鬼畜皇子と建国の魔女

Adria

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第二部

48.性癖

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「そういえば、ルイーザを本気で正妃に据えるつもりがあったのか?」



 実は気になっていた。
 外を教えず、従順、無知に育てて、果たして未来の皇后が務まるのだろうか?



「……………」
「本来ならば、幼き頃より徹底した正妃教育を施し、賢く皇后に相応しい姫に育てる筈だ。それが、何故あのような無知な娘を作り上げたのだ?」



 皇后や王妃というのは、己を律し、国家と伴侶である皇帝や王に仕える事を求められる。己の私情を挟まない強い精神力が求められる役職だ。
 私にも務まらぬが、ルイーザにも務まらぬだろう。



「まるで、側室用に育てられたように感じるが……」


 まあ、側室の産んだ子が帝位を継ぐ事もあるだろう。ルイーザは身分だけならば、公爵家公女だ。後ろ盾も身分も問題はない。




「感じるのではない。本来そのつもりだ。さかしい女は、私にとって邪魔にしかならぬ」
「女性の賢さを上手く使えぬ男は、器が小さいからだと師匠が言っていたぞ」
「クッ……然もありなん」



 何だ? 何だ?
 殴られるかと思うたのに認めたぞ?



「はぁ。……何も最初から、そうだった訳ではない。だが、幼少期のルイーザは締め付けられた教育を嫌い、泣いて手がつけられなかったのだ」
「え? あのルイーザが?」
「徐々に面倒になった私は、ルイーザを効率よく使う事を考えた。物として使うならば、変な知恵は必要ない。私の為に魔法だけを使えれば良いのだからな」



 だが、その魔法すらまともに覚えない有り様だと、ルキウスは嘲笑混じりに、そう言った。


 ま、まあ、ルキウスも過去は色々と大変だったようだし、ルイーザにかまけてられなくなったのだろう。



「では、何故私を皇太子妃にしたのだ? 私も愚か者だぞ」
「其方は類稀な魔法の力がある。それを使いこなしている其方は、私にとっても我が国にとっても希少価値が高いのだ。そして、建国の魔女を皇后に戴く以上の価値などあるまい」
「そ、そうか……」



 そこまで褒められると照れてしまうな……。
 私が、照れているとルキウスは私をジロッと睨んだ。


「考えるのを面倒に思う癖があるが、決して覚えは悪くない。かつて貴族であった為か、下地もしっかりとしている。後は、叩き込めば良いだけだ」
「叩き込む……」



 私が息をのむと、ルキウスが私の顔を掴み、目を合わせてきた。



「其方は私のものだ。もう建国神話の存在ではない。既に私だけのものだ。もう逃さぬ。其方は、私の妃となり、魔力を持った子を産むのだ」
「……子を孕め、子を産めと言うが、あのように暴力ばかり振るっていたら……出来ても、すぐ流れそうだが……。言っておくが、腹で死んだ子の回復など出来ぬからな」
「………………」



 まあ、最初に比べれば、マシになった方だとは思うが……。こうやって話をしてくれる事も増えたしな……。



 最初の頃は部屋から一歩も出る事を許さなかったルキウスが、今では城内を自由に歩き回る事を許し、必要とあらば、ルキウス本人の監視なく、私のみで城を出て神殿へ行く事も許してくれている訳だしな……。護衛は付いているが……。



 そう思うと、最初に比べれば、自由は増えた。問答無用さも減ってきたように思う……。たが、まだだ。まだ、これでは駄目なのだ。


 私の平穏な日常の為にも、ルキウスには暴力を振るわせないようにせねば……。




 私は黙りこくって何かを考えているルキウスの顔を覗きこんだ。



「ルキウスは以前、心地良く優しくしてくれると言ったではないか。ならば、手をあげるのは間違えているぞ。私が何かを間違えたのなら、ちゃんと話してくれれば、良いだろう?」
「クッ……いつ私に服従したのだ? 話は、服従してからだ」
「む?」


 服従って何だ?
 ……婚姻を交わし、夫婦になったのにか……?



「私はルキウスの妻だろう? 対等ではないのか?」
「対等ではない。私の所有物だ」
「………………」
「本来、王族や貴族の子女は、その家の持ち物だ。政治的な道具にすぎぬ。其方の生まれた国がどうだったかは知らぬが、対等である訳がないだろう」




 確かに、私の生まれた国でもそうだった……。
 政治的な道具に使われる事は珍しい事ではない……。




「だが……」
「対等を望むのでなれば、私の代わりを務めあげてみろ。その時に考えてやる」



 うっ!
 痛いところをつきおって……。


 ルキウスの代わりという事は、皇帝の代わりだ……。そもそも皇后ですら務まるかも怪しいものを……。



「出来ぬのなら、大人しく私の庇護下にいろ」
「……其方の指示に従う事は、別に構わぬ。だが、服従はしたくない。暴力もやめろ。大体、其方は私との間に子が欲しいのだろう? 其方の行き過ぎた暴力が、それにどう影響するか分からぬぞ」




 いくらルチアのお膳立てがあったとしてもだ。
 平気で私の体を貫くルキウスの刃が、回復したとて私の臓器に、どう影響をもたらすかは分からぬ。



「女人は、体に子の為の "宮" を持っているのだ。己の為のものというよりも、子の為のものだ。それを万が一傷つけてしまった場合、回復したとしても、懐妊は望めぬかもしれぬぞ。血の道を担う覚悟を共にしてくれぬのでは、私は子など産みたくはない」




 ルキウスは、私の言葉にハッとし、押し黙った。ふむ。そこまで、考えていなかったのだろう。



 魔力を持った子が欲しいのであればある程、私の体を大切にしてくれなければ、安心して懐妊など出来ぬ。



 此処はもっと押してみよう。上手くいけば反省させる事が出来るかも知れぬ。




「ルキウスが暴力を振るわない、剣で斬らない突き刺さないと、約束してくれなければ、私は懐妊など出来ぬ。よく考えてくれ」
「……では其方も、もう私から逃げぬと約束せよ。次、姿を隠せば、其方を鎖に繋いで、ルイーザの部屋に監禁するぞ」



 は?
 私は予想もせぬ言葉に、目を瞬いた。



 ルキウスは、一体何を考えているのだろうか?




「鎖に繋がれ、昼も夜も分からぬまま、私に犯され、子を産む事をだけを強要される日々を送りたくないのであれば、もうあのような事はしないと誓え」
「………………ち、誓おう」
「ならば良い」



 恐ろしい。発想や思考が恐ろし過ぎる。
 危険人物か、此奴は。




「クッ、其方に手をあげる事をやめてやっても構わぬ」
「そ、そうか……良かった……って、何故縛るのだ?」



 ルキウスは、そう言いながら私をルキウスの上に跨らせるように座らせ、突然両手を縛り始めたので、私は慌てたのだが、ルキウスは意に介してくれぬ。




「私は……其方の痛みに耐え忍ぶ顔や苦痛に歪む顔、快感でどうしようもなくなり、ぐずぐずになっている泣き顔を見ると、興奮するのだ」
「………………っ! へ、変態!」



 一瞬、何を言われているのか理解出来なかったが、理解すると驚きしかない。なんという奴だ。




 私が慌てながら、ルキウスの上から退こうとすると、ルキウスは私の腰に手を回しガッチリと拘束した。




「最初はそんなつもりではなく、其方を抑えつける為のものだったのだが、いつしかそれに興奮している事に気付いたのだ」
「……っ! 離せ」



 私がジタバタと暴れても、ビクともせず、ルキウスは私の腰を拘束したまま、あいている手で顔を掴んだ。



「其方に罰を与え躾けるのは、別に暴力である必要はない。これからは、寝所の中で虐げてやろう」
「嫌だ! 嫌っ! ふざけるな!」
「クッ、ルドヴィカも、私に犯されるのは好きだろう? 寝所の中のように素直になってみろ」
「それは優しくしてくれる時だ! 其方が私を凌辱する時は、本当に容赦がない……辛いのだ……辛さと快感を与えられ、無理矢理何度もイカされ……あれは嫌だ」



 私が、そう言うとルキウスは手の内のオモチャを痛ぶって楽しむような恐ろしい笑みを浮かべながら、私の秘所にルキウスのモノを擦り付けた。




「っ! ま、待て! 何故、勃っているのだ!?」
「ルドヴィカが私に甘え、啼きながら縋り、しがみつく様がとても好きだ。ルドヴィカ、今宵も朝まで私の下で啼くが良い」
「嫌だっ! やめっ……離してくれっ!」




 先程もしたのに……何故こうも何度もやりたがるのだ……この変態。



 ああ、誰かルキウスの暴挙を止めてくれ。
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