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運命の輪
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グラン侯爵家の客間では、その館の住人たちが 血のつながらない三番目の子供の到着を待っていた。
侯爵家当主ゼビウスを中央に、その傍らにはその妻のヘレネ、二人の子供である嫡男レオポルドと次男アレクシスが座り、和やかに話をしていた。
子供たちは、新たにやってくる 年の近い兄弟に 浮き立つ気持ちが抑えきれないようで、侯爵夫妻ゆずりの 青い瞳をきらめかせながら そわそわしていた。
レオポルドが口を開いた。
「父上、カインは私達の末の弟になるのですよね。」
「そうだ。6歳になったところだ。アレクシスと同い年だが、カインはアレクシスの後に生まれたからそうなるな。」
ゼビウスが そんな子供たちを微笑まし気に見ながら答えた。
「二人とも、カインは実のお母様と離れて我が家に来るのです。優しくしてあげるのですよ。」
ヘレネが穏やかに微笑みながら子供たちに声をかけた。
そんな時だった。トントンと ノックの音が響き、執事のリチャードの声が聞こえてきた。
「みなさま、カイン様がご到着なさいました。」
かちゃりとドアが開いて、それはするりと入ってきた。
レオポルドは、声を失った。
・・・弟?これが?
それは、少年特有の細い足をしなやかに動かして、4人が座る応接セットの前にピタリと止まった。
まるで黒い猫のようだとレオポルドは思った。それも とびきり美しい猫だ。
あごを引いて、伏し目がちな瞳は、けぶるようなまつ毛の奥に陰っていた。
あごを掴んで上向かせ、のぞき込みたくなる衝動にかられたとき、つと面を上げて飛び込んできたのは。
その瞬間、すべての者たちの時が止まった。
まろく輝く白い頬と 艶やかな黒髪に彩られてなお、その瞳は鮮烈だった。
紫の炎のような虹彩に皆が支配され、運命の輪が軋みを立てながら回り始めたのだった。
侯爵家当主ゼビウスを中央に、その傍らにはその妻のヘレネ、二人の子供である嫡男レオポルドと次男アレクシスが座り、和やかに話をしていた。
子供たちは、新たにやってくる 年の近い兄弟に 浮き立つ気持ちが抑えきれないようで、侯爵夫妻ゆずりの 青い瞳をきらめかせながら そわそわしていた。
レオポルドが口を開いた。
「父上、カインは私達の末の弟になるのですよね。」
「そうだ。6歳になったところだ。アレクシスと同い年だが、カインはアレクシスの後に生まれたからそうなるな。」
ゼビウスが そんな子供たちを微笑まし気に見ながら答えた。
「二人とも、カインは実のお母様と離れて我が家に来るのです。優しくしてあげるのですよ。」
ヘレネが穏やかに微笑みながら子供たちに声をかけた。
そんな時だった。トントンと ノックの音が響き、執事のリチャードの声が聞こえてきた。
「みなさま、カイン様がご到着なさいました。」
かちゃりとドアが開いて、それはするりと入ってきた。
レオポルドは、声を失った。
・・・弟?これが?
それは、少年特有の細い足をしなやかに動かして、4人が座る応接セットの前にピタリと止まった。
まるで黒い猫のようだとレオポルドは思った。それも とびきり美しい猫だ。
あごを引いて、伏し目がちな瞳は、けぶるようなまつ毛の奥に陰っていた。
あごを掴んで上向かせ、のぞき込みたくなる衝動にかられたとき、つと面を上げて飛び込んできたのは。
その瞬間、すべての者たちの時が止まった。
まろく輝く白い頬と 艶やかな黒髪に彩られてなお、その瞳は鮮烈だった。
紫の炎のような虹彩に皆が支配され、運命の輪が軋みを立てながら回り始めたのだった。
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