鬼畜皇子と建国の魔女

Adria

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第一部

12.口は災いの元

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 苦痛だ。地獄だ。
 元々、座学は苦手なのだ。自慢ではないが、頭は良くないのでな。


 だが、前世に実家や師匠から与えられていた教育のおかげで、何とかしがみついてはいるが、地獄だ。地獄でしかない。
 というより、本当はしたくはないのだ。なので、最初はやらない姿勢を貫こうとしたのだが、ルキウスに報告が行き、容赦のない鞭と暴力、凌辱が罰として科されるので、やるしかないのだ……悔しいが……。


 まあ、真面目にしていても、凌辱はされるがな……クソッ。




「はあぁ~」



 それにしても剣術を学べるように手配をしておいてくれたと言ってはいたが、あれから……まったく剣術の指南を受けられないのだが……。
 そうこうしているうちに明日が、その披露目の日だというのに……。




 やはり、あれか? 手配はしておくが、褒美は披露目が終わってからというものか?
 目の前に肉をぶら下げられて走らされている気分だ……まったく……。



 だが、弓道、水泳、乗馬などといった体を動かす事は実に楽しい。この体は体力がないのが如何せん問題だが、このおかげで自然と体力もついて行くだろう。



 最初、水泳と聞き、海に行けるのではと期待したのだが……、泳ぐためのプールピシーナが城の敷地内にある事に驚いた……。
 更に驚いたのは、温度も常に魔法で管理され、とても快適な事だ。皆の説明を聞くと、建国の魔女のおかげらしい……全く記憶にないがな。寧ろ、ピシーナを作った記憶すらないのだが……。



 以前の私が、どれ程までに何も考えずに言われるままに魔法を奮っていたのかが、よく分かった……実に情けない事だ。




 そう思いながら、今日も鬼のような正妃教育とドレスの最終確認、当日の挨拶や動きの最終確認などの指導を受けて、私は死にそうな体を引きずって部屋に戻ったのだが、ルキウスの寝所の方で女性の泣き声と悲痛な声が聞こえたので、関わりあいたくない私は踵を返した。



 私が与えられている部屋はルキウスの寝所を抜けなければ行けないので……ふむ、仕方がない……今日はルイーザの部屋で寝よう。



 だって通りたくなどないし、何より明日に備えて私は早く寝たいのだ。ここ連日、私は疲れているのだ……。
 だが、明日はルキウスの間抜け顔が拝める楽しみな日だ。婚約発表と共に破棄を言い渡してやる。



 それを考えるだけで、高笑いが止まらんな。




 私が、ほくそ笑みながら湯浴みを終え、ベッドに入ると、隠し通路の扉が開き、突然ルキウスが入って来たので、私は折角ウトウトしていたのに、飛び起きてしまった。




「な、何だ? 突然、何があったのだ?」
「こんなところで何をしている?」
「何って寝ているのだ。見れば分かるだろう。大体、其方が何やら無体な事をやっているのを邪魔しないように気を利かせてやったのだ。寧ろ、礼を言って貰っても良いと思うが?」



 私が、そう言って寝直そうとすると、ルキウスに頭を叩かれ、私はルキウスの部屋へと連行されてしまった。



「毎回、毎回、思っていたのだが、其方……私への扱いが悪くないか? ルイーザには絶対しないだろう! それなのに、私には鞭や暴力は当たり前って、どういう事だ?」
「ルイーザは、恐怖ではなく優しさで、愚かしく何も考えられないように育ててあるのでな。苛々しても、気を遣うしかないのだ。私だとて、あの頭の中が花畑の愚か者を何度殴ってやりたかったか……」




 ルキウスの意味の分からぬ本音を聞きながら、私は大きな溜息を吐いた。



「上辺だけの優しさや愛の言葉など、私は要らぬ。だが、私は建国の魔女として、もう少し大切にされても良い筈だ! もっと私を崇めっ……ぐっ!」



 言い終わる前に、腹を思いっきり蹴られ、私は床に座り込んだ。大切にしろと言う言葉を言った矢先に、何故暴力を振るうのだ、この暴君皇子は。




「くだらぬ事を言うな。其方は私のオモチャだ。それ以上でも、それ以下でもない」
「は? それ以上だろ! 婚約者や正妃は、其方にとってオモチャと同義か!?」
「そうだが?」



 駄目だ。此奴には倫理観というものが大幅に欠如している……。
 それとも言葉の使い方自体、間違えているだけだろうか…。そう思い、ルキウスをじっと見たが、私は溜息を吐き、首を横に振った。


 いや、破綻者なだけだな……。



 私はガックリと肩を落としながら、ルキウスのベッドに入って眠る事にした。
 何故か、ルキウスの私室内の私の部屋にはベッドが用意されていないので、不本意だが此処で眠るしかないのだ。




「もう良い。疲れた。明日は忙しいのだ、さっさと寝るぞ」




 私がベッドに潜り込み、ルキウスに背を向けるように寝転がると、ルキウスもベッドに入り、私を抱き締め、首に舌を這わせながら、胸を揉んできたので、私はルキウスの手を叩いた。




「やめろ。明日は早いのだ。失敗されたくなかったら寝かせろ」
「チッ、仕方がない」



 今、舌打ちをしたか? 舌打ちを?
 私にはするなと言っておきながら、其方は平気でするのだな。理不尽な男だ。




 すると、ルキウスは部屋の外に待機している近衛兵に見目の良い奴隷女を連れて来いと言ったので、私はギョッとした。



「ルキウス? 何を言っているのだ?」
「其方が相手をせぬのだ。奴隷ですませて何が悪い?」
「悪くはないが、何も奴隷を呼ばずとも妾を呼べば良いだろう?」



 すると、ルキウスが以前にも言ったように側室も妾も置いていないと言った。必要ならば、奴隷を召し、処理済みになれば殺すだけだと。



「何故、殺す必要があるのだ?」
「懐妊されたら厄介だからだ。それに基本的に、つまらぬ奴らばかりなので、その前に気が削がれて殺す事のほうが多いのが難点だな……」




 私は愕然とした。本当に此奴はクズだ。優しさというものが恐ろしい程に欠けている……。人格が破綻し過ぎている……。




 何故、こんなにも人を殺める事を何とも思わないのだろうか……何故、こんなにも残虐でいられるのだろうか……。




「分かった。分かったから、やめてくれ!」
「……………分かったとは?」
「私が相手をすれば良いのだろう? 無闇に殺生をするな」



 すると、ルキウスは底冷えするような笑みを浮かべ、私の顎を掴んだ。




「では、私をねだれ。そうすれば考えてやらぬでもないぞ」
「っ! 分かった…………えーっと、その……だ、抱いて下さい、ルキウス様」




 私が屈辱に震えながら、拳を握り締め、目を瞑りながら、そう言うと、ルキウスはまあ良いだろうと言って、奴隷は要らぬと訂正してくれたので、取り敢えず私は胸を撫で下ろした。




「では、ルドヴィカ。着ているものを脱いで、足を開いて見せろ」
「っ! …………分かった」




 こんな事なら、最初に拒否するのではなかった。どうしようもない気持ちと、恥ずかしい気持ちを味わわされて、私はルキウスを殺したくて仕方がなかった。



 だが、今ではない。明日に! 明日になれば、ルキウスに屈辱を味あわせてやる事が出来る。


 明日を楽しみにしていろ。
 其方は婚約者に捨てられた間抜けな皇太子となるのだ。




 私は明日のルキウスの屈辱に歪む顔を思いながら、何とか遣る瀬無い思いを追いやった。だが、声を出したくない私は、己の唇を噛みしめ、手で覆いながら、必死に耐えた。




「何を考えている?」
「べ、別に…っ! っぅ」
「ルドヴィカ、何を拗ねているか知らぬが、抱いてくれと願ったのは其方だ。私は別に奴隷女で済ませても良いのだぞ」
「っ!」



 クズ。最低だ。人の心と体を弄んで……。
 私は仕方がないので、口を塞いでいる手を外して、ルキウスを睨んだ。



 だが、憎まれ口のひとつくらいは叩いてやらねば、気がすまぬ。



「別に拗ねてなどおらぬ。声を出せぬのは其方がその程度だという事だ。この下手くそ」
「ほう、良い度胸だ」



 ルキウスの顔が嗜虐する者の顔になった時、私は失敗したと思ったが時すでに遅く、私はその後止め処なく啼かされ、イカされ、謝らされ続けた。



 それでも解放して貰えず私は絶望しながら、何度も許しを乞うたが、朝になって女官や侍従たちが呼びに来るまで凌辱は続けられ、私はもうへろへろだった。



 口は災いの元だ。不用意な発言は今後気をつけねば……。
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