50 / 58
番外編(ルクレツィオ視点)
分けられた公私と私の戸惑い
しおりを挟む
翌朝、神殿から帰ってくると王太子妃の執務をベレニーチェが、涼しい顔でこなしていた。
「てっきり慌てているかと思ったが……」
「全て一度経験済みの執務ですから、これくらい余裕ですよ」
そうだった。ベレニーチェは馬鹿だが、一度得た知識を忘れない……賢いのか馬鹿なのか、よく分からない奴だった。
「水道設備についての見解を求められたので、私なりの見解をまとめておきました。イストリアの水道設備は、とても高度ですね。さながらAcquedotto romanoを思い起こす素晴らしさがあります」
ベレニーチェが私に渡した見解書は、とても分厚かった。見解を求められたからといって、このように水道設備だけで、よく語れるものだ。
私がベレニーチェのまとめた見解に目を通すと、イストリアの水道は魔力を使わず、全て人の知識と技術によって作られている事を知った。
数百年かけて建設され、現在10の水道から万遍なく水が供給されているらしい。
時には50メートル以上のくぼ地を通る個所で、サイフォンと呼ばれるパイプの圧力を利用し、水を上昇させ、上下水道を可能にしているとベレニーチェの見解書には書かれていた。そして、ほとんど全ての水道で、川や谷を超えて水を運ぶための水管橋が使用されていると。
偶然の故障や、堆積物の掃除、天然水に含まれる炭酸カルシウムの析出物の除去のために、包括的なメンテナンスシステムを必要とし、それが定期的に行われているそうだ。そのため、地下の導水渠には一定の間隔で立坑が設けられているそうだが、さっぱり分からぬ。
「この見解も一度経験済みなのか?」
「以前は、王太子が担うほぼ全ての執務を私が担っておりました。貴方はそれにサインもしくは印を押すだけだったので……」
そうだったな……。
はぁ、頭が痛くなってきた……。
「これは全て私たちにとって必要な知識と、やらなければならない執務です。私たちは、国王陛下の政務の補助的なお仕事ですが、それでも貴方はいずれ国王陛下がなさっている全てを出来るようにならなければいけません」
「全て……?」
い、いや、勿論……分かっている。分かってはいるが、父上のように出来るだろうか……。あの人は優しいだけに見えて、実はとても有能なのだが……。
「出来るだろうか?」
「出来ます。というより、陛下がお一人ではないように殿下もお一人ではありません。私たちがサポートし、共に歩んでいくので大丈夫ですよ」
ベレニーチェの言葉に安堵しつつ、ベレニーチェの手元を見ると、話しながらも次々と執務をこなしていっている。
私は今朝まで、ベレニーチェのような愚か者がいずれ王妃となれるのだろうかと心配していたが、杞憂だったようだ。
ベレニーチェは公私を分けている。執務中は父上を陛下と呼び、私を殿下と自然に呼んでいる。
いつもやれば出来ると言っていたが、こういう事だったのかと、今実感している。
当然ながら、突飛な発言や行動もない。
頭に入っている知識をフル活用し、大臣たちと議論を交わしながら、執務を片付けていっている。
こういうところは勉強が出来る賢さだけでなく、天性の賢さがあるのだろうなと思ってしまう。
普段の行動も、もう少し賢くなればとは思うが、それはそれでギャップがあって良いのかもしれぬ。
私はそのような事を考えながら、己の執務をこなす事にした。ベレニーチェの過去の私のように、全てをベレニーチェに押し付けるような真似だけは絶対にせぬ。
私は共にベレニーチェと肩を並べて歩いていくと婚儀の折、神の前で誓ったのだ。
「ベレニーチェ……、あ、いや……」
ベレニーチェが私を殿下と呼ぶなら、私は公式の場ではベレニーチェを何と呼べば良いのだろうか……。
父上は母上の事を我が妃や王妃と呼んでいたな……。おじ様もおば様のことを女王と呼んでいた。
では、私も妃や王太子妃と呼べば良いのか?
「ベレニーチェで大丈夫ですよ。それより、どうしたんですか?」
私の頭の中を疑問符が飛び交っていると、ベレニーチェがいつものような屈託のない笑顔を向けてくれたので、安心した。
執務中のベレニーチェは別人のようだ。学者のような顔をしながら、知識を活用していっている。
「あっ、いや……エトルリアの土木建築技術は、とても素晴らしいものがある。エトルリアの方々を招き、教えを乞えないだろうか?」
「ああ、道路の整備の件ですね。そうですね、お父様に伝えておきますね」
この場でも、お父様はお父様と呼ぶのだな……。エトルリア王でもなく、陛下でもないのだな。
私の中にモヤモヤした嫉妬のような感情が顔を出しそうになったが、私は何とかそれを追いやり、執務へと戻った。
「あー、疲れた。お腹空きましたね。何か作りますか?」
執務が終わるとベレニーチェの顔がいつもの能天気な顔に戻った。馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、これは褒めてやらねばならぬのだろうな。
だが、おじ様への嫉妬心のせいか、上手く褒めてやれる気がせぬ。寧ろ、交わりの時に八つ当たってしまいそうだ。
「みなさーん、何食べますか? 軽く何か作りますよー」
ベレニーチェが皆に聞いて回っているが、皆が皆、執務が終わったら各々する事があるようで、やんわりと断られていた。
床に座り込みながら、悲しーと叫んでいる。
こういうところは何一つ変わらぬな。ただの愚か者だ。
「ルクレツィオ。ルクレツィオはいらないって言いませんよね?」
「ん? ああ、一緒に厨房まで行くか?」
「はい!」
私がそう言うと、スキップしたり飛び跳ねたり回ったりしながら、ベレニーチェは厨房へと向かった。
……………これは先程、執務をしていたベレニーチェと同じ人間か? そう疑いたくなるほど、表情も態度も違う。ギャップがあり過ぎだろう。
「ルクレツィオは何食べたいですか?」
「ティンバッロが食べたい。だが、ピセッリは入れるな」
「ああ、はいはい。ルクレツィオの嫌いなものは熟知しているので大丈夫ですよ」
厨房に行くと、ベレニーチェがテキパキと調理器具の用意をし始めた。
「何か手伝う事はあるか?」
「マッケローニと、詰めたい肉と野菜を持ってきて下さい。あと冷所で寝かせてあるパイ生地の様子も確認しておいて下さい」
私が言われた通り用意すると、ベレニーチェが礼を言い、それを受け取り手早く作り始めた。
このティンバッロは甘いパイの中に塩気のある具材がぎっしり入っていて、とても美味いのだ。
何やらトマトの歌を歌いながら作っているが、私はそんなベレニーチェを放っておきつつ、味つけられ調理されているパイの中身をつまみ食いしていた。
「あー! つまみ食いは駄目ですよー!」
「ああ、すまぬ」
「すまぬと言いながら、お皿に取り分けるのやめて下さい!」
ベレニーチェがキーキーと言っているが、私がそれを無視していたら、ベレニーチェは何も言わなくなった。
ベレニーチェがオーブンにティンバッロを入れ、頃合いを見て、入れ替えようとしたので、私がやると言うと、ベレニーチェがとても驚いた顔をした。
「えっ!? 大丈夫ですか? 火傷しないで下さいねっ!?」
「馬鹿にするな……これくらい……っ!」
「ぎゃあっ! だから、言ったじゃないですか! 早く冷やして、ばかぁ!」
ベレニーチェは叫びながら、私の手を氷水に突っ込んだ。心なしか、厨房にいる皆に生暖かい目を向けられている気がするが……。
その後、ティンバッロが焼けたので、父上たちにお裾分けしがてら、母上に回復魔法で火傷を治して頂いた。
◆後書き◇
ベレニーチェは執務が終わると、素に戻ります。知識とそれを活用するのが好きなので、一見すると、まともに見えます。執務中は。
メートル法に関しては現在も使われていますし、イタリアにおいてはトスカーナが1860年にサルデーニャ王国に併合され、1861年にイタリア王国として成立した頃から用いられた単位でもあるので、こちらでも使用しています。
ローマ水道の参考URL(日本語ではなくイタリア語です)
https://it.m.wikipedia.org/wiki/Acquedotto_romano
「てっきり慌てているかと思ったが……」
「全て一度経験済みの執務ですから、これくらい余裕ですよ」
そうだった。ベレニーチェは馬鹿だが、一度得た知識を忘れない……賢いのか馬鹿なのか、よく分からない奴だった。
「水道設備についての見解を求められたので、私なりの見解をまとめておきました。イストリアの水道設備は、とても高度ですね。さながらAcquedotto romanoを思い起こす素晴らしさがあります」
ベレニーチェが私に渡した見解書は、とても分厚かった。見解を求められたからといって、このように水道設備だけで、よく語れるものだ。
私がベレニーチェのまとめた見解に目を通すと、イストリアの水道は魔力を使わず、全て人の知識と技術によって作られている事を知った。
数百年かけて建設され、現在10の水道から万遍なく水が供給されているらしい。
時には50メートル以上のくぼ地を通る個所で、サイフォンと呼ばれるパイプの圧力を利用し、水を上昇させ、上下水道を可能にしているとベレニーチェの見解書には書かれていた。そして、ほとんど全ての水道で、川や谷を超えて水を運ぶための水管橋が使用されていると。
偶然の故障や、堆積物の掃除、天然水に含まれる炭酸カルシウムの析出物の除去のために、包括的なメンテナンスシステムを必要とし、それが定期的に行われているそうだ。そのため、地下の導水渠には一定の間隔で立坑が設けられているそうだが、さっぱり分からぬ。
「この見解も一度経験済みなのか?」
「以前は、王太子が担うほぼ全ての執務を私が担っておりました。貴方はそれにサインもしくは印を押すだけだったので……」
そうだったな……。
はぁ、頭が痛くなってきた……。
「これは全て私たちにとって必要な知識と、やらなければならない執務です。私たちは、国王陛下の政務の補助的なお仕事ですが、それでも貴方はいずれ国王陛下がなさっている全てを出来るようにならなければいけません」
「全て……?」
い、いや、勿論……分かっている。分かってはいるが、父上のように出来るだろうか……。あの人は優しいだけに見えて、実はとても有能なのだが……。
「出来るだろうか?」
「出来ます。というより、陛下がお一人ではないように殿下もお一人ではありません。私たちがサポートし、共に歩んでいくので大丈夫ですよ」
ベレニーチェの言葉に安堵しつつ、ベレニーチェの手元を見ると、話しながらも次々と執務をこなしていっている。
私は今朝まで、ベレニーチェのような愚か者がいずれ王妃となれるのだろうかと心配していたが、杞憂だったようだ。
ベレニーチェは公私を分けている。執務中は父上を陛下と呼び、私を殿下と自然に呼んでいる。
いつもやれば出来ると言っていたが、こういう事だったのかと、今実感している。
当然ながら、突飛な発言や行動もない。
頭に入っている知識をフル活用し、大臣たちと議論を交わしながら、執務を片付けていっている。
こういうところは勉強が出来る賢さだけでなく、天性の賢さがあるのだろうなと思ってしまう。
普段の行動も、もう少し賢くなればとは思うが、それはそれでギャップがあって良いのかもしれぬ。
私はそのような事を考えながら、己の執務をこなす事にした。ベレニーチェの過去の私のように、全てをベレニーチェに押し付けるような真似だけは絶対にせぬ。
私は共にベレニーチェと肩を並べて歩いていくと婚儀の折、神の前で誓ったのだ。
「ベレニーチェ……、あ、いや……」
ベレニーチェが私を殿下と呼ぶなら、私は公式の場ではベレニーチェを何と呼べば良いのだろうか……。
父上は母上の事を我が妃や王妃と呼んでいたな……。おじ様もおば様のことを女王と呼んでいた。
では、私も妃や王太子妃と呼べば良いのか?
「ベレニーチェで大丈夫ですよ。それより、どうしたんですか?」
私の頭の中を疑問符が飛び交っていると、ベレニーチェがいつものような屈託のない笑顔を向けてくれたので、安心した。
執務中のベレニーチェは別人のようだ。学者のような顔をしながら、知識を活用していっている。
「あっ、いや……エトルリアの土木建築技術は、とても素晴らしいものがある。エトルリアの方々を招き、教えを乞えないだろうか?」
「ああ、道路の整備の件ですね。そうですね、お父様に伝えておきますね」
この場でも、お父様はお父様と呼ぶのだな……。エトルリア王でもなく、陛下でもないのだな。
私の中にモヤモヤした嫉妬のような感情が顔を出しそうになったが、私は何とかそれを追いやり、執務へと戻った。
「あー、疲れた。お腹空きましたね。何か作りますか?」
執務が終わるとベレニーチェの顔がいつもの能天気な顔に戻った。馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、これは褒めてやらねばならぬのだろうな。
だが、おじ様への嫉妬心のせいか、上手く褒めてやれる気がせぬ。寧ろ、交わりの時に八つ当たってしまいそうだ。
「みなさーん、何食べますか? 軽く何か作りますよー」
ベレニーチェが皆に聞いて回っているが、皆が皆、執務が終わったら各々する事があるようで、やんわりと断られていた。
床に座り込みながら、悲しーと叫んでいる。
こういうところは何一つ変わらぬな。ただの愚か者だ。
「ルクレツィオ。ルクレツィオはいらないって言いませんよね?」
「ん? ああ、一緒に厨房まで行くか?」
「はい!」
私がそう言うと、スキップしたり飛び跳ねたり回ったりしながら、ベレニーチェは厨房へと向かった。
……………これは先程、執務をしていたベレニーチェと同じ人間か? そう疑いたくなるほど、表情も態度も違う。ギャップがあり過ぎだろう。
「ルクレツィオは何食べたいですか?」
「ティンバッロが食べたい。だが、ピセッリは入れるな」
「ああ、はいはい。ルクレツィオの嫌いなものは熟知しているので大丈夫ですよ」
厨房に行くと、ベレニーチェがテキパキと調理器具の用意をし始めた。
「何か手伝う事はあるか?」
「マッケローニと、詰めたい肉と野菜を持ってきて下さい。あと冷所で寝かせてあるパイ生地の様子も確認しておいて下さい」
私が言われた通り用意すると、ベレニーチェが礼を言い、それを受け取り手早く作り始めた。
このティンバッロは甘いパイの中に塩気のある具材がぎっしり入っていて、とても美味いのだ。
何やらトマトの歌を歌いながら作っているが、私はそんなベレニーチェを放っておきつつ、味つけられ調理されているパイの中身をつまみ食いしていた。
「あー! つまみ食いは駄目ですよー!」
「ああ、すまぬ」
「すまぬと言いながら、お皿に取り分けるのやめて下さい!」
ベレニーチェがキーキーと言っているが、私がそれを無視していたら、ベレニーチェは何も言わなくなった。
ベレニーチェがオーブンにティンバッロを入れ、頃合いを見て、入れ替えようとしたので、私がやると言うと、ベレニーチェがとても驚いた顔をした。
「えっ!? 大丈夫ですか? 火傷しないで下さいねっ!?」
「馬鹿にするな……これくらい……っ!」
「ぎゃあっ! だから、言ったじゃないですか! 早く冷やして、ばかぁ!」
ベレニーチェは叫びながら、私の手を氷水に突っ込んだ。心なしか、厨房にいる皆に生暖かい目を向けられている気がするが……。
その後、ティンバッロが焼けたので、父上たちにお裾分けしがてら、母上に回復魔法で火傷を治して頂いた。
◆後書き◇
ベレニーチェは執務が終わると、素に戻ります。知識とそれを活用するのが好きなので、一見すると、まともに見えます。執務中は。
メートル法に関しては現在も使われていますし、イタリアにおいてはトスカーナが1860年にサルデーニャ王国に併合され、1861年にイタリア王国として成立した頃から用いられた単位でもあるので、こちらでも使用しています。
ローマ水道の参考URL(日本語ではなくイタリア語です)
https://it.m.wikipedia.org/wiki/Acquedotto_romano
2
お気に入りに追加
568
あなたにおすすめの小説
孕まされて捨てられた悪役令嬢ですが、ヤンデレ王子様に溺愛されてます!?
季邑 えり
恋愛
前世で楽しんでいた十八禁乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生したティーリア。婚約者の王子アーヴィンは物語だと悪役令嬢を凌辱した上で破滅させるヤンデレ男のため、ティーリアは彼が爽やかな好青年になるよう必死に誘導する。その甲斐あってか物語とは違った成長をしてヒロインにも無関心なアーヴィンながら、その分ティーリアに対してはとんでもない執着&溺愛ぶりを見せるように。そんなある日、突然敵国との戦争が起きて彼も戦地へ向かうことになってしまう。しかも後日、彼が囚われて敵国の姫と結婚するかもしれないという知らせを受けたティーリアは彼の子を妊娠していると気がついて……
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
腹黒王子は、食べ頃を待っている
月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。
絶対、離婚してみせます!! 皇子に利用される日々は終わりなんですからね
迷い人
恋愛
命を助けてもらう事と引き換えに、皇家に嫁ぐ事を約束されたラシーヌ公爵令嬢ラケシスは、10歳を迎えた年に5歳年上の第五皇子サリオンに嫁いだ。
愛されていると疑う事無く8年が過ぎた頃、夫の本心を知ることとなったが、ラケシスから離縁を申し出る事が出来ないのが現実。 悩むラケシスを横目に、サリオンは愛妾を向かえる準備をしていた。
「ダグラス兄様、助けて、助けて助けて助けて」
兄妹のように育った幼馴染であり、命の恩人である第四皇子にラケシスは助けを求めれば、ようやく愛しい子が自分の手の中に戻ってくるのだと、ダグラスは動き出す。
悪役令嬢は国王陛下のモノ~蜜愛の中で淫らに啼く私~
一ノ瀬 彩音
恋愛
侯爵家の一人娘として何不自由なく育ったアリスティアだったが、
十歳の時に母親を亡くしてからというもの父親からの執着心が強くなっていく。
ある日、父親の命令により王宮で開かれた夜会に出席した彼女は
その帰り道で馬車ごと崖下に転落してしまう。
幸いにも怪我一つ負わずに助かったものの、
目を覚ました彼女が見たものは見知らぬ天井と心配そうな表情を浮かべる男性の姿だった。
彼はこの国の国王陛下であり、アリスティアの婚約者――つまりはこの国で最も強い権力を持つ人物だ。
訳も分からぬまま国王陛下の手によって半ば強引に結婚させられたアリスティアだが、
やがて彼に対して……?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる
一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。
そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる