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結界を抜けて
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桐生に手を引かれて俺は役員用のテントに入った。
役員用のテントには、テーブルがいくつあって、それぞれに専用給仕がついていた。
女性も男性もいたが、みんな白いジャケットに蝶ネクタイを着用していた。
俺が彼らに不思議なくらいの親しみを感じてしまったのは何故だろう・・・。
各テーブルとも、左右に筑葉と桜花に分かれて座っているようだった。
目の前に広がる別世界にビビっておもわず足が止まったが、そっと肩に桐生の手が回されると、俺の耳もとに顔が寄せられた気配がして、桐生の吐息がかかった。
そして、腰に響くバリトンボイスが俺を襲った。
「小山田、どうかしたのか?」
思わず、ひゃんっと肩が震えた。
ぞわぞわしながら、声を絞り出す。
「美の結界にはばまれ・・・いや、何でもない。」
自分の肩を抱いた桐生の力を借りて、無事結界を通り抜けることができた。
俺たちに気が付いた朝倉会長が声をかけてきた。
「小山田、ようやく来たな。一体どこをフラフラしていたんだ。」
「すいません。」
余計なことは言わずに素直に謝っておいた。
「小山田、桐生、こっちに来てくれ。前の打ち合わせの時に、お前と桐生はいなかったからな。桜花の生徒会役員の方々に紹介しよう。」
会長は俺たちを傍に呼び寄せて、桜花生に向き合って声をあげた。
「桐生のほうはすでに家同士のパーティー等で顔なじみですので紹介は省くとして。
皆さん、この男が今お話しした小山田です。
中学までは外部の学校に通っていて、高校から編入してきたので、色々と不慣れではありますが気のいい男です。
催しの都度関わることになるかと思いますので、よろしくお願いいたします。」
「小山田慎吾です。桜花学園生徒会のみなさん、よろしくお願いします。」
こんな風にきちんと紹介されるような経験などなかった俺は、緊張しながらも、できるだけ丁寧に頭を下げた。
「初めまして、小山田様。わたくしが桜花学園の生徒会長を務めております、黒須蝶子と申します。
蝶子と呼んでくださいませ。ふふっ、小山田様と重明様はずいぶんとお親しいご様子ですのね。」
俺の肩に置かれた桐生の手に目をやりながらそんなふうに黒須会長が言った。
黒須会長は、艶やかな黒髪ロングの華やかな美少女だった。
吊り目がちな大きな瞳は黒曜石のようにキラキラしていた。
至近距離で見るΩの威力に俺が気おされていると、桐生が黒須会長に答えた。
「お久しぶりです、蝶子さん。先日はお会いできなくて残念でした。
小山田とは親しいというか、今ちょうど口説き落としている最中なので、お手柔らかに願いたい。」
とたんに、桜花の美少女たちから一斉に声が上がった。
「「「「まあ!」」」」
「・・・。」
桜花の男子の制服を着た美少年だけは、静かに微笑んでいた。
黒須会長は、俺と桐生を交互に見た後、それはそれは上機嫌に話しかけてきた。
「まあまあ、お二方ともとってもお似合いでしてよ!
心から応援いたしますわ!桐生様、ぜひ頑張ってくださいまし!」
俺と桐生を見比べた後に、そんな言葉は出ないだろう普通・・・
黒須会長の渾身の気遣いに、俺は大変申し訳なく思ったのだった。
役員用のテントには、テーブルがいくつあって、それぞれに専用給仕がついていた。
女性も男性もいたが、みんな白いジャケットに蝶ネクタイを着用していた。
俺が彼らに不思議なくらいの親しみを感じてしまったのは何故だろう・・・。
各テーブルとも、左右に筑葉と桜花に分かれて座っているようだった。
目の前に広がる別世界にビビっておもわず足が止まったが、そっと肩に桐生の手が回されると、俺の耳もとに顔が寄せられた気配がして、桐生の吐息がかかった。
そして、腰に響くバリトンボイスが俺を襲った。
「小山田、どうかしたのか?」
思わず、ひゃんっと肩が震えた。
ぞわぞわしながら、声を絞り出す。
「美の結界にはばまれ・・・いや、何でもない。」
自分の肩を抱いた桐生の力を借りて、無事結界を通り抜けることができた。
俺たちに気が付いた朝倉会長が声をかけてきた。
「小山田、ようやく来たな。一体どこをフラフラしていたんだ。」
「すいません。」
余計なことは言わずに素直に謝っておいた。
「小山田、桐生、こっちに来てくれ。前の打ち合わせの時に、お前と桐生はいなかったからな。桜花の生徒会役員の方々に紹介しよう。」
会長は俺たちを傍に呼び寄せて、桜花生に向き合って声をあげた。
「桐生のほうはすでに家同士のパーティー等で顔なじみですので紹介は省くとして。
皆さん、この男が今お話しした小山田です。
中学までは外部の学校に通っていて、高校から編入してきたので、色々と不慣れではありますが気のいい男です。
催しの都度関わることになるかと思いますので、よろしくお願いいたします。」
「小山田慎吾です。桜花学園生徒会のみなさん、よろしくお願いします。」
こんな風にきちんと紹介されるような経験などなかった俺は、緊張しながらも、できるだけ丁寧に頭を下げた。
「初めまして、小山田様。わたくしが桜花学園の生徒会長を務めております、黒須蝶子と申します。
蝶子と呼んでくださいませ。ふふっ、小山田様と重明様はずいぶんとお親しいご様子ですのね。」
俺の肩に置かれた桐生の手に目をやりながらそんなふうに黒須会長が言った。
黒須会長は、艶やかな黒髪ロングの華やかな美少女だった。
吊り目がちな大きな瞳は黒曜石のようにキラキラしていた。
至近距離で見るΩの威力に俺が気おされていると、桐生が黒須会長に答えた。
「お久しぶりです、蝶子さん。先日はお会いできなくて残念でした。
小山田とは親しいというか、今ちょうど口説き落としている最中なので、お手柔らかに願いたい。」
とたんに、桜花の美少女たちから一斉に声が上がった。
「「「「まあ!」」」」
「・・・。」
桜花の男子の制服を着た美少年だけは、静かに微笑んでいた。
黒須会長は、俺と桐生を交互に見た後、それはそれは上機嫌に話しかけてきた。
「まあまあ、お二方ともとってもお似合いでしてよ!
心から応援いたしますわ!桐生様、ぜひ頑張ってくださいまし!」
俺と桐生を見比べた後に、そんな言葉は出ないだろう普通・・・
黒須会長の渾身の気遣いに、俺は大変申し訳なく思ったのだった。
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