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第三章 聖獣の主
52.嫉妬※(マッティア視点)
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「やっ、あ……あぁ……、待っ、も……だめっ……許しっ、あああっ!」
最初のうちは、器が小さいや最低などと憎まれ口を叩いていたが、押し倒し何度かイカせれば、いつものように私にしがみつき、可愛らしく啼くようになった。
ベアトリーチェは、耳や胸でイク事は悪い事だと躊躇するところがあるので、その戸惑いさえも羞恥に変え、何度かイカせてやると泣きながら、許してと何度も私に乞うた。
既に涙と涎で、ぐちゃぐちゃなベアトリーチェを静かに見つめながら、ナカの指を轟くようにうごめかせ、ベアトリーチェの良いトコロを擦り上げると、一際大きく体がしなった。
「ひゃっ……ああ、待っ……も、やぁ……っ、マッティ、マッ、ティ……やだっ、やなのっ……あっ、あっ、ああっ」
また限界が近いのだろう。もうイキたくないとでもいうように首を振るベアトリーチェに、私は口付けを落とした後、耳に口をつけ囁いた。
「解放されたいのならば、貴方は私のモノだという事を認めなさい」
「やぁっ……ん、ふっ……やっ、ぜったい、やぁっ……ひあっ! やっ、それ……ひうっ、あああぁぁぁっ!」
嫌だと言いながら私を睨みつけるベアトリーチェに、征服欲がそそられた。
いやいやと首を振りながらも、ベッドに手を付いている私の腕にしがみつき、与えられる快感に耐えるベアトリーチェに、私は情欲を煽られ、もっと啼かせてみたくなった。
弱点の耳に舌を這わせながら、ナカの指を2本に増やせば、そこはトロトロにほぐれ、私の指を容易にのみ込んだ。
「やぁ、むりぃ…イッた、イッ、てるのっ……マッティ……おねがっ、も、むりぃっ……ああっ! あああぁぁっ!」
そして、耳に舌を差し込み、ねっとりと舐めると、ベアトリーチェは体を仰け反り、私の指をきゅうきゅうと締め付け、またもや簡単に達した。
私はそれでもナカへの刺激を緩めず、容赦なく責め立ててやると、ベアトリーチェは泣きながら嬌声を上げ続けた。
「マッ……ティア……さまぁ……も、ゆるし……ああっ、やぁっ……も、むりぃ」
「ならば、私のモノだと認めなさい」
「いっ、いやっ……」
「だが、体は正直なようだ。体は素直に私を求め、今もほら私の指を美味しそうに呑み込んでいるぞ、ベアトリーチェ」
私の言葉に、いやいやと首を振り、違う違うと否定するベアトリーチェの良いトコロを擦ってやれば、またも容易く達したので、ベアトリーチェの耳元で、何が違うのかと問うてやれば、ベアトリーチェは大粒の涙をボロボロとこぼした。
「ベアトリーチェ、愛しているのだ。どうか、私のモノになってくれ。ベアトリーチェ……」
涙でぐちゃぐちゃのベアトリーチェを慰めるように口付け、舌を絡めとれば、私に必死でしがみつき、その口付けに応えてくれる。
ゆっくりと絡められてきた舌に吸い付き、甘噛みしてやると、いやいやと首を振ったが、くちゅくちゅとお互いの唾液が混ざる音に熱が増していき、更に唇を重ねてやる。
その間もベアトリーチェは私の指を締め付け、ひっきりなしに啼いている。口を閉じることも出来ず、常に声を上げている為か、先程の口付けで交わされた唾液がベアトリーチェの口元をつたい流れ落ちた。
「ひゃっ……ま、また変っ……も、やぁっ……あっ、あひっ、んんっ、んんぅ、マッティアッ、んんあっ!」
身篭っているベアトリーチェの体を考えるのであれば、このように嫌がるベアトリーチェを何度もイカせてはならぬのだと分かってはいるが、もう止められない。
己の体に快感を刻みつける者が誰なのかを、ベアトリーチェに分からせてやりたかったのだ。私の愛をこの体にぶつけてやりたかったのだ。
そして、己が私のモノだという事をベアトリーチェの口から言わせたいのだ。
「好きなだけイくが良い。私のモノだと理解するまで、何度でもイかせてやろう」
「いやぁ……も、やぁっ……んぅ、ああっ……ゆるしっ……ああっ、あああぁぁっ!! ああっ、も、イッてる、イッてるからぁ、あああっ、あああぁぁ!!」
何度もイかされ、敏感になっているベアトリーチェは、私が与える刺激にいとも簡単に達する。それが苦しいのか、限界が近づく度、私に許しを乞うた。
だが、それでも私のモノだとは認めない。それがとても腹立たしく、いけないと思っていても何度も啼かせてしまう。
「やぁ、だめ……もう変、変なのっ……おねがっ……おかしくなっ、ああっ、あああ! あ、あ、あっ、あああぁぁっ!!」
私にしがみつきながら、派手に達したかと思うと、ベアトリーチェは意識を失った。
その顔は涙と涎でぐちゃぐちゃで、私は少し心が痛んだが、それでも満足いく答えが得られていない苛立ちを抑えられず、ベアトリーチェの顔と体を清めた後、私は部屋を出て行った。
「ベアトリーチェ、貴方が認めるまで毎夜でも啼かせるまでです」
◆
「ベルタ! アニェッラわたくし、今日は此処で眠りたくないのです! どうか、貴方たちの部屋で寝かせてください!」
「それはなりません。今日も国王陛下がいらっしゃるというのに、部屋を脱げ出しては怒られてしまいますよ」
「だけれど、もう嫌なのです。今日はゆっくり眠りたいのです」
転移の魔術を使い、気配を消してベアトリーチェの部屋に来てみれば、3人とも私の存在には全く気付いていないようだ。
ベアトリーチェが私から逃れる算段をしていた……。
「でしたら、そう仰れば良いのです。陛下は、ベアトリーチェ様にベタ惚れなのですから、言えば聞いて下さいますよ」
「そんなの無理です」
「大丈夫ですよ。甘えてみせれば、簡単に言うことを聞いてくれますよ」
2人の女官の言葉に私は溜息を吐いた。此処まで簡単だと思われていたとは……。
常日頃からベアトリーチェが威厳が威厳がと、言っていた意味を理解した私は苦笑した。
だが、今回ばかりは甘えてきたとて許してはやらぬ。私のモノだと言うまでは、やめてやる気はない。
私だとて、ペガゾとの事を本気で怒っている訳ではないのだ。ベアトリーチェの迂闊さと、無防備さに呆れ、何よりベアトリーチェに分からせたいだけだ。
ベアトリーチェが私だけのモノだという事を……。
「ベアトリーチェ……」
「「「きゃあっ!」」」
私が背後から声をかけると、3人とも飛び上がり悲鳴を上げ、ベアトリーチェは女官たちの後ろに隠れた。
「マ、マッティア様……、わたくし、今日はゆっくり眠りたいのです。お腹の赤ちゃんの為にも眠りたいのです」
ベアトリーチェの懇願に、私が微笑み頷いてやると、ベアトリーチェは首を傾げた。
「もう怒っていないのですか?」
「ほら、ベアトリーチェ様。大丈夫でしょう? 今日は甘えて、そして甘やかして頂けば良いのです」
そう言って、女官たちはにこにこ笑いながら退室していった。ベアトリーチェは去っていく女官を名残り惜しそうに見つめていたが、恐る恐る私の方に振り向き、じっと見つめてきた。
「マッティア様、本当にもう怒っていないのですか? わたくし、昨夜のマッティア様は恐ろしくて、もう嫌なのです」
「でしたら、早く理解する事です。貴方が誰のモノかという事を……」
「それは……」
ベアトリーチェは困ったように俯いた。ドレスを掴みながら、この場を逃れる言葉を探しているのだろう。顔にどうしようと書いてある。
「マッティア様との交わりは、最初こそ戸惑いが大きくありましたけれど、恥ずかしくても……とても気持ちよくありました。ですが、昨日はただ苦しいだけでした。無理矢理、何度も快感を呼び起こされ……ただ苦しいだけでした……」
ベアトリーチェが辛そうな顔でそう言い、ベアトリーチェの瞳が私に助けを求めるかのように揺らめいた。
私は、ベアトリーチェの気持ち良い発言で胸が高鳴り、鼓動がはやく脈打ち、今にも押し倒したくなったが……、グッと堪え、ベアトリーチェの次の言葉を待った。
「マッティア様は、わたくしに言ったではないですか。憎んでいても構わないと……生きて傍にいてくれるだけで良いと……それなのに……、何を焦っているのですか? あのような事をしたら、わたくしの心が離れるとは思われないのですか?」
ベアトリーチェが私に近付き、責めるように私の胸を叩きながら、そう言った。
「言葉で言うのは簡単です。確かに、わたくしはマッティア様の物でしょう。だって、わたくしは王家の繁栄の為の生贄……そのようにお兄様から捧げられたようなものです。だけれど、貴方だけはわたくしを物のように扱わないと何処かで思っておりました。だけれど、それは間違いだったのですね……」
ベアトリーチェの瞳には、私への失望の色がはっきりと揺らめいていた。その言葉で、私は己がした事の愚かさを理解し、呆然と立ち尽くしてしまった。
「……すまぬ。本当にどうかしていたのだ……。ベアトリーチェを欲するあまり、己を見失い、ベアトリーチェを苦しめてしまった……。だが、物のように扱うつもりなどなかったのだ……。結果として、そうなってしまい、本当にすまなかった」
私はいつものように取り繕う敬語すらも使う余裕がなくなっていた。
生贄として捧げられた物などと、ベアトリーチェの口から言わせたい訳ではなかったのだ……そんなつもりでは断じてなかったのだ……。
「悪いと思っているのなら、態度で示してください」
「勿論だ。ベアトリーチェの望みのままに示そう」
「では、交わりは産まれるまで控えて下さい」
私は、その願いに愕然とした。まさか、そのような事を願われるとは思っていなかったのだ……。だが、当然といえば、当然だ……。元々、私を信じられるまで手を出さぬ約束であった……私はその信用を失墜させてしまったのだから……。
「マッティア様、御返事は? それとも先程の謝罪は嘘ですか?」
「いや、嘘ではない。分かった、産まれるまでは手を出さぬと誓おう」
その言葉にベアトリーチェが心底安堵したように微笑んだ。その可愛らしい顔を見て、私はクラクラし、ベアトリーチェを抱き締めようと手を伸ばしたが、その手をベアトリーチェによって叩かれてしまった。
ただ、何もせぬからと、共に眠る事を許して貰う事には成功した……。ある意味、生殺しだが……仕方あるまい。せめて、ベアトリーチェを腕におさめ、眠りたいのだ……。
「エフィージオ、私を詰ってくれ、そして殴ってくれ」
その後、ベアトリーチェの部屋から退室した私はエフィージオの部屋へ赴き、己の愚かさを吐露した。
座り込み、うじうじしている私をエフィージオは容赦なく殴り、詰ってくれた。
最初のうちは、器が小さいや最低などと憎まれ口を叩いていたが、押し倒し何度かイカせれば、いつものように私にしがみつき、可愛らしく啼くようになった。
ベアトリーチェは、耳や胸でイク事は悪い事だと躊躇するところがあるので、その戸惑いさえも羞恥に変え、何度かイカせてやると泣きながら、許してと何度も私に乞うた。
既に涙と涎で、ぐちゃぐちゃなベアトリーチェを静かに見つめながら、ナカの指を轟くようにうごめかせ、ベアトリーチェの良いトコロを擦り上げると、一際大きく体がしなった。
「ひゃっ……ああ、待っ……も、やぁ……っ、マッティ、マッ、ティ……やだっ、やなのっ……あっ、あっ、ああっ」
また限界が近いのだろう。もうイキたくないとでもいうように首を振るベアトリーチェに、私は口付けを落とした後、耳に口をつけ囁いた。
「解放されたいのならば、貴方は私のモノだという事を認めなさい」
「やぁっ……ん、ふっ……やっ、ぜったい、やぁっ……ひあっ! やっ、それ……ひうっ、あああぁぁぁっ!」
嫌だと言いながら私を睨みつけるベアトリーチェに、征服欲がそそられた。
いやいやと首を振りながらも、ベッドに手を付いている私の腕にしがみつき、与えられる快感に耐えるベアトリーチェに、私は情欲を煽られ、もっと啼かせてみたくなった。
弱点の耳に舌を這わせながら、ナカの指を2本に増やせば、そこはトロトロにほぐれ、私の指を容易にのみ込んだ。
「やぁ、むりぃ…イッた、イッ、てるのっ……マッティ……おねがっ、も、むりぃっ……ああっ! あああぁぁっ!」
そして、耳に舌を差し込み、ねっとりと舐めると、ベアトリーチェは体を仰け反り、私の指をきゅうきゅうと締め付け、またもや簡単に達した。
私はそれでもナカへの刺激を緩めず、容赦なく責め立ててやると、ベアトリーチェは泣きながら嬌声を上げ続けた。
「マッ……ティア……さまぁ……も、ゆるし……ああっ、やぁっ……も、むりぃ」
「ならば、私のモノだと認めなさい」
「いっ、いやっ……」
「だが、体は正直なようだ。体は素直に私を求め、今もほら私の指を美味しそうに呑み込んでいるぞ、ベアトリーチェ」
私の言葉に、いやいやと首を振り、違う違うと否定するベアトリーチェの良いトコロを擦ってやれば、またも容易く達したので、ベアトリーチェの耳元で、何が違うのかと問うてやれば、ベアトリーチェは大粒の涙をボロボロとこぼした。
「ベアトリーチェ、愛しているのだ。どうか、私のモノになってくれ。ベアトリーチェ……」
涙でぐちゃぐちゃのベアトリーチェを慰めるように口付け、舌を絡めとれば、私に必死でしがみつき、その口付けに応えてくれる。
ゆっくりと絡められてきた舌に吸い付き、甘噛みしてやると、いやいやと首を振ったが、くちゅくちゅとお互いの唾液が混ざる音に熱が増していき、更に唇を重ねてやる。
その間もベアトリーチェは私の指を締め付け、ひっきりなしに啼いている。口を閉じることも出来ず、常に声を上げている為か、先程の口付けで交わされた唾液がベアトリーチェの口元をつたい流れ落ちた。
「ひゃっ……ま、また変っ……も、やぁっ……あっ、あひっ、んんっ、んんぅ、マッティアッ、んんあっ!」
身篭っているベアトリーチェの体を考えるのであれば、このように嫌がるベアトリーチェを何度もイカせてはならぬのだと分かってはいるが、もう止められない。
己の体に快感を刻みつける者が誰なのかを、ベアトリーチェに分からせてやりたかったのだ。私の愛をこの体にぶつけてやりたかったのだ。
そして、己が私のモノだという事をベアトリーチェの口から言わせたいのだ。
「好きなだけイくが良い。私のモノだと理解するまで、何度でもイかせてやろう」
「いやぁ……も、やぁっ……んぅ、ああっ……ゆるしっ……ああっ、あああぁぁっ!! ああっ、も、イッてる、イッてるからぁ、あああっ、あああぁぁ!!」
何度もイかされ、敏感になっているベアトリーチェは、私が与える刺激にいとも簡単に達する。それが苦しいのか、限界が近づく度、私に許しを乞うた。
だが、それでも私のモノだとは認めない。それがとても腹立たしく、いけないと思っていても何度も啼かせてしまう。
「やぁ、だめ……もう変、変なのっ……おねがっ……おかしくなっ、ああっ、あああ! あ、あ、あっ、あああぁぁっ!!」
私にしがみつきながら、派手に達したかと思うと、ベアトリーチェは意識を失った。
その顔は涙と涎でぐちゃぐちゃで、私は少し心が痛んだが、それでも満足いく答えが得られていない苛立ちを抑えられず、ベアトリーチェの顔と体を清めた後、私は部屋を出て行った。
「ベアトリーチェ、貴方が認めるまで毎夜でも啼かせるまでです」
◆
「ベルタ! アニェッラわたくし、今日は此処で眠りたくないのです! どうか、貴方たちの部屋で寝かせてください!」
「それはなりません。今日も国王陛下がいらっしゃるというのに、部屋を脱げ出しては怒られてしまいますよ」
「だけれど、もう嫌なのです。今日はゆっくり眠りたいのです」
転移の魔術を使い、気配を消してベアトリーチェの部屋に来てみれば、3人とも私の存在には全く気付いていないようだ。
ベアトリーチェが私から逃れる算段をしていた……。
「でしたら、そう仰れば良いのです。陛下は、ベアトリーチェ様にベタ惚れなのですから、言えば聞いて下さいますよ」
「そんなの無理です」
「大丈夫ですよ。甘えてみせれば、簡単に言うことを聞いてくれますよ」
2人の女官の言葉に私は溜息を吐いた。此処まで簡単だと思われていたとは……。
常日頃からベアトリーチェが威厳が威厳がと、言っていた意味を理解した私は苦笑した。
だが、今回ばかりは甘えてきたとて許してはやらぬ。私のモノだと言うまでは、やめてやる気はない。
私だとて、ペガゾとの事を本気で怒っている訳ではないのだ。ベアトリーチェの迂闊さと、無防備さに呆れ、何よりベアトリーチェに分からせたいだけだ。
ベアトリーチェが私だけのモノだという事を……。
「ベアトリーチェ……」
「「「きゃあっ!」」」
私が背後から声をかけると、3人とも飛び上がり悲鳴を上げ、ベアトリーチェは女官たちの後ろに隠れた。
「マ、マッティア様……、わたくし、今日はゆっくり眠りたいのです。お腹の赤ちゃんの為にも眠りたいのです」
ベアトリーチェの懇願に、私が微笑み頷いてやると、ベアトリーチェは首を傾げた。
「もう怒っていないのですか?」
「ほら、ベアトリーチェ様。大丈夫でしょう? 今日は甘えて、そして甘やかして頂けば良いのです」
そう言って、女官たちはにこにこ笑いながら退室していった。ベアトリーチェは去っていく女官を名残り惜しそうに見つめていたが、恐る恐る私の方に振り向き、じっと見つめてきた。
「マッティア様、本当にもう怒っていないのですか? わたくし、昨夜のマッティア様は恐ろしくて、もう嫌なのです」
「でしたら、早く理解する事です。貴方が誰のモノかという事を……」
「それは……」
ベアトリーチェは困ったように俯いた。ドレスを掴みながら、この場を逃れる言葉を探しているのだろう。顔にどうしようと書いてある。
「マッティア様との交わりは、最初こそ戸惑いが大きくありましたけれど、恥ずかしくても……とても気持ちよくありました。ですが、昨日はただ苦しいだけでした。無理矢理、何度も快感を呼び起こされ……ただ苦しいだけでした……」
ベアトリーチェが辛そうな顔でそう言い、ベアトリーチェの瞳が私に助けを求めるかのように揺らめいた。
私は、ベアトリーチェの気持ち良い発言で胸が高鳴り、鼓動がはやく脈打ち、今にも押し倒したくなったが……、グッと堪え、ベアトリーチェの次の言葉を待った。
「マッティア様は、わたくしに言ったではないですか。憎んでいても構わないと……生きて傍にいてくれるだけで良いと……それなのに……、何を焦っているのですか? あのような事をしたら、わたくしの心が離れるとは思われないのですか?」
ベアトリーチェが私に近付き、責めるように私の胸を叩きながら、そう言った。
「言葉で言うのは簡単です。確かに、わたくしはマッティア様の物でしょう。だって、わたくしは王家の繁栄の為の生贄……そのようにお兄様から捧げられたようなものです。だけれど、貴方だけはわたくしを物のように扱わないと何処かで思っておりました。だけれど、それは間違いだったのですね……」
ベアトリーチェの瞳には、私への失望の色がはっきりと揺らめいていた。その言葉で、私は己がした事の愚かさを理解し、呆然と立ち尽くしてしまった。
「……すまぬ。本当にどうかしていたのだ……。ベアトリーチェを欲するあまり、己を見失い、ベアトリーチェを苦しめてしまった……。だが、物のように扱うつもりなどなかったのだ……。結果として、そうなってしまい、本当にすまなかった」
私はいつものように取り繕う敬語すらも使う余裕がなくなっていた。
生贄として捧げられた物などと、ベアトリーチェの口から言わせたい訳ではなかったのだ……そんなつもりでは断じてなかったのだ……。
「悪いと思っているのなら、態度で示してください」
「勿論だ。ベアトリーチェの望みのままに示そう」
「では、交わりは産まれるまで控えて下さい」
私は、その願いに愕然とした。まさか、そのような事を願われるとは思っていなかったのだ……。だが、当然といえば、当然だ……。元々、私を信じられるまで手を出さぬ約束であった……私はその信用を失墜させてしまったのだから……。
「マッティア様、御返事は? それとも先程の謝罪は嘘ですか?」
「いや、嘘ではない。分かった、産まれるまでは手を出さぬと誓おう」
その言葉にベアトリーチェが心底安堵したように微笑んだ。その可愛らしい顔を見て、私はクラクラし、ベアトリーチェを抱き締めようと手を伸ばしたが、その手をベアトリーチェによって叩かれてしまった。
ただ、何もせぬからと、共に眠る事を許して貰う事には成功した……。ある意味、生殺しだが……仕方あるまい。せめて、ベアトリーチェを腕におさめ、眠りたいのだ……。
「エフィージオ、私を詰ってくれ、そして殴ってくれ」
その後、ベアトリーチェの部屋から退室した私はエフィージオの部屋へ赴き、己の愚かさを吐露した。
座り込み、うじうじしている私をエフィージオは容赦なく殴り、詰ってくれた。
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