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本編
48.ジュリオの最低な行動1
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「チェチーリア」
その日、私が朝食を終え、フィリップの待つ執務室に向かっていると、聞き慣れた声に名を呼ばれた。
今となっては、あまり関わりたくない人の声だ……。
「ジュリオ……」
「そんなに嫌そうな顔をするなよ。ちょっと前までは俺に惚れてたくせに」
…………わざわざ、そんな事言わなくても良いのに。
ジュリオは、私が睨んでも気にする素振りすらなく、私の肩を抱いたので、私はその手を振り払った。
「触らないで」
「冷たい女だな。あんなに俺の事好きだって泣き喚いたくせに」
「…………」
出来る事なら忘れてしまいたい事を、ニヤニヤと蒸し返してくるジュリオに怒りを通り越して呆れが勝った。
この人は本当に変わらないのね……。
ロベルト様やルカ様から罰を受けても尚、反省もしない。変わらない……。ここまで来ると、最早その駄目さが才能のような気すらしてくるから不思議だ。
「ほら、これ懐妊祝いのジュース」
「懐妊祝い? 貴方が……?」
「どういう意味だよ。俺だって幼馴染みの懐妊くらい祝ってやるよ」
疑わしいし、とても怪しいのだけれど……。
私がジトッとした目でジュリオを睨むと、ジュリオは気にせず私にそのジュースが入っているという瓶を手渡した。
「これ、俺が管理してる果樹園のやつ。甘くて美味いから飲んでみろよ」
果樹園……。そういえば、植物園や果樹園などの国営施設をジュリオが管理していたわね。専ら、ジュリオの逢い引き用の施設と化していると、フィリップが嘆いていた……。
確か……ジュースやお酒を作って販売しては、その利益を懐にいれているとも、フィリップは言っていた。
「ジュリオ、王族が個人的に民に物を売りつけて私腹を肥やすのは良くない事だわ。フィリップだって、良い顔はしないわよ」
「うるさいな。品位や品格ばかり気にしてたって飯は食えないんだよ」
「…………」
品位や品格から一番遠いところにいるくせに、何を言っているんだろう……。
私が呆れた視線をジュリオに向けていると、ジュリオがまた私の肩に手を掛けて、ジュースを飲めと言ってきた。
「あとで頂くわ。それより、触らないで」
「一口くらい、今飲めよ。お前の美味いって顔が見たくて持ってきたんだから」
「…………」
これは……絶対に碌でもないものだと思う。
実はロベルト様から報告が上がってきている。ジュリオは果樹園の果物を使って、媚薬入りのお酒やジュースを作っていると……。
数ヶ月前の学院の夏休みの時、ロベルト様にその媚薬入りのお酒を大量に飲ませ、ルカ様から返り討ちにあったと聞いた。
なので、きっとこのジュースの中には媚薬が入っていて、私に今ここで飲ませて何かをする魂胆なのだと思う……。
そして、フィリップと私の仲を壊すつもりなのだと思う。
というか、懐妊中に変な薬を飲ませるだなんて……一体何を考えているのかしら?
…………。
本当に昔の優しかったジュリオは、もういないのね。私の幻想でしかないのね。
というより、どれ程痛い目にあってもめげずに反省すらしない、その姿勢は人としてどうなのかしら?
王族は時として皆の手本にならなくてはならないのに……それとも反面教師でも目指しているのかしら?
でも、それを指摘するとジュリオの性格的に、無理矢理押さえつけて飲ませてきそうなので、私は……ここは穏便にすませて、後で媚薬入りかを確認して、フィリップから陛下に報告して貰おうと思った。
「……ジュリオ。私、今飲みたい気分ではないの。私へのお祝いなら、私のタイミングで飲んでも良いでしょう? 味の感想なら後で伝えるから……」
「……つまらない女だな、お前」
…………ジュリオ?
ジュリオは、本気でつまらないとでも思っていそうな目で、私を見下ろした。
「…………」
今飲む事を断ったくらいで、この人は何を言っているのかしら?
第一、放っておいて欲しい。
別に今更ジュリオに、つまらない女だと思われたって私は構わない。気にしない。
「そう? なら、そんなつまらない女を祝ってくれなくても構わないわ。私はそろそろ執務室に行かなければならないから、ここで失礼するわね」
「はいはい」
「…………」
私は油断をしていた。
この時、ジュリオはいとも簡単に引いてくれたから、私はとても油断していた……。
「チェシリー」
「え?」
フィリップの執務室が見えてきた瞬間、ジュリオに愛称で呼ばれて、驚いて振り返った私を床に突き飛ばした。
きゃあ、という悲鳴を上げて倒れてしまう私を、ジュリオが楽しそうに見ていた。
「い、痛いわ! 何をするの、ジュリオ、っ! や、やめて!」
ジュリオは突き飛ばした私の上に馬乗りになった。
お腹の上に容赦なく乗られて、私は苦しさに顔を青ざめた。
お腹の子が……。
「やめて! お腹に子がいるのよ! 上に乗らないでっ!」
「チェシリー、飲め」
「っ、やっ、いやっ! やめてっ!」
無理矢理、ジュースを飲まそうとしてくるジュリオに私が口をギュッと閉じると、ジュリオが私の口に指を入れ、無理矢理こじ開けようとしてきた。
もう駄目……助けて、フィリップ!
「この愚か者!」
私がギュッと目を瞑った瞬間、フィリップがジュリオを殴り飛ばしていた。
フィリップ……!
◆後書き◇
感想欄でジュリオの話題が出たと思ったら、今日の話がジュリオでした!
勘の良さに驚きました(*´艸`*)
その日、私が朝食を終え、フィリップの待つ執務室に向かっていると、聞き慣れた声に名を呼ばれた。
今となっては、あまり関わりたくない人の声だ……。
「ジュリオ……」
「そんなに嫌そうな顔をするなよ。ちょっと前までは俺に惚れてたくせに」
…………わざわざ、そんな事言わなくても良いのに。
ジュリオは、私が睨んでも気にする素振りすらなく、私の肩を抱いたので、私はその手を振り払った。
「触らないで」
「冷たい女だな。あんなに俺の事好きだって泣き喚いたくせに」
「…………」
出来る事なら忘れてしまいたい事を、ニヤニヤと蒸し返してくるジュリオに怒りを通り越して呆れが勝った。
この人は本当に変わらないのね……。
ロベルト様やルカ様から罰を受けても尚、反省もしない。変わらない……。ここまで来ると、最早その駄目さが才能のような気すらしてくるから不思議だ。
「ほら、これ懐妊祝いのジュース」
「懐妊祝い? 貴方が……?」
「どういう意味だよ。俺だって幼馴染みの懐妊くらい祝ってやるよ」
疑わしいし、とても怪しいのだけれど……。
私がジトッとした目でジュリオを睨むと、ジュリオは気にせず私にそのジュースが入っているという瓶を手渡した。
「これ、俺が管理してる果樹園のやつ。甘くて美味いから飲んでみろよ」
果樹園……。そういえば、植物園や果樹園などの国営施設をジュリオが管理していたわね。専ら、ジュリオの逢い引き用の施設と化していると、フィリップが嘆いていた……。
確か……ジュースやお酒を作って販売しては、その利益を懐にいれているとも、フィリップは言っていた。
「ジュリオ、王族が個人的に民に物を売りつけて私腹を肥やすのは良くない事だわ。フィリップだって、良い顔はしないわよ」
「うるさいな。品位や品格ばかり気にしてたって飯は食えないんだよ」
「…………」
品位や品格から一番遠いところにいるくせに、何を言っているんだろう……。
私が呆れた視線をジュリオに向けていると、ジュリオがまた私の肩に手を掛けて、ジュースを飲めと言ってきた。
「あとで頂くわ。それより、触らないで」
「一口くらい、今飲めよ。お前の美味いって顔が見たくて持ってきたんだから」
「…………」
これは……絶対に碌でもないものだと思う。
実はロベルト様から報告が上がってきている。ジュリオは果樹園の果物を使って、媚薬入りのお酒やジュースを作っていると……。
数ヶ月前の学院の夏休みの時、ロベルト様にその媚薬入りのお酒を大量に飲ませ、ルカ様から返り討ちにあったと聞いた。
なので、きっとこのジュースの中には媚薬が入っていて、私に今ここで飲ませて何かをする魂胆なのだと思う……。
そして、フィリップと私の仲を壊すつもりなのだと思う。
というか、懐妊中に変な薬を飲ませるだなんて……一体何を考えているのかしら?
…………。
本当に昔の優しかったジュリオは、もういないのね。私の幻想でしかないのね。
というより、どれ程痛い目にあってもめげずに反省すらしない、その姿勢は人としてどうなのかしら?
王族は時として皆の手本にならなくてはならないのに……それとも反面教師でも目指しているのかしら?
でも、それを指摘するとジュリオの性格的に、無理矢理押さえつけて飲ませてきそうなので、私は……ここは穏便にすませて、後で媚薬入りかを確認して、フィリップから陛下に報告して貰おうと思った。
「……ジュリオ。私、今飲みたい気分ではないの。私へのお祝いなら、私のタイミングで飲んでも良いでしょう? 味の感想なら後で伝えるから……」
「……つまらない女だな、お前」
…………ジュリオ?
ジュリオは、本気でつまらないとでも思っていそうな目で、私を見下ろした。
「…………」
今飲む事を断ったくらいで、この人は何を言っているのかしら?
第一、放っておいて欲しい。
別に今更ジュリオに、つまらない女だと思われたって私は構わない。気にしない。
「そう? なら、そんなつまらない女を祝ってくれなくても構わないわ。私はそろそろ執務室に行かなければならないから、ここで失礼するわね」
「はいはい」
「…………」
私は油断をしていた。
この時、ジュリオはいとも簡単に引いてくれたから、私はとても油断していた……。
「チェシリー」
「え?」
フィリップの執務室が見えてきた瞬間、ジュリオに愛称で呼ばれて、驚いて振り返った私を床に突き飛ばした。
きゃあ、という悲鳴を上げて倒れてしまう私を、ジュリオが楽しそうに見ていた。
「い、痛いわ! 何をするの、ジュリオ、っ! や、やめて!」
ジュリオは突き飛ばした私の上に馬乗りになった。
お腹の上に容赦なく乗られて、私は苦しさに顔を青ざめた。
お腹の子が……。
「やめて! お腹に子がいるのよ! 上に乗らないでっ!」
「チェシリー、飲め」
「っ、やっ、いやっ! やめてっ!」
無理矢理、ジュースを飲まそうとしてくるジュリオに私が口をギュッと閉じると、ジュリオが私の口に指を入れ、無理矢理こじ開けようとしてきた。
もう駄目……助けて、フィリップ!
「この愚か者!」
私がギュッと目を瞑った瞬間、フィリップがジュリオを殴り飛ばしていた。
フィリップ……!
◆後書き◇
感想欄でジュリオの話題が出たと思ったら、今日の話がジュリオでした!
勘の良さに驚きました(*´艸`*)
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