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予想しない再会
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「ん~、美味しい!!」
あのあと玲子から許しをもらった侑奈たちは鮨屋に来ていた。
望みどおり二人きりで食事に来られただけじゃなく大好きなサーモンの鮨が食べられて、侑奈は感嘆の声を漏らした。すると、隆文が満足そうに笑う。
「それは良かった。ここは知り合いがやっている店なんだ。サーモン以外も美味いから、もっと色々オーダーするといい」
「ありがとう」
(お友達のお店なんだ……)
静かで落ち着けるとても良いお店だ。隆文は迷わずカウンターではなく個室を選んでいたが、友人の店ならカウンターでも良かったのにと侑奈はお酒を飲んでいる隆文をジッと見た。
「隆文、お酒を飲んでもいいんですか? 車なのに……」
「帰りに運転手の坂本さんが迎えに来てくれるから大丈夫だよ。それよりこれも食べろ。海老好きだろ」
「はい」
自然な手つきで口元に差し出されて、あーんと口を開ける。食べさせてもらうことに少し抵抗を感じたが口に入れた瞬間、海老の甘味と旨味が口の中に広がって、あっという間に照れがどこかに飛んでいく。ほっぺたが落っこちそうとはまさにこのことだ。
「めちゃくちゃ美味しいです。どれを食べてもすごく美味しくて、感動」
「どれも……って、まだサーモンと海老しか食べてないだろ」
侑奈が至福の表情を浮かべると、隆文がクスクスと笑う。サーモンの鮨とひと口に言ってもスタンダードなものから炙りや創作寿司など色々と種類がある。侑奈がそう言おうとした途端、隆文にペロリと下唇を舐められた。
「っ!?」
「ああ、本当に美味いな」
「~~~~っ、い、今ので、何が分かるというんですかっ」
顔を真っ赤にして震えると隆文が「分かるさ」と言ってなぜか隣にくる。彼は個室なのをいいことに侑奈を膝に乗せ、また唇を合わせてきた。
「やっ……待っ、んぅ」
とても食事中にするとは思えない深いキスに目を大きく見開く。やめさせたかったが、侑奈が逃げようとしても彼は腰をがっしりとホールドして、奥に引っ込めた侑奈の舌を容易く捕まえ吸い上げる。
「待っ、待って……隆文、駄目だってば」
「ちょっとくらいいいだろ」
「よくないわよ。さっきまた色々注文しちゃったし……お店の人が持ってきたとき、びっくりしちゃうでしょ」
何度もキスの雨を降らせながら侑奈のお尻を撫でている隆文の手を叩く。彼が手を離した隙に侑奈は立ち上がった。
「それに店内で不埒なことをしたら、お友達にも怒られるわよ」
「怒られないよ」
「怒られるわよ。隆文ったら、すぐ調子に乗るんだから……。そういうところは嫌い」
「ごめん。侑奈が可愛くて、いつも我慢できなくなるんだ」
「……馬鹿。私、お手洗い行ってくるから」
嫌いと言われて途端にしゅんとなる隆文にふんと顔を背け、侑奈は手洗いに行った。
(もう。二人きりになるとすぐイチャイチャしたがるんだから……)
侑奈だって、ここが家なら拒んだりしない。だが、いくら個室でも飲食店でそれは駄目だ。
(私だってキスするの好きなのに……。ばかふみ、場所は選びなさいよ)
トイレ後なんとなくすぐに隆文のもとに戻る気になれず、侑奈は店の廊下をとぼとぼ歩いてた。すると、誰かに肩を叩かれる。
「失礼。まさか花秋くんではないかい?」
「え……」
驚きながら振り返ると、スーツ姿の男の人が会釈してくる。
年は六十後半。背が低くて、好好爺の笑みが印象的な彼に目が釘付けになる。
「篠原教授じゃありませんか」
「ああ、久しぶりだね。覚えていてくれて嬉しいよ。元気にしていたかい?」
大学院時代にお世話になった教授に出会えて、気分が高揚する。侑奈は深々とお辞儀をした。
「はい、元気でした。教授こそ、私のことを覚えていてくださって嬉しいです」
侑奈なんてたくさんいた生徒のうちの一人にすぎないのに覚えていてもらえたなんて、めちゃくちゃ嬉しい。
侑奈がはにかむように笑うと、教授の笑みがさらに深くなる。
「優秀な君を忘れるわけないじゃないか。それで? 今はご実家の病院で働いているのかい? 実は最近君が四條製薬グループに嫁入りすると変な噂が聞こえてきたんだが、まさかデマだろう?」
「いいえ、嘘じゃありません。婚約発表後、四條製薬で働く予定なんです」
侑奈がそう答えると、彼の顔が曇る。
昔はパーティーなどの公の場でも気にせず隆文を拒絶していたので、侑奈たちの婚約を信じられない人がいても不思議ではない。
どう話そうかと侑奈が思案を巡らせていると、教授が同情じみた声を出した。
「可哀想に。政略結婚の餌食にされるんだね」
「いえ、そうではありません。昔は色々ありましたが、今はとても仲がいいんです」
可哀想なものを見るような目が居心地悪く感じ、侑奈はその視線を振り払うように努めて明るく笑った。
「そんなに心配しないでください。彼ったら、今は私にメロメロなんですよ」
「それならいいが……。あまり我慢はしないように」
「はい。でも本当に大丈夫ですから……」
(そこまで心配されるほど……私たちの不仲って有名だったのかしら?)
困惑していると、隆文が近づいてきた。どうやら全然戻ってこないので迎えに来てくれたようだ。
「侑奈? お知り合いか?」
「はい……。こちら私が通っていた大学の篠原教授です。教授には色々教えていただいて、とてもお世話になったんです」
「K大の篠原教授でしたか。はじめまして、私は玲瓏薬品株式会社で代表取締役を務めている四條隆文と申します。どうぞよろしくお願いします」
完璧なビジネススマイルを浮かべた隆文が右手を差し出す。教授はその手を握りながら目をスッと細めた。
「ということは君が噂の四條製薬グループの御曹司ですか……。お噂はかねがね……」
和やかな隆文とは違いピリついた空気を出す教授に、侑奈は内心ハラハラした。きっとこの敵意は隆文にも伝わっているはずだ。
教授は笑っているようで笑っていない笑顔を貼りつけたまま、侑奈に向き直った。
「そういえば、今年の春からとある企業の支援を受けて新薬の開発をしているんだ」
「え……それはおめでとうございます……」
「君さえ良ければ、いつでも連絡しておいで。四條製薬グループに入るだけが道ではないよ」
そう言って侑奈に名刺を渡して去っていく教授に侑奈はポカンと口を開けたまま佇んだ。でもすぐにハッとして隆文に頭を下げる。
「ごめんなさい……私のせいで」
「どうして侑奈が謝るんだ。侑奈が俺を嫌っていたのを知っている人間ならあの態度も頷ける。これも以前の俺の行いのせいだから侑奈は気にしなくていい」
「でもあんなの子供のときの話です。それに私たちの問題なのに……あのような態度は失礼です」
(せっかくの楽しいデートだったのに……)
尊敬する恩師ではあるが、隆文に嫌な思いをさせるならもう会いたくない。
しょんぼりと肩を落とす侑奈の背中をさすってくれる隆文に、侑奈は彼の両手をぎゅっと握り込んだ。
「なんか悔しいです。隆文! パーティーでは噂を払拭できるくらい仲睦まじいところを見せましょうね」
「ああ、そうしよう。でもその前に鮨を食おうか。先ほど侑奈がオーダーしたサーモンが来ていたぞ」
「はい!」
元気よく返事をして、隆文と一緒に席へ戻る。その後は嫌なことは忘れて、大好きな鮨を堪能した。
あのあと玲子から許しをもらった侑奈たちは鮨屋に来ていた。
望みどおり二人きりで食事に来られただけじゃなく大好きなサーモンの鮨が食べられて、侑奈は感嘆の声を漏らした。すると、隆文が満足そうに笑う。
「それは良かった。ここは知り合いがやっている店なんだ。サーモン以外も美味いから、もっと色々オーダーするといい」
「ありがとう」
(お友達のお店なんだ……)
静かで落ち着けるとても良いお店だ。隆文は迷わずカウンターではなく個室を選んでいたが、友人の店ならカウンターでも良かったのにと侑奈はお酒を飲んでいる隆文をジッと見た。
「隆文、お酒を飲んでもいいんですか? 車なのに……」
「帰りに運転手の坂本さんが迎えに来てくれるから大丈夫だよ。それよりこれも食べろ。海老好きだろ」
「はい」
自然な手つきで口元に差し出されて、あーんと口を開ける。食べさせてもらうことに少し抵抗を感じたが口に入れた瞬間、海老の甘味と旨味が口の中に広がって、あっという間に照れがどこかに飛んでいく。ほっぺたが落っこちそうとはまさにこのことだ。
「めちゃくちゃ美味しいです。どれを食べてもすごく美味しくて、感動」
「どれも……って、まだサーモンと海老しか食べてないだろ」
侑奈が至福の表情を浮かべると、隆文がクスクスと笑う。サーモンの鮨とひと口に言ってもスタンダードなものから炙りや創作寿司など色々と種類がある。侑奈がそう言おうとした途端、隆文にペロリと下唇を舐められた。
「っ!?」
「ああ、本当に美味いな」
「~~~~っ、い、今ので、何が分かるというんですかっ」
顔を真っ赤にして震えると隆文が「分かるさ」と言ってなぜか隣にくる。彼は個室なのをいいことに侑奈を膝に乗せ、また唇を合わせてきた。
「やっ……待っ、んぅ」
とても食事中にするとは思えない深いキスに目を大きく見開く。やめさせたかったが、侑奈が逃げようとしても彼は腰をがっしりとホールドして、奥に引っ込めた侑奈の舌を容易く捕まえ吸い上げる。
「待っ、待って……隆文、駄目だってば」
「ちょっとくらいいいだろ」
「よくないわよ。さっきまた色々注文しちゃったし……お店の人が持ってきたとき、びっくりしちゃうでしょ」
何度もキスの雨を降らせながら侑奈のお尻を撫でている隆文の手を叩く。彼が手を離した隙に侑奈は立ち上がった。
「それに店内で不埒なことをしたら、お友達にも怒られるわよ」
「怒られないよ」
「怒られるわよ。隆文ったら、すぐ調子に乗るんだから……。そういうところは嫌い」
「ごめん。侑奈が可愛くて、いつも我慢できなくなるんだ」
「……馬鹿。私、お手洗い行ってくるから」
嫌いと言われて途端にしゅんとなる隆文にふんと顔を背け、侑奈は手洗いに行った。
(もう。二人きりになるとすぐイチャイチャしたがるんだから……)
侑奈だって、ここが家なら拒んだりしない。だが、いくら個室でも飲食店でそれは駄目だ。
(私だってキスするの好きなのに……。ばかふみ、場所は選びなさいよ)
トイレ後なんとなくすぐに隆文のもとに戻る気になれず、侑奈は店の廊下をとぼとぼ歩いてた。すると、誰かに肩を叩かれる。
「失礼。まさか花秋くんではないかい?」
「え……」
驚きながら振り返ると、スーツ姿の男の人が会釈してくる。
年は六十後半。背が低くて、好好爺の笑みが印象的な彼に目が釘付けになる。
「篠原教授じゃありませんか」
「ああ、久しぶりだね。覚えていてくれて嬉しいよ。元気にしていたかい?」
大学院時代にお世話になった教授に出会えて、気分が高揚する。侑奈は深々とお辞儀をした。
「はい、元気でした。教授こそ、私のことを覚えていてくださって嬉しいです」
侑奈なんてたくさんいた生徒のうちの一人にすぎないのに覚えていてもらえたなんて、めちゃくちゃ嬉しい。
侑奈がはにかむように笑うと、教授の笑みがさらに深くなる。
「優秀な君を忘れるわけないじゃないか。それで? 今はご実家の病院で働いているのかい? 実は最近君が四條製薬グループに嫁入りすると変な噂が聞こえてきたんだが、まさかデマだろう?」
「いいえ、嘘じゃありません。婚約発表後、四條製薬で働く予定なんです」
侑奈がそう答えると、彼の顔が曇る。
昔はパーティーなどの公の場でも気にせず隆文を拒絶していたので、侑奈たちの婚約を信じられない人がいても不思議ではない。
どう話そうかと侑奈が思案を巡らせていると、教授が同情じみた声を出した。
「可哀想に。政略結婚の餌食にされるんだね」
「いえ、そうではありません。昔は色々ありましたが、今はとても仲がいいんです」
可哀想なものを見るような目が居心地悪く感じ、侑奈はその視線を振り払うように努めて明るく笑った。
「そんなに心配しないでください。彼ったら、今は私にメロメロなんですよ」
「それならいいが……。あまり我慢はしないように」
「はい。でも本当に大丈夫ですから……」
(そこまで心配されるほど……私たちの不仲って有名だったのかしら?)
困惑していると、隆文が近づいてきた。どうやら全然戻ってこないので迎えに来てくれたようだ。
「侑奈? お知り合いか?」
「はい……。こちら私が通っていた大学の篠原教授です。教授には色々教えていただいて、とてもお世話になったんです」
「K大の篠原教授でしたか。はじめまして、私は玲瓏薬品株式会社で代表取締役を務めている四條隆文と申します。どうぞよろしくお願いします」
完璧なビジネススマイルを浮かべた隆文が右手を差し出す。教授はその手を握りながら目をスッと細めた。
「ということは君が噂の四條製薬グループの御曹司ですか……。お噂はかねがね……」
和やかな隆文とは違いピリついた空気を出す教授に、侑奈は内心ハラハラした。きっとこの敵意は隆文にも伝わっているはずだ。
教授は笑っているようで笑っていない笑顔を貼りつけたまま、侑奈に向き直った。
「そういえば、今年の春からとある企業の支援を受けて新薬の開発をしているんだ」
「え……それはおめでとうございます……」
「君さえ良ければ、いつでも連絡しておいで。四條製薬グループに入るだけが道ではないよ」
そう言って侑奈に名刺を渡して去っていく教授に侑奈はポカンと口を開けたまま佇んだ。でもすぐにハッとして隆文に頭を下げる。
「ごめんなさい……私のせいで」
「どうして侑奈が謝るんだ。侑奈が俺を嫌っていたのを知っている人間ならあの態度も頷ける。これも以前の俺の行いのせいだから侑奈は気にしなくていい」
「でもあんなの子供のときの話です。それに私たちの問題なのに……あのような態度は失礼です」
(せっかくの楽しいデートだったのに……)
尊敬する恩師ではあるが、隆文に嫌な思いをさせるならもう会いたくない。
しょんぼりと肩を落とす侑奈の背中をさすってくれる隆文に、侑奈は彼の両手をぎゅっと握り込んだ。
「なんか悔しいです。隆文! パーティーでは噂を払拭できるくらい仲睦まじいところを見せましょうね」
「ああ、そうしよう。でもその前に鮨を食おうか。先ほど侑奈がオーダーしたサーモンが来ていたぞ」
「はい!」
元気よく返事をして、隆文と一緒に席へ戻る。その後は嫌なことは忘れて、大好きな鮨を堪能した。
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