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獲りに行く男1
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桐生本家の隔離室にて──
前当主であり、いまだに隠然たる影響力を持つ祖父との遭遇によって、小山田との婚姻に向けての布石はそれだけでほぼほぼ完了したと言って良い。
桐生はそう手応えを感じていたが、安心はしていなかった。
なぜなら本当の戦いはこれからだったからだ。
小山田は、これまでβとして生きてきた。
βの性的志向はほとんどが異性であり、小山田のこれまでの発言からも、彼も同様であるのは明白だった。つまり小山田の恋愛対象は女性のみ。
ここにきて、桐生がこれまで自分との性交渉についてのあれやこれやを小山田から徹底的に隠してきたことが、完全に仇となっていた。
小山田との婚姻にこぎつけるためには、男性を受け入れることへの忌避感を薄め、外堀を埋めなければならない。
そして男である自分が小山田の恋愛対象に入り、城に迫る。それから城攻めを開始し、最後は城を落とす──。
つまるところ、あのとぼけた小山田に自分を惚れさせなければならないと言う、難易度の高いミッションを完遂しなければならなかった。
今回の戦いは、小山田のラットが明けてからが主戦場になる。
よって桐生は 小山田のラットを長引かせて彼の体力を削らせたくなかった。
いつもは着衣のまま小山田の相手をしていたが、小山田の服を脱がせると、手早く自分も全裸になった。
陰茎を擦る小山田の手を握り込んで、動きを止めると、すぐに小山田が騒ぎ出した。
「きりゅう、きりゅう、はなせよ、きりゅ・・・」
小山田の両腕を頭の上でひとまとめにして片手でシーツに縫い付けた。
そのまま小山田の唇を深いキスで塞ぐ。
すぐに苦しがって、足でシーツを蹴り始めた。
その片膝を掴むと、桐生は自分の肩に掛ける。
視界に映る小山田の後孔を空いている手で愛撫し、良い頃合いになると、速やかに自身を埋めた―――。
それから一時して、小山田の意識が浮上した。
「ん・・・」
ぼんやりと、かすむ目を瞬かせている小山田の真上から桐生の声が降ってきた。
「小山田、ようやくのお目覚めだな。」
それが思ったよりもずっと近くから聞こえたことで、小山田は一気に覚醒した。
ハッと上を向くと、見知らぬ男が見下ろしていた。
と、よくよく見たら桐生で、いつもと何かが違う様子に違和感を感じた。
やがて、自分も桐生も全裸で、ベッドの上で桐生に押し倒されていることに気が付いた。
大きく広げられた足に桐生の手がかかっていて、恐らく二人が結合していることにも。
「きりゅう、え、なに、どこ、なんで裸… 」
「小山田がラットになって俺の家に連れてきたんだ。」
「桐生の家・・・」
「ごめんな、今回はおれもラットが止められなくて…」
ウソは言っていない。
体ではなく意志の方を止められなかっただけだ。
普通なら発狂ものの現場のはずだった。
しかし、真上で申し訳なさそうに言う桐生を見ていた小山田には 精神的な余裕が生まれた。
とりあえず小山田は桐生に声を掛けた。
「言うことをちゃんと聞く利口な桐生のちんこでもそんなことあるんだな…」
「そうだ、αだって色々あるんだ。
こんな俺じゃあ嫌いになるか?」
「そんなことぐらいで俺がお前のこと嫌いになんてなるわけねぇだろ。」
ちんこの話題と全裸でなければ、美しい青春の1ページだったかもしれない。
「でも、おれ男なのに、やっぱりケツ掘られるの正直嫌だ。
出すとこに桐生が入ってきてるから、なんか変だし…。
つか最中のお前にこんな事いうのは 同じ男として気が引けるけど、もうそろそろ出て行ってくださ・・・
「無理だ。ノットがあるから射精が終わるまでは抜けない。」
「まじかよ・・・」
桐生の戦いはこうして始まった。
前当主であり、いまだに隠然たる影響力を持つ祖父との遭遇によって、小山田との婚姻に向けての布石はそれだけでほぼほぼ完了したと言って良い。
桐生はそう手応えを感じていたが、安心はしていなかった。
なぜなら本当の戦いはこれからだったからだ。
小山田は、これまでβとして生きてきた。
βの性的志向はほとんどが異性であり、小山田のこれまでの発言からも、彼も同様であるのは明白だった。つまり小山田の恋愛対象は女性のみ。
ここにきて、桐生がこれまで自分との性交渉についてのあれやこれやを小山田から徹底的に隠してきたことが、完全に仇となっていた。
小山田との婚姻にこぎつけるためには、男性を受け入れることへの忌避感を薄め、外堀を埋めなければならない。
そして男である自分が小山田の恋愛対象に入り、城に迫る。それから城攻めを開始し、最後は城を落とす──。
つまるところ、あのとぼけた小山田に自分を惚れさせなければならないと言う、難易度の高いミッションを完遂しなければならなかった。
今回の戦いは、小山田のラットが明けてからが主戦場になる。
よって桐生は 小山田のラットを長引かせて彼の体力を削らせたくなかった。
いつもは着衣のまま小山田の相手をしていたが、小山田の服を脱がせると、手早く自分も全裸になった。
陰茎を擦る小山田の手を握り込んで、動きを止めると、すぐに小山田が騒ぎ出した。
「きりゅう、きりゅう、はなせよ、きりゅ・・・」
小山田の両腕を頭の上でひとまとめにして片手でシーツに縫い付けた。
そのまま小山田の唇を深いキスで塞ぐ。
すぐに苦しがって、足でシーツを蹴り始めた。
その片膝を掴むと、桐生は自分の肩に掛ける。
視界に映る小山田の後孔を空いている手で愛撫し、良い頃合いになると、速やかに自身を埋めた―――。
それから一時して、小山田の意識が浮上した。
「ん・・・」
ぼんやりと、かすむ目を瞬かせている小山田の真上から桐生の声が降ってきた。
「小山田、ようやくのお目覚めだな。」
それが思ったよりもずっと近くから聞こえたことで、小山田は一気に覚醒した。
ハッと上を向くと、見知らぬ男が見下ろしていた。
と、よくよく見たら桐生で、いつもと何かが違う様子に違和感を感じた。
やがて、自分も桐生も全裸で、ベッドの上で桐生に押し倒されていることに気が付いた。
大きく広げられた足に桐生の手がかかっていて、恐らく二人が結合していることにも。
「きりゅう、え、なに、どこ、なんで裸… 」
「小山田がラットになって俺の家に連れてきたんだ。」
「桐生の家・・・」
「ごめんな、今回はおれもラットが止められなくて…」
ウソは言っていない。
体ではなく意志の方を止められなかっただけだ。
普通なら発狂ものの現場のはずだった。
しかし、真上で申し訳なさそうに言う桐生を見ていた小山田には 精神的な余裕が生まれた。
とりあえず小山田は桐生に声を掛けた。
「言うことをちゃんと聞く利口な桐生のちんこでもそんなことあるんだな…」
「そうだ、αだって色々あるんだ。
こんな俺じゃあ嫌いになるか?」
「そんなことぐらいで俺がお前のこと嫌いになんてなるわけねぇだろ。」
ちんこの話題と全裸でなければ、美しい青春の1ページだったかもしれない。
「でも、おれ男なのに、やっぱりケツ掘られるの正直嫌だ。
出すとこに桐生が入ってきてるから、なんか変だし…。
つか最中のお前にこんな事いうのは 同じ男として気が引けるけど、もうそろそろ出て行ってくださ・・・
「無理だ。ノットがあるから射精が終わるまでは抜けない。」
「まじかよ・・・」
桐生の戦いはこうして始まった。
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