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黒の剣舞①
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侯爵との話し合いの結果、結局 剣の稽古の件は保留になってしまった。
あの場で、レオとアレクに、意外なほどに強硬に反対されたからだ。
侯爵の話によると、<王家の盾>である近衛騎士団とその幼年科に所属するのは、基本的に魔力の少ない貴族ということで、必然的に下位貴族の子弟が多く集まるらしい。
侯爵やレオとアレクが俺にいろいろ説明してくれたことをおおざっぱに意訳すると、下位貴族にとって唯一と言っていい王の側近く仕えることができるポジションであるそこに、侯爵家の三男が所属するとなると、相当浮いた存在になるとのことだ。
もっとはっきり言うと、迷惑なんだろう。
うむう、高位貴族、下位貴族、平民のどこでも浮いてしまう俺・・・ちょっと悲しい。
仕方がないので、レオとアレクに頼み込んで、二人が魔法訓練を行うときに、放った魔法を剣でたたき切る練習をさせてもらっていた。
そんなことをつらつら思い出しながら、俺は現在、侯爵家の馬車に乗ってロンド公爵邸に向かっている。
レオとアレクも一緒だ。
前回頭を下げに行ったときとは違って、今回は高位貴族子弟を集めた魔法の合同練習に俺も参加することになったのだ。
俺が行ったところで魔法が使えない俺は何もすることはないと思うんだが、レオとアレクに俺も連れていくと言われたのだ。
高位貴族の子弟たちに、ヘルメスと近しくあることを見せた方が良いとのことだった。
そういうわけで、ヘルメスにもらった剣を腰に下げている。
魔力無しの俺が貴族社会において舐められないようにするためには必要な布石なんだろう。
俺を守ろうとしてくれるレオとアレク、それにヘルメスにも感謝だな。
そう思いながら、向かいに座るレオとアレクに目をやる。
二人とも、ペールブルーに金の刺繍がほどこされた優美な貴族服に身を包んでいる。
輝くような金髪と青い瞳に映えて いつもにもましてキラキラしい。
実は俺も揃いの服を仕立てることになっていたのだが、どうしても手配が間に合わないとのことで、結局侯爵邸に来た時の服を着ることになったのだ。
レオとアレクはとても残念がっていたが、俺的にはあの服の方が落ち着くので、逆に良かったのが本音だ。
そうこうしているうちに公爵邸に着くと、皆が集められた広間に通された。
そこにいる子供たちを観察すると、上は中学生くらいから、下はアレクと俺くらいの年齢まで、けっこうバラツキがあった。
王位継承権第一位のヘルメスと顔をつなぐために、高位貴族家のほとんどの子弟が集まっている感じだった。
広間に入ってすぐ、レオとアレクは奥のソファに座って何人かで歓談している中学生くらいの青年達のところにまっすぐに向かって行った。もちろん俺も後からついていく。
「お久しぶりです、セリウス様。グラン侯爵家レオポルドです。本日は弟たちも連れて参りました。よろしくお願いいたします。」
レオが年長の少年に挨拶すると、セリウスというその少年は立ち上がると、レオとアレクに親し気に答えた。
「レオポルドにアレクシス!久しぶりだな、半年ぶりか。・・・ははぁ、後ろの黒髪のが、今うわさの魔力無しか?」
そう言うと、ちらりと俺に目をやった。
レオが俺の背に手を当てて、そっと前に誘導してくれので、俺も挨拶をした。
「グラン侯爵家が三男のカインと申します。よろしくお願いいたします。」
「コーラル公爵家が嫡子、セリウスだ。しかし本当にまったく毛色が違うな。侯爵家の養い子が今回ようやくお披露目というわけだ。
魔力無しということだが、この場にいるということは、ヘルメスの気に入りという噂は本当のようだな?」
そう言って、ちらりと俺の腰に下げられている剣に目をやる。
馬車の中でレオとアレクに教えられた情報によると、このセリウスは王位継承権第三位とのことだった。
ちなみに、王位継承権第二位は現王の王弟である セリウスの父親らしい。
派閥が出来上がりつつあるらしく、きな臭いことこの上ない。
よって俺はこれ以上深入りしないように大人しくしておくことにする。
セリウスは、やはり王家の血筋が濃いせいか、ヘルメスと同じ金髪に碧眼で、怜悧な美青年といった印象だった。
金髪は少し暗めのダークブロンドに瞳は水色に近いようなアイスブルーで、金髪碧眼にも微妙な違いがあるもんだなと見ていると、
「・・・なるほど、ヘルメスが気に入るのも分かる。魔力がないというのが惜しいな。」
そう言ってついっと手を伸ばして俺の頬に手を伸ばしてきたので、つい避けてしまった。
いや、だって初対面で顔を触ろうとするとかありえないし、普通避けるだろ。
すると、セリウスが面白そうに俺に目を合わせてきた。
魔力無しで悪かったな、だったら手なんか出さずにほっとけよ。
そう思っていたら、いつのまにかレオとアレクに挟まれていた。
最近このスタイルに違和感を感じなくなってきている自分がいる。
「セリウス様、申し訳ございません。弟は体が弱いためにずっと田舎で療養をしていたので、色々と不慣れなのです。どうぞお目こぼしください。」
いや俺、めたくそ元気にデモンのやつと走り回っていたけどな!
またもやレオとアレクに俺のフォローをさせてしまって、もはやこの二人には頭が上がらない俺であった。
あの場で、レオとアレクに、意外なほどに強硬に反対されたからだ。
侯爵の話によると、<王家の盾>である近衛騎士団とその幼年科に所属するのは、基本的に魔力の少ない貴族ということで、必然的に下位貴族の子弟が多く集まるらしい。
侯爵やレオとアレクが俺にいろいろ説明してくれたことをおおざっぱに意訳すると、下位貴族にとって唯一と言っていい王の側近く仕えることができるポジションであるそこに、侯爵家の三男が所属するとなると、相当浮いた存在になるとのことだ。
もっとはっきり言うと、迷惑なんだろう。
うむう、高位貴族、下位貴族、平民のどこでも浮いてしまう俺・・・ちょっと悲しい。
仕方がないので、レオとアレクに頼み込んで、二人が魔法訓練を行うときに、放った魔法を剣でたたき切る練習をさせてもらっていた。
そんなことをつらつら思い出しながら、俺は現在、侯爵家の馬車に乗ってロンド公爵邸に向かっている。
レオとアレクも一緒だ。
前回頭を下げに行ったときとは違って、今回は高位貴族子弟を集めた魔法の合同練習に俺も参加することになったのだ。
俺が行ったところで魔法が使えない俺は何もすることはないと思うんだが、レオとアレクに俺も連れていくと言われたのだ。
高位貴族の子弟たちに、ヘルメスと近しくあることを見せた方が良いとのことだった。
そういうわけで、ヘルメスにもらった剣を腰に下げている。
魔力無しの俺が貴族社会において舐められないようにするためには必要な布石なんだろう。
俺を守ろうとしてくれるレオとアレク、それにヘルメスにも感謝だな。
そう思いながら、向かいに座るレオとアレクに目をやる。
二人とも、ペールブルーに金の刺繍がほどこされた優美な貴族服に身を包んでいる。
輝くような金髪と青い瞳に映えて いつもにもましてキラキラしい。
実は俺も揃いの服を仕立てることになっていたのだが、どうしても手配が間に合わないとのことで、結局侯爵邸に来た時の服を着ることになったのだ。
レオとアレクはとても残念がっていたが、俺的にはあの服の方が落ち着くので、逆に良かったのが本音だ。
そうこうしているうちに公爵邸に着くと、皆が集められた広間に通された。
そこにいる子供たちを観察すると、上は中学生くらいから、下はアレクと俺くらいの年齢まで、けっこうバラツキがあった。
王位継承権第一位のヘルメスと顔をつなぐために、高位貴族家のほとんどの子弟が集まっている感じだった。
広間に入ってすぐ、レオとアレクは奥のソファに座って何人かで歓談している中学生くらいの青年達のところにまっすぐに向かって行った。もちろん俺も後からついていく。
「お久しぶりです、セリウス様。グラン侯爵家レオポルドです。本日は弟たちも連れて参りました。よろしくお願いいたします。」
レオが年長の少年に挨拶すると、セリウスというその少年は立ち上がると、レオとアレクに親し気に答えた。
「レオポルドにアレクシス!久しぶりだな、半年ぶりか。・・・ははぁ、後ろの黒髪のが、今うわさの魔力無しか?」
そう言うと、ちらりと俺に目をやった。
レオが俺の背に手を当てて、そっと前に誘導してくれので、俺も挨拶をした。
「グラン侯爵家が三男のカインと申します。よろしくお願いいたします。」
「コーラル公爵家が嫡子、セリウスだ。しかし本当にまったく毛色が違うな。侯爵家の養い子が今回ようやくお披露目というわけだ。
魔力無しということだが、この場にいるということは、ヘルメスの気に入りという噂は本当のようだな?」
そう言って、ちらりと俺の腰に下げられている剣に目をやる。
馬車の中でレオとアレクに教えられた情報によると、このセリウスは王位継承権第三位とのことだった。
ちなみに、王位継承権第二位は現王の王弟である セリウスの父親らしい。
派閥が出来上がりつつあるらしく、きな臭いことこの上ない。
よって俺はこれ以上深入りしないように大人しくしておくことにする。
セリウスは、やはり王家の血筋が濃いせいか、ヘルメスと同じ金髪に碧眼で、怜悧な美青年といった印象だった。
金髪は少し暗めのダークブロンドに瞳は水色に近いようなアイスブルーで、金髪碧眼にも微妙な違いがあるもんだなと見ていると、
「・・・なるほど、ヘルメスが気に入るのも分かる。魔力がないというのが惜しいな。」
そう言ってついっと手を伸ばして俺の頬に手を伸ばしてきたので、つい避けてしまった。
いや、だって初対面で顔を触ろうとするとかありえないし、普通避けるだろ。
すると、セリウスが面白そうに俺に目を合わせてきた。
魔力無しで悪かったな、だったら手なんか出さずにほっとけよ。
そう思っていたら、いつのまにかレオとアレクに挟まれていた。
最近このスタイルに違和感を感じなくなってきている自分がいる。
「セリウス様、申し訳ございません。弟は体が弱いためにずっと田舎で療養をしていたので、色々と不慣れなのです。どうぞお目こぼしください。」
いや俺、めたくそ元気にデモンのやつと走り回っていたけどな!
またもやレオとアレクに俺のフォローをさせてしまって、もはやこの二人には頭が上がらない俺であった。
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