よしよしと私の頭を撫でてくれた。
今、洗って欲しいって聞こえた気がする……。いえ、そんな……気のせいよ……。
「フィリップ……」
「ん?」
「今、何て言いました?」
「シシーに体を洗って欲しいなって言ったんだよ」
っ!! やっぱり、気のせいじゃなかったのね……。
私は改めて言われて、一気に顔に熱が集まってくるのが分かった。顔を真っ赤にしながら後退ってフィリップの腕の中から逃れようとしたけれど、フィリップは離してくれなかった。
そ、そりゃあ、私だっていつかはフィリップを洗ってあげたいと思ってはいるけれど、でもそれは……それは……。
今……なの?
まだ心の準備が出来ていないのに……。
「シシーは可愛いな。そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫だよ。ほら、お腹にセシルがいるでしょ? まだ安定期に入っていないから交わりが出来ないけど、触れ合うくらいは良いと思うんだ。一緒にお風呂に入るのは最高のスキンシップだと思わない?」
お腹にセシル?
フィリップが、さも決定事項のように名を呼んでいるのが気にはなったけれど、それ以上にお風呂でスキンシップという言葉が気になってしまって、何も言えなくなってしまった。
「大丈夫だよ。一緒に気持ち良くなろうね」
「っ!」
ど、どうして、そんな意味深な言い方をするの……?
わざとやっているの……? それとも私が気にしすぎなの?
「お風呂に入るだけですよね?」
私はジトっとした目でフィリップを見ながら、一応確認をした。勿論、念の為だ。
「うん、お風呂に入るのは気持ち良いでしょ? だから、一緒に気持ち良くなりたいなって」
フィリップが、私の肩を抱いて耳元でそう囁いた。
その声に私の体がピクリと跳ねた。頭がクラクラする気がする……。
フィリップの声と笑顔と、私に触れるその手が優しくて……けれど、熱がこもっているようで……熱くてクラクラする。
「どうしたの、シシー」
「っ……だめっ、フィリップ」
分かってやっているのだと思う。
フィリップの吐息が耳にかかって……体がピクンと震えてしまう……。
耳……を責めてくるあたり、絶対に私の反応を楽しんでいるのだと思う。
「んぅっ、耳、やっ」
「シシーは本当に耳が弱いね」
「よわ、くなっ……ひゃあっ」
フィリップが「そうかな?」と言いながら、突然耳の中に舌を入れた。それだけで抵抗が出来なくなるのだから、自分が恨めしい。
…………。
結局、耳を舐められながら服を脱がされ、お風呂場へと運ばれてしまった。
うう……そろそろ覚悟を決めないと……。
わ、私だってフィリップを洗ってあげたいとは思っているのだもの。こういう機会がなければ、きっと洗えないと思う……中々勇気が出ないし……。
「あ、あの……どうやって洗えば良いのですか?」
「そうだね。何も使わずにシシーのその柔らかい手で直接洗って欲しいな」
私の手?
私はよく分からないまま、コクリと頷いた。すると、フィリップが良い子だねと褒めてくれたのだけれど、いざ石鹸を泡立てようと思うと上手に出来なくて、結局フィリップに頼ってしまった。
折角褒めてくれたのに……私ったら……。
で、でも、体を洗う事で名誉挽回すれば良いわよね。
…………と、意気込んだのだけれど、やっぱり恥ずかしい。
今、背中を洗っているのだけれど、手で優しく洗っているだけで本当に良いのかしら? 多少なりとも擦らなくて大丈夫? 汚れ、落ちてる?
フィリップが私を洗ってくれた時は、ちゃんとボディスポンジを使ってくれた気がするのだけれど……。
「フィリップ? こんな感じで良いのですか?」
「それで良いよ。とても気持ちが良くて、夢見心地だよ」
「ほ、本当ですか? 良かっ……きゃっ」
ホッとした瞬間、両手を引っ張られてフィリップの背中に鼻がぶつかってしまった。
「フィリップ……突然引っ張るから鼻に泡がついてしまいました」
「ああ、すまないね。でも、この抱きついたまま前を洗って欲しいな」
フィリップが私の鼻についた泡を拭ってくれながら、そう言った。なので私は、また促されるまま頷いて、フィリップに抱きつくように胸に手を回した。
えっと……こうかしら?
そして、ゆっくり手を洗うように動かす…………。ん? でも、これって……。
「フィリップ……胸が……」
「ははっ、バレちゃったか……」
バレちゃったかって……。
「フィリップ……」
「可愛いね、シシー。こっちにおいで」
私が顔を真っ赤にしてフィリップを睨むと、フィリップはニコニコしながら私を引き寄せ、腕の中に閉じ込めた。
「え?」
ある日の夜、輝くばかりの笑顔でフィリップがそう言った。
私に洗って欲しい……?
洗って欲しい?
「あれ? シシー、どうしたの? 固まっちゃうほど驚かせた?」
フィリップが私の顔の前で手を振った後、よしよしと私の頭を撫でてくれた。
今、洗って欲しいって聞こえた気がする……。いえ、そんな……気のせいよ……。
「フィリップ……」
「ん?」
「今、何て言いました?」
「シシーに体を洗って欲しいなって言ったんだよ」
っ!! やっぱり、気のせいじゃなかったのね……。
私は改めて言われて、一気に顔に熱が集まってくるのが分かった。顔を真っ赤にしながら後退ってフィリップの腕の中から逃れようとしたけれど、フィリップは離してくれなかった。
そ、そりゃあ、私だっていつかはフィリップを洗ってあげたいと思ってはいるけれど、でもそれは……それは……。
今……なの?
まだ心の準備が出来ていないのに……。
「シシーは可愛いな。そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫だよ。ほら、お腹にセシルがいるでしょ? まだ安定期に入っていないから交わりが出来ないけど、触れ合うくらいは良いと思うんだ。一緒にお風呂に入るのは最高のスキンシップだと思わない?」
お腹にセシル?
フィリップが、さも決定事項のように名を呼んでいるのが気にはなったけれど、それ以上にお風呂でスキンシップという言葉が気になってしまって、何も言えなくなってしまった。
「大丈夫だよ。一緒に気持ち良くなろうね」
「っ!」
ど、どうして、そんな意味深な言い方をするの……?
わざとやっているの……? それとも私が気にしすぎなの?
「お風呂に入るだけですよね?」
私はジトっとした目でフィリップを見ながら、一応確認をした。勿論、念の為だ。
「うん、お風呂に入るのは気持ち良いでしょ? だから、一緒に気持ち良くなりたいなって」
フィリップが、私の肩を抱いて耳元でそう囁いた。
その声に私の体がピクリと跳ねた。頭がクラクラする気がする……。
フィリップの声と笑顔と、私に触れるその手が優しくて……けれど、熱がこもっているようで……熱くてクラクラする。
「どうしたの、シシー」
「っ……だめっ、フィリップ」
分かってやっているのだと思う。
フィリップの吐息が耳にかかって……体がピクンと震えてしまう……。
耳……を責めてくるあたり、絶対に私の反応を楽しんでいるのだと思う。
「んぅっ、耳、やっ」
「シシーは本当に耳が弱いね」
「よわ、くなっ……ひゃあっ」
フィリップが「そうかな?」と言いながら、突然耳の中に舌を入れた。それだけで抵抗が出来なくなるのだから、自分が恨めしい。
…………。
結局、耳を舐められながら服を脱がされ、お風呂場へと運ばれてしまった。
うう……そろそろ覚悟を決めないと……。
わ、私だってフィリップを洗ってあげたいとは思っているのだもの。こういう機会がなければ、きっと洗えないと思う……中々勇気が出ないし……。
「あ、あの……どうやって洗えば良いのですか?」
「そうだね。何も使わずにシシーのその柔らかい手で直接洗って欲しいな」
私の手?
私はよく分からないまま、コクリと頷いた。すると、フィリップが良い子だねと褒めてくれたのだけれど、いざ石鹸を泡立てようと思うと上手に出来なくて、結局フィリップに頼ってしまった。
折角褒めてくれたのに……私ったら……。
で、でも、体を洗う事で名誉挽回すれば良いわよね。
…………と、意気込んだのだけれど、やっぱり恥ずかしい。
今、背中を洗っているのだけれど、手で優しく洗っているだけで本当に良いのかしら? 多少なりとも擦らなくて大丈夫? 汚れ、落ちてる?
フィリップが私を洗ってくれた時は、ちゃんとボディスポンジを使ってくれた気がするのだけれど……。
「フィリップ? こんな感じで良いのですか?」
「それで良いよ。とても気持ちが良くて、夢見心地だよ」
「ほ、本当ですか? 良かっ……きゃっ」
ホッとした瞬間、両手を引っ張られてフィリップの背中に鼻がぶつかってしまった。
「フィリップ……突然引っ張るから鼻に泡がついてしまいました」
「ああ、すまないね。でも、この抱きついたまま前を洗って欲しいな」
フィリップが私の鼻についた泡を拭ってくれながら、そう言った。なので私は、また促されるまま頷いて、フィリップに抱きつくように胸に手を回した。
えっと……こうかしら?
そして、ゆっくり手を洗うように動かす…………。ん? でも、これって……。
「フィリップ……胸が……」
「ははっ、バレちゃったか……」
バレちゃったかって……。
「フィリップ……」
「可愛いね、シシー。こっちにおいで」
私が顔を真っ赤にしてフィリップを睨むと、フィリップはニコニコしながら私を引き寄せ、腕の中に閉じ込めた。
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