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小山田という存在に関する考察 ①
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小山田が筑葉高校に編入してきたとき、もちろん筑葉生の皆の話題をさらった。
はじめはあの城田からの優遇を受けまくって入ってきたαへの警戒だった。
だがそれはすぐに困惑へと変わった。
あまりにもαとかけ離れた小山田をどう捉えればいいのか皆解らなくなったのだ。
城田家の傍流というわけでもなく、ごくごく普通の一般家庭出身。
しかも本人にαの能力の片りんすらも感じられないときたら、普通のαなら利用価値無しとして切り捨てるところだ。
そうなるはずだった小山田を、俺はなぜか無視できなかった。
それは俺だけではなかったはずだ。
おそらく皆が小山田を気にしていた。
外部からやってきて新しい環境に慣れず、緊張して不安そうにしていた小山田。
そんな小山田を刺激しないよう、クラスメートたちはあえてそっと見守るという行動をしている節があった。
少し怯えたような小山田がクラスにいるだけで、皆の紳士度がいつもの5割増しになっていた。
いつもならそこら中で行われる挨拶代わりのαフェロモンの鞘当ても鳴りを潜めた。
皆がフェロモンの放出に気を使っているせいか、クラスの空気から重苦しさが消えた。
やがて小山田が筑葉になじむにつれて、じわじわと紳士の仮面も剝がれ落ちていったが、ただただこいつに甘いだけの奴らが増える一方だった。
小山田に上位αのフェロモンを当てても効果がないことに気が付いたのは恐らく俺が最初だっただろう。
あそこまでαらしくない小山田だったら、支配どころか洗脳だって簡単にできると思っていた。
だからハードルで負傷した小山田を保健室に運ぶ時、駄々をこねる小山田に言うことをきかせようと、強力なフェロモンを当てた。
ところが結果は小山田の貧弱なフェロモンに俺のフェロモンはかき消されてしまった。
高校生にもなろう男に、子供みたいな口調で「うるせーあっちいけ」と言われた時の衝撃は今も忘れられない。
そのときこちらを見上げてきた小山田の辛そうな表情、そして真っ赤になった目から零れ落ちる涙に心臓のあたりがぎゅっと傷んだことも・・・。
上位以上のαの集団、筑葉生にとって、αのコントロールの外側に立つ小山田は、まさに未知との遭遇だった。
本来、小山田はαにとって最大級の危機感を持って警戒しなければならない相手のはずだった。
しかし、αフェロモンの優劣が意味をなさない小山田を前にして、気が付けば皆、武装解除状態が普通になってしまった。それはそのまま変わることなく、今に至る。
小山田のフェロモンのせいなのか、そのとぼけたパーソナリティのせいなのかはわからない。
エクストラである小山田はいかにも脆弱な存在でありながら、
フェロモンで縛り付けることも出来ない、けれどどうにも気になる。
気にはなるが、なんとなく手をこまねいてしまう。
αにとっては捉えどころのない、なんとも不可思議な存在だった。
だが、俺のそんな認識が一変する日がやってきた。
小山田にラットがやってきたのだ。
αの支配が及ばないはずの小山田が、αに抱かれることなしには生きられないという事実は、αの支配欲を刺激するには十分だった。
小山田が初めてラットを起こして隔離室に運ばれたとき、もし間に合わなかったらと考えたらぞっとする。
そしたら恐らく今頃、こいつの傍らに立つポジションは、朝倉会長か北条だったかもしれない。
ちなみに、庄司のことはそれほど心配はしていないが、ヒートを起こした小山田に立ち会った 朝倉会長と北条に関してだけ 俺は今でも警戒を怠っていないのだった。
はじめはあの城田からの優遇を受けまくって入ってきたαへの警戒だった。
だがそれはすぐに困惑へと変わった。
あまりにもαとかけ離れた小山田をどう捉えればいいのか皆解らなくなったのだ。
城田家の傍流というわけでもなく、ごくごく普通の一般家庭出身。
しかも本人にαの能力の片りんすらも感じられないときたら、普通のαなら利用価値無しとして切り捨てるところだ。
そうなるはずだった小山田を、俺はなぜか無視できなかった。
それは俺だけではなかったはずだ。
おそらく皆が小山田を気にしていた。
外部からやってきて新しい環境に慣れず、緊張して不安そうにしていた小山田。
そんな小山田を刺激しないよう、クラスメートたちはあえてそっと見守るという行動をしている節があった。
少し怯えたような小山田がクラスにいるだけで、皆の紳士度がいつもの5割増しになっていた。
いつもならそこら中で行われる挨拶代わりのαフェロモンの鞘当ても鳴りを潜めた。
皆がフェロモンの放出に気を使っているせいか、クラスの空気から重苦しさが消えた。
やがて小山田が筑葉になじむにつれて、じわじわと紳士の仮面も剝がれ落ちていったが、ただただこいつに甘いだけの奴らが増える一方だった。
小山田に上位αのフェロモンを当てても効果がないことに気が付いたのは恐らく俺が最初だっただろう。
あそこまでαらしくない小山田だったら、支配どころか洗脳だって簡単にできると思っていた。
だからハードルで負傷した小山田を保健室に運ぶ時、駄々をこねる小山田に言うことをきかせようと、強力なフェロモンを当てた。
ところが結果は小山田の貧弱なフェロモンに俺のフェロモンはかき消されてしまった。
高校生にもなろう男に、子供みたいな口調で「うるせーあっちいけ」と言われた時の衝撃は今も忘れられない。
そのときこちらを見上げてきた小山田の辛そうな表情、そして真っ赤になった目から零れ落ちる涙に心臓のあたりがぎゅっと傷んだことも・・・。
上位以上のαの集団、筑葉生にとって、αのコントロールの外側に立つ小山田は、まさに未知との遭遇だった。
本来、小山田はαにとって最大級の危機感を持って警戒しなければならない相手のはずだった。
しかし、αフェロモンの優劣が意味をなさない小山田を前にして、気が付けば皆、武装解除状態が普通になってしまった。それはそのまま変わることなく、今に至る。
小山田のフェロモンのせいなのか、そのとぼけたパーソナリティのせいなのかはわからない。
エクストラである小山田はいかにも脆弱な存在でありながら、
フェロモンで縛り付けることも出来ない、けれどどうにも気になる。
気にはなるが、なんとなく手をこまねいてしまう。
αにとっては捉えどころのない、なんとも不可思議な存在だった。
だが、俺のそんな認識が一変する日がやってきた。
小山田にラットがやってきたのだ。
αの支配が及ばないはずの小山田が、αに抱かれることなしには生きられないという事実は、αの支配欲を刺激するには十分だった。
小山田が初めてラットを起こして隔離室に運ばれたとき、もし間に合わなかったらと考えたらぞっとする。
そしたら恐らく今頃、こいつの傍らに立つポジションは、朝倉会長か北条だったかもしれない。
ちなみに、庄司のことはそれほど心配はしていないが、ヒートを起こした小山田に立ち会った 朝倉会長と北条に関してだけ 俺は今でも警戒を怠っていないのだった。
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