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本編
プロローグ
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私はチェチーリア・フォルクローレ。
フォルクローレ公爵家の長女であり、生まれた頃に次代の王の妃になるようにと育てられた。
そして、私はいま三月ほど早く生まれたという第2王子ジュリオ殿下を目の前にして、感動に震えている。王妃様と同じ淡い青紫色の髪に、国王陛下と同じ空色の瞳をした可愛らしい顔立ちの男の子。
背丈も私とそんなに変わらず華奢で、笑うと女の子みたいで、とても可愛らしい。
当時私たちは4歳で、私は幼いながらにジュリオに恋をしたのだと思う。この人の妃になりたいと思った。この人が次の王なら良いのにと思ったのを今でもよく覚えている。
それから私たちは幼馴染みとして毎日楽しく過ごした。
5歳の時に正妃教育が本格的に始まってからも、ジュリオとよく一緒に過ごしていたように思う。チェシリーという愛称で呼んでくれて、とても仲良く出来ていた。
私たちは将来結婚するのだと信じて疑わなかった。
だけれど、それはジュリオがまだ幼くて、いずれ魔力が開花するのではと期待されていたから、一緒に過ごす事を許されていたのだと思う。
あの時はまだ国王陛下は跡取りを正式に決めていなかったから……。
我が国は、王族や王族と縁戚関係が深い我が家のような公爵家に、魔力を有する者が生まれる。でも必ずではない。ジュリオのように魔力を持たずに生まれる子もいる。
だけれど、王位を継げるのは魔力のある王子だ。そして魔力のある公爵家の公女がその王子に嫁ぐ。そう昔から決められている。
私は幸か不幸か、生まれてすぐに魔力を示してしまった。と言っても、そんなに強い魔力はないのだけれど……。それでも魔力があるという事は、私は王族の方に嫁がなければならないという事だ。
けれど……ジュリオは魔力が開花しなかった。第1王子フィリップ殿下や第3王子ロベルト殿下も魔力があるのに、同じ父母から生まれた王子なのに……ジュリオには魔力が開花しなかった。
だから、王位継承順から外されてしまった。
そして、私が7歳の時に第1王子殿下を王太子にと正式に決まってしまった。それと同時に私はフィリップ殿下の婚約者となった。
この時、私はとてもショックだったのを覚えている。
ずっと幼馴染みであるジュリオのお嫁さんになれると思っていた私は、幼いながらも目の前が真っ暗になったのを今でも覚えている。
「ごめんな……」
「ジュリオ……」
「ごめん……」
「謝らないで。謝らないで、ジュリオ」
謝るくらいなら私を連れて逃げて。逃げてよ。
でも、私たちはまだ7歳だ。たったの7歳。
逃げたって生きていける訳がない……。
王族や貴族として育てられた私たちが外の世界で生きていける訳がない……。
「俺、頑張るよ。頑張る。必ず、魔力を開花させてチェシリーを俺の妃にするから。俺が次の王になってやるから」
「ジュリオ……。ええ、そうね。私たちはまだ7歳なのだもの。まだまだチャンスはあるわよね」
私たちはその日泣きながら抱き合い、お互いを慰めあった。
だけれど、月日が経つにつれて、周りが私たちが仲良くする事をよく思わなくなっていった。
当たり前だ。王太子殿下の婚約者とその弟の王子殿下との醜聞などあってはならない。
王太子殿下は、たまにお会いすると優しく微笑みかけてご挨拶をして下さったり、誕生日や季節の節目などに贈り物をくださる以外は……大した関わりはなかった。
私がジュリオと親しくしている事を咎めるような事もなさらなかった。
だけれど、私たちが13歳から18歳の間、通わなければならない学院へと入る頃には、私とジュリオの関係は更に変化を遂げていた。
もう愛称で呼んでくれることもなく、私の顔を見ると鬱陶しいと逃げるようになった……。
以前は「チェシリーの金の髪はいつもキラキラと輝いて綺麗だな。それに、大きな緑の瞳もとても美しい。チェシリーは成長したら絶対に美人になるよ。俺が保証する」だなんて、褒めてくれていたのに……今は鬱陶しいとしか言われなくなった。
魔力の有無がこうも私たちを引き裂き……駄目にするのかと思うと情けなかった……魔力など持って生まれたから私は好きな人と結婚する事も出来ない……。
それがとても辛かった……。
フォルクローレ公爵家の長女であり、生まれた頃に次代の王の妃になるようにと育てられた。
そして、私はいま三月ほど早く生まれたという第2王子ジュリオ殿下を目の前にして、感動に震えている。王妃様と同じ淡い青紫色の髪に、国王陛下と同じ空色の瞳をした可愛らしい顔立ちの男の子。
背丈も私とそんなに変わらず華奢で、笑うと女の子みたいで、とても可愛らしい。
当時私たちは4歳で、私は幼いながらにジュリオに恋をしたのだと思う。この人の妃になりたいと思った。この人が次の王なら良いのにと思ったのを今でもよく覚えている。
それから私たちは幼馴染みとして毎日楽しく過ごした。
5歳の時に正妃教育が本格的に始まってからも、ジュリオとよく一緒に過ごしていたように思う。チェシリーという愛称で呼んでくれて、とても仲良く出来ていた。
私たちは将来結婚するのだと信じて疑わなかった。
だけれど、それはジュリオがまだ幼くて、いずれ魔力が開花するのではと期待されていたから、一緒に過ごす事を許されていたのだと思う。
あの時はまだ国王陛下は跡取りを正式に決めていなかったから……。
我が国は、王族や王族と縁戚関係が深い我が家のような公爵家に、魔力を有する者が生まれる。でも必ずではない。ジュリオのように魔力を持たずに生まれる子もいる。
だけれど、王位を継げるのは魔力のある王子だ。そして魔力のある公爵家の公女がその王子に嫁ぐ。そう昔から決められている。
私は幸か不幸か、生まれてすぐに魔力を示してしまった。と言っても、そんなに強い魔力はないのだけれど……。それでも魔力があるという事は、私は王族の方に嫁がなければならないという事だ。
けれど……ジュリオは魔力が開花しなかった。第1王子フィリップ殿下や第3王子ロベルト殿下も魔力があるのに、同じ父母から生まれた王子なのに……ジュリオには魔力が開花しなかった。
だから、王位継承順から外されてしまった。
そして、私が7歳の時に第1王子殿下を王太子にと正式に決まってしまった。それと同時に私はフィリップ殿下の婚約者となった。
この時、私はとてもショックだったのを覚えている。
ずっと幼馴染みであるジュリオのお嫁さんになれると思っていた私は、幼いながらも目の前が真っ暗になったのを今でも覚えている。
「ごめんな……」
「ジュリオ……」
「ごめん……」
「謝らないで。謝らないで、ジュリオ」
謝るくらいなら私を連れて逃げて。逃げてよ。
でも、私たちはまだ7歳だ。たったの7歳。
逃げたって生きていける訳がない……。
王族や貴族として育てられた私たちが外の世界で生きていける訳がない……。
「俺、頑張るよ。頑張る。必ず、魔力を開花させてチェシリーを俺の妃にするから。俺が次の王になってやるから」
「ジュリオ……。ええ、そうね。私たちはまだ7歳なのだもの。まだまだチャンスはあるわよね」
私たちはその日泣きながら抱き合い、お互いを慰めあった。
だけれど、月日が経つにつれて、周りが私たちが仲良くする事をよく思わなくなっていった。
当たり前だ。王太子殿下の婚約者とその弟の王子殿下との醜聞などあってはならない。
王太子殿下は、たまにお会いすると優しく微笑みかけてご挨拶をして下さったり、誕生日や季節の節目などに贈り物をくださる以外は……大した関わりはなかった。
私がジュリオと親しくしている事を咎めるような事もなさらなかった。
だけれど、私たちが13歳から18歳の間、通わなければならない学院へと入る頃には、私とジュリオの関係は更に変化を遂げていた。
もう愛称で呼んでくれることもなく、私の顔を見ると鬱陶しいと逃げるようになった……。
以前は「チェシリーの金の髪はいつもキラキラと輝いて綺麗だな。それに、大きな緑の瞳もとても美しい。チェシリーは成長したら絶対に美人になるよ。俺が保証する」だなんて、褒めてくれていたのに……今は鬱陶しいとしか言われなくなった。
魔力の有無がこうも私たちを引き裂き……駄目にするのかと思うと情けなかった……魔力など持って生まれたから私は好きな人と結婚する事も出来ない……。
それがとても辛かった……。
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