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本編
54.忙しいフィリップ
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それからは特に何事もなく平和に過ぎていった。
ただ、フィリップは水面下で色々と動いているようで、とても忙しそうだ。
私は、お腹の子が生まれた時の為に王太子宮を整えた。フィリップは、子供部屋の壁紙を花柄にしたいと言ったけれど、男の子が生まれる可能性も考えて、それは丁重にお断りした。
フィリップは「シシー似の可愛い女の子が生まれてくるはず」と、ずっと言っているので、もう放っておこうと思う。
私は、男の子でも女の子でも、どちらでも構わない。フィリップに似たら良いなとは思うけれど……。
男の子でも女の子でも、好みが大きく影響しない、長く安定して使える内装にしたい。
「………………」
……ジュリオの事はもう分からない。
あの謝罪以降見かけなくなってしまったので、どうしているのかは分からない……。
元気……だと良いのだけれど……。
フィリップも詳しくは教えてくれない。当事者である私も知る権利がある筈だと言っても、フィリップは「処罰の決定権はシシーにはないんだよ」と言われてしまった……。
それは分かっているわ。
でも、教えてくれるくらい良いと思うの。
きっとフィリップは私が……ジュリオを許してあげてって駄々を捏ねると思っているのだわ。
そんな事はしないのに……。私だって、ジュリオのした事の罪の重みくらい分かっているもの。
本来、処刑される筈だったジュリオが生かされている。それ以上、何も望んだりするつもりはない。ただ知っておきたいだけなのに……。
でも、フィリップはルカ様に公式行事以外は……みたいな事を言っていたので、公式行事などがあれば会えるのかしら?
「どうしたの? 随分と思い詰めた顔をしているけど……。もしかして体調悪い?」
「え? あ……いえ、大丈夫です。元気です」
私が考え事をしていると、フィリップが私の顔を覗き込んで、頭を撫でてくれた。
フィリップは、あれ以降ジュリオの話をすると困ったような顔をしてはぐらかす。良い気がしないのだと思う。
だから、今ジュリオの事を考えてました、と言うのはやめた方が良い気がする……。
「私の事より、フィリップです。少し顔色が悪いですよ。ちゃんと眠っていますか?」
「眠っているよ。いつも一緒に眠っているじゃないか」
「……私、知っているんですよ。私が眠ったのを確認して、ベッドからいなくなって仕事をしていることを……」
フィリップは国を乱さずに、王位を交代する為に水面下で動いている。
だから、とても忙しいのだと思う。最近では、朝起きるとフィリップはいない。いえ、寧ろ眠った瞬間いなくなる……。
こう毎日じゃ、流石の私でも気付く。
よく眠ってしまう私でも気付くわよ。
そのせいか、フィリップはここ最近私に触れてくれない……忙しいのと、私のお腹が大きくなったからだと思う。
今、私は妊娠8ヶ月くらいで、お腹はとても大きい……。
そのせいか、体勢によってはすぐ苦しくなってしまう。フィリップは、そんな私を気遣って触れて来ないのだと思う。でも変わらず、頭を撫でてくれたり、チュッチュッと軽い口付けはいっぱいしてくれる……。
だけれど、深い口付けはしてくれない……。
だから、最近それも悩みだったりする……。
このままじゃ、生まれるまで何もないんじゃ……、なんて思ってしまう……。
いえ、懐妊中にそんな事を考える私がはしたないのかもしれない……。
「はは、バレてたか……参ったな……」
「フィリップ……お願いですから、夜くらい休んでください。フィリップが倒れたら、どうするのですか? 私、そんなの嫌です」
「……時間がいくらあっても足りない気がしてね。でも、シシーに心配をかけるのは良くないから、休める時はちゃんと休むよ」
フィリップは多分、お腹の子が生まれる前に政に関する権限を全て奪いたいのだと思う。その為には、時間がいくらあっても足りない。
その気持ちは分かるのだけれど……。
……こんな大切な時にイチャイチャしたい、なんて思っていたら駄目ね。私がフィリップの負担になってはならない。
政には関与出来ない私では、お手伝いは出来ないのだけれど、せめてフィリップが寛げるように、負担が少しでも減るように、私が支えなければ。
「フィリップ、お茶を淹れますね。なので、ゆっくり休んで下さい。お腹の子も、フィリップにはゆっくり休んで欲しいと思っていますよ」
「そうだね。頂こうかな」
フィリップが膝をついて、私のお腹に口付けをしたから、私はそのフィリップの髪を撫でた。
お父様を国政から遠ざける判断をするのは、とても辛い選択だと思う。
フィリップは、ご両親や弟を失う覚悟で今回動いている。ジュリオに関してはルカ様のところにいるから失う、というのとは違うのかもしれないけれど……。
それでも私のせいで兄弟の仲を壊してしまったのは事実だ。
せめて、少しでもフィリップを癒せるように頑張りたい。寄り添いたい。
私はフィリップをギュッと抱きしめた。
ただ、フィリップは水面下で色々と動いているようで、とても忙しそうだ。
私は、お腹の子が生まれた時の為に王太子宮を整えた。フィリップは、子供部屋の壁紙を花柄にしたいと言ったけれど、男の子が生まれる可能性も考えて、それは丁重にお断りした。
フィリップは「シシー似の可愛い女の子が生まれてくるはず」と、ずっと言っているので、もう放っておこうと思う。
私は、男の子でも女の子でも、どちらでも構わない。フィリップに似たら良いなとは思うけれど……。
男の子でも女の子でも、好みが大きく影響しない、長く安定して使える内装にしたい。
「………………」
……ジュリオの事はもう分からない。
あの謝罪以降見かけなくなってしまったので、どうしているのかは分からない……。
元気……だと良いのだけれど……。
フィリップも詳しくは教えてくれない。当事者である私も知る権利がある筈だと言っても、フィリップは「処罰の決定権はシシーにはないんだよ」と言われてしまった……。
それは分かっているわ。
でも、教えてくれるくらい良いと思うの。
きっとフィリップは私が……ジュリオを許してあげてって駄々を捏ねると思っているのだわ。
そんな事はしないのに……。私だって、ジュリオのした事の罪の重みくらい分かっているもの。
本来、処刑される筈だったジュリオが生かされている。それ以上、何も望んだりするつもりはない。ただ知っておきたいだけなのに……。
でも、フィリップはルカ様に公式行事以外は……みたいな事を言っていたので、公式行事などがあれば会えるのかしら?
「どうしたの? 随分と思い詰めた顔をしているけど……。もしかして体調悪い?」
「え? あ……いえ、大丈夫です。元気です」
私が考え事をしていると、フィリップが私の顔を覗き込んで、頭を撫でてくれた。
フィリップは、あれ以降ジュリオの話をすると困ったような顔をしてはぐらかす。良い気がしないのだと思う。
だから、今ジュリオの事を考えてました、と言うのはやめた方が良い気がする……。
「私の事より、フィリップです。少し顔色が悪いですよ。ちゃんと眠っていますか?」
「眠っているよ。いつも一緒に眠っているじゃないか」
「……私、知っているんですよ。私が眠ったのを確認して、ベッドからいなくなって仕事をしていることを……」
フィリップは国を乱さずに、王位を交代する為に水面下で動いている。
だから、とても忙しいのだと思う。最近では、朝起きるとフィリップはいない。いえ、寧ろ眠った瞬間いなくなる……。
こう毎日じゃ、流石の私でも気付く。
よく眠ってしまう私でも気付くわよ。
そのせいか、フィリップはここ最近私に触れてくれない……忙しいのと、私のお腹が大きくなったからだと思う。
今、私は妊娠8ヶ月くらいで、お腹はとても大きい……。
そのせいか、体勢によってはすぐ苦しくなってしまう。フィリップは、そんな私を気遣って触れて来ないのだと思う。でも変わらず、頭を撫でてくれたり、チュッチュッと軽い口付けはいっぱいしてくれる……。
だけれど、深い口付けはしてくれない……。
だから、最近それも悩みだったりする……。
このままじゃ、生まれるまで何もないんじゃ……、なんて思ってしまう……。
いえ、懐妊中にそんな事を考える私がはしたないのかもしれない……。
「はは、バレてたか……参ったな……」
「フィリップ……お願いですから、夜くらい休んでください。フィリップが倒れたら、どうするのですか? 私、そんなの嫌です」
「……時間がいくらあっても足りない気がしてね。でも、シシーに心配をかけるのは良くないから、休める時はちゃんと休むよ」
フィリップは多分、お腹の子が生まれる前に政に関する権限を全て奪いたいのだと思う。その為には、時間がいくらあっても足りない。
その気持ちは分かるのだけれど……。
……こんな大切な時にイチャイチャしたい、なんて思っていたら駄目ね。私がフィリップの負担になってはならない。
政には関与出来ない私では、お手伝いは出来ないのだけれど、せめてフィリップが寛げるように、負担が少しでも減るように、私が支えなければ。
「フィリップ、お茶を淹れますね。なので、ゆっくり休んで下さい。お腹の子も、フィリップにはゆっくり休んで欲しいと思っていますよ」
「そうだね。頂こうかな」
フィリップが膝をついて、私のお腹に口付けをしたから、私はそのフィリップの髪を撫でた。
お父様を国政から遠ざける判断をするのは、とても辛い選択だと思う。
フィリップは、ご両親や弟を失う覚悟で今回動いている。ジュリオに関してはルカ様のところにいるから失う、というのとは違うのかもしれないけれど……。
それでも私のせいで兄弟の仲を壊してしまったのは事実だ。
せめて、少しでもフィリップを癒せるように頑張りたい。寄り添いたい。
私はフィリップをギュッと抱きしめた。
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