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甘くなる男たち

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三人でしばらく見つめ合っていたが、誰からとはなくため息が漏れた。

「さすがはαの頂点、城田の人間だなぁ。容赦ない。
本家直系なのに、医者になった変わり者って話は聞いていたけどね・・・」
北条が疲れた様に呟いた。

桐生も、小山田を見つめながらいった。
「小山田の人権なんてはなからなかったって事なんだろうな。城田さん本人はちゃんと考えている口ぶりだったが。」

すると、朝倉があきれたように口を開いた。
「何言ってる。むしろ激甘だろう。
奨学金まで設立して学生生活をさせてやってる。その奨学金だって、学校に三日で制度を作れって無茶ぶりしたらしいぞ。」

それから少し声を落として、

「そこまでしてやっての退学騒動だ。俺はあの時正直ヒヤヒヤしていたよ。
・・・それが、蓋を開けてみたら小山田に学習支援だの説得だの。俺は耳を疑ったね。」
そう言って、肩をすくめて続けた。

「これまでなら、小山田の両親を事故死させて、何とでも理由をつけて小山田を病院に閉じ込めて。
やりたい実験をやりたいようにやって、最後は口封じくらい平気でやってたと思うぞ。あの人ならな。
今回のラットだって、もう数日ラットが続いたとして小山田が気を失おうが、ちんこがもげようが最後まで観察は続くと思っていたくらいだ。」

それを聞いた桐生も思った。
言われてみれば、小山田がちんこが痛くて泣いていると言ったら、城田は次の指示を出してきたんだった。
本来 最上位αの城田の血は 目的の為なら手段を択ばないという苛烈なものだ。
城田なりに小山田に配慮しているということなんだろうか。



そんなことを話し合っている面々も、自分たちが小山田に甘くなっていることに気がついていない。
利害関係も何もない小山田の事にこうして個人的に関わっていること自体が普通ではないのだ。

いや、三人だけではない。
本来αの生きる社会は正しく階級社会であり、弱肉強食の世界なのだ。
αにとって世のすべては、己と番とそれ以外に収束する。
同じαだろうが、αに劣るβだろうが、αに関わりの深いΩだろうが同じことだった。

育ちがいいから紳士?親切?…そんなことあるわけなかった。
αの世界はそんなに甘いものではない。
そこに何かしらの利害関係がなければ、人が運動中に転ぼうが、授業について行けずに泣こうが、馬鹿にするどころか路傍の石ほども気にもならないのがαの普通だったのだ。

「しょうがない奴だ」
「またあいつか」
「馬鹿だなあ」
「大丈夫なのか」

そんなことを言いながらも、懐にいれてしまう。
番に抱く庇護欲とも恋愛感情とも違う。
見ていて面白く、構って楽しい。危なっかしくてハラハラする。
そんな存在は小山田だけだ。

最上位αの威嚇も、洗脳もきかず。
αの強さがなくとも、αの感情を支配する。
それがエクストラというバースの本質なのだった。




おもむろに朝倉が口火を切る。
「・・・で、どうするかだが、」

「「「・・・俺がやる」」」


一瞬だけ静けさが流れ。


「「「はぁ?」」」

三人同時にそんな声を発した。

そんな中、朝倉が説得力のあるいい声で主張する。

「こいつの尻を見てみろ。発情期を迎えていてもこっちはそうじゃない。
しかも、このみっちり閉じた感じを見るに、男を受け入れた経験は無さそうだ。
発情期のΩじゃなければ、ここは勝手に柔らかくもならないし、濡れないんだ。
Ωと同じように突っ込んだら小山田は大けがを負うことになるぞ。」

北条もキリっと答える。
「βの男とやるのと変わらない。そういうことですか?」

「そうだ。そしてそれには開発が必要だということだ。
ローションが絶対に必要だ。
で、この中でβの男との経験がある奴はいるのか?ちなみに俺は…」

「「ない」」
「ある」

桐生と北条の視線が、朝倉の顔に注がれた。

「まじかよ・・・」(やる男だぜ)
「さすがは朝倉会長・・・」(なんと節操のない)

こうして、苦しむ俺をよそに三人の男たちによって俺のケツ開発プロジェクトは勧められたのだった。
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