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番外編
チェチーリアの些細な変化・後編
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「…………ん?」
あれ? 私……。
昨夜は……と思いながら起き上がると、「おはよう、シシー」という声と共にチュッチュッと、沢山口付けが降ってきた。
「ごめんなさい。私、気を失ってしまったのですか?」
「大丈夫だよ。昨夜は途中で気を失ったり眠るといった事はなかったよ。ただ終わった瞬間、眠いと言って寝始めたけど」
フィリップがクスクスと笑いながら、そう教えてくれた。
うう……恥ずかしい……。
すぐに寝てしまう癖を何とかしたいのに……いっぱいイッて気持ち良くなると、心地よい気怠さが私を包んで、抗えない眠気が……。
「シシー、朝食食べる? フィリシラと一緒に食べようか?」
「……食べたいのですけれど、まだ体が重くて……それに……」
まだお腹が空いていない。
それよりかは眠っていたい……。
「まだ眠いの、です……もう少しだけ、眠っていたいのです……」
私がそう言うと、フィリップが「無茶をさせたかな?」と心配そうにしながら、何故か侍医の先生を呼んだ。
私がビックリしていると、フィリップが私の頭をよしよしと撫でた。
「シシーが異様に眠気を訴える時は少し怪しいかなと思って……」
「あやしい?」
「うん、フィリシラの時も眠いってよく言ってただろう? シシーは眠りづわりの傾向があるからね」
眠りづわり?
……という事は。
「私、懐妊しているのですか?」
「まだ分からないよ。その可能性も踏まえて、侍医を呼んだんだ」
フィリップが私よりも慣れている気がする。
フィリシラの事がフィリップの経験として糧になっているのね……。私は……駄目ね。経験したというのに、自分が懐妊したとか……そういうのはまだよく分からない……。
「フィリップ、ごめんなさい。私、何も分からなくて……」
「そんな事は気にしないで、シシー。私はシシーが好き過ぎるから、どんな些細な変化でも逃したくないだけだよ」
優しい笑顔で私の頭を撫でながら、そう言ってくれるフィリップに私は嬉しくなって抱きついた。
フィリップ、愛しています。
ふふっ、次はフィリップ念願の男の子かしら?
その後、侍医の先生に診てもらうと本当に懐妊していたので、フィリップはやっぱり凄いなと感心した。
「今回は生まれるまで隠そう」
「え? フィリップ?」
突然、何を言い出すの?
「以前のような事が起きない為にも、暫くは伏せよう。無事に生まれるまで隠し通す」
生まれるまでと、暫くでは、少し意味が変わると思うのだけれど……。
フィリップは多分、興奮して自分の言っている矛盾に気付いていないと思う。
「ですが、今回はジュリオは大人しいですよ? 最近では全然見かけなくなって、私……少し心配なんですよ」
「そんなの分からないよ。念には念を入れよう」
そしてフィリップは診て下さる侍医の先生に、口外しない事を命じて、他にいる侍医の先生には担当させないようにと言った。
宮廷侍医は実は沢山いる。1人だけだと、その先生が万が一倒れたりすると困るからだ。それだけじゃなく、他の方々を診ていて手があかないと困るので、実は7、8人いたりするらしい。
侍医の先生は忙しいので、全員に会った事はないので、実はよく分かっていない。
陛下を担当している数人の先生方には特に会った事はない。
「では、誰にも知らせないのですか?」
「そうだね。父上と母上には一応報告しておくよ」
「……そうですか」
父上にって……。眠っている陛下に報告しても、陛下には伝わらないと思うのだけれど……。
その後、フィリップは徹底して伏せた。私付きの信頼出来る女官と侍医の先生。それと陛下(?)と王妃様しか知らない。
あと、もうすぐ1歳になるフィリシラにお姉ちゃんになるのよと伝えたくらいだ。
フィリップが私に過保護なのは今に始まった事ではないので、いつもより過度に過保護でも、特に誰も変に思わなかった。
またか……くらいに思っているのだと思う。
ただ……執務室にいる皆は気づいていると思う。
私はまたもや執務室であまりお仕事をせずに、私用の大きなソファーで休んでいるように言われているからだ。
フィリシラの時と同じ行動を取るとバレるという事に気づいていないフィリップに、皆は敢えて何も言わなかった。
きっと察してくれたのだと思う。
皆、フィリップとは長い付き合いだし、フィリップの性格もきっとよく分かっているので、隠したいというフィリップの想いを汲んでくれたのだと思う。
皆、とても優しい。
でも、お腹が目立つようになったらどうするのかしら?
あれ? 私……。
昨夜は……と思いながら起き上がると、「おはよう、シシー」という声と共にチュッチュッと、沢山口付けが降ってきた。
「ごめんなさい。私、気を失ってしまったのですか?」
「大丈夫だよ。昨夜は途中で気を失ったり眠るといった事はなかったよ。ただ終わった瞬間、眠いと言って寝始めたけど」
フィリップがクスクスと笑いながら、そう教えてくれた。
うう……恥ずかしい……。
すぐに寝てしまう癖を何とかしたいのに……いっぱいイッて気持ち良くなると、心地よい気怠さが私を包んで、抗えない眠気が……。
「シシー、朝食食べる? フィリシラと一緒に食べようか?」
「……食べたいのですけれど、まだ体が重くて……それに……」
まだお腹が空いていない。
それよりかは眠っていたい……。
「まだ眠いの、です……もう少しだけ、眠っていたいのです……」
私がそう言うと、フィリップが「無茶をさせたかな?」と心配そうにしながら、何故か侍医の先生を呼んだ。
私がビックリしていると、フィリップが私の頭をよしよしと撫でた。
「シシーが異様に眠気を訴える時は少し怪しいかなと思って……」
「あやしい?」
「うん、フィリシラの時も眠いってよく言ってただろう? シシーは眠りづわりの傾向があるからね」
眠りづわり?
……という事は。
「私、懐妊しているのですか?」
「まだ分からないよ。その可能性も踏まえて、侍医を呼んだんだ」
フィリップが私よりも慣れている気がする。
フィリシラの事がフィリップの経験として糧になっているのね……。私は……駄目ね。経験したというのに、自分が懐妊したとか……そういうのはまだよく分からない……。
「フィリップ、ごめんなさい。私、何も分からなくて……」
「そんな事は気にしないで、シシー。私はシシーが好き過ぎるから、どんな些細な変化でも逃したくないだけだよ」
優しい笑顔で私の頭を撫でながら、そう言ってくれるフィリップに私は嬉しくなって抱きついた。
フィリップ、愛しています。
ふふっ、次はフィリップ念願の男の子かしら?
その後、侍医の先生に診てもらうと本当に懐妊していたので、フィリップはやっぱり凄いなと感心した。
「今回は生まれるまで隠そう」
「え? フィリップ?」
突然、何を言い出すの?
「以前のような事が起きない為にも、暫くは伏せよう。無事に生まれるまで隠し通す」
生まれるまでと、暫くでは、少し意味が変わると思うのだけれど……。
フィリップは多分、興奮して自分の言っている矛盾に気付いていないと思う。
「ですが、今回はジュリオは大人しいですよ? 最近では全然見かけなくなって、私……少し心配なんですよ」
「そんなの分からないよ。念には念を入れよう」
そしてフィリップは診て下さる侍医の先生に、口外しない事を命じて、他にいる侍医の先生には担当させないようにと言った。
宮廷侍医は実は沢山いる。1人だけだと、その先生が万が一倒れたりすると困るからだ。それだけじゃなく、他の方々を診ていて手があかないと困るので、実は7、8人いたりするらしい。
侍医の先生は忙しいので、全員に会った事はないので、実はよく分かっていない。
陛下を担当している数人の先生方には特に会った事はない。
「では、誰にも知らせないのですか?」
「そうだね。父上と母上には一応報告しておくよ」
「……そうですか」
父上にって……。眠っている陛下に報告しても、陛下には伝わらないと思うのだけれど……。
その後、フィリップは徹底して伏せた。私付きの信頼出来る女官と侍医の先生。それと陛下(?)と王妃様しか知らない。
あと、もうすぐ1歳になるフィリシラにお姉ちゃんになるのよと伝えたくらいだ。
フィリップが私に過保護なのは今に始まった事ではないので、いつもより過度に過保護でも、特に誰も変に思わなかった。
またか……くらいに思っているのだと思う。
ただ……執務室にいる皆は気づいていると思う。
私はまたもや執務室であまりお仕事をせずに、私用の大きなソファーで休んでいるように言われているからだ。
フィリシラの時と同じ行動を取るとバレるという事に気づいていないフィリップに、皆は敢えて何も言わなかった。
きっと察してくれたのだと思う。
皆、フィリップとは長い付き合いだし、フィリップの性格もきっとよく分かっているので、隠したいというフィリップの想いを汲んでくれたのだと思う。
皆、とても優しい。
でも、お腹が目立つようになったらどうするのかしら?
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