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魔力がないと言うこと
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少し考えていたデモンが、ふと
「魔力がなくてもできる事をしてみますか?」
と提案してきた。
魔法無しの俺にとって、それこそ教えて貰いたい事だったので、食いつき気味にお願いしたのだった。
そして今、俺は屋敷の広大な庭を走っている。
いや、走らされている。
デモンに、「じゃあ、鬼ごっこをしますよ。」
と言われたとき、2ヶ月後には 侯爵邸へドナドナされる事を思い、切羽詰まっていた俺は、馬鹿にするのもいい加減にしろよと内心震えが来た。
しかし、俺は大きな勘違いをしていたのだった。
俺とデモンは もう二時間近く鬼ごっこをしている。
ふたを開けてみると、それは 地獄の鬼ごっこだった。
鬼はデモン、逃げるのは俺で固定だ。
デモンが、魔法をぶっ放しながら俺を追いかけ回してくる。俺は逃げ惑い、木に隠れたり、たまにデモンの火魔法に焙られながら必死で逃げ回っていた。
魔力がない俺にとって、反撃の選択肢はないのだ。
ひたすらに様子をうかがい、逃げるだけ。
俺は理解した。
この世界で魔力無しの武器は、危険察知能力と逃げ足だけなのだと。
動けなくなって、地面に大の字に伸びていると、息の一つも上がっていないデモンが顔をのぞかせて言った。
「坊ちゃん、チェックメイトです」
138回目のそれを言われたとき、俺はデモンに息も絶え絶えに言ったのだった。
「俺、ぜったいに痩せる・・・」
デモンはうなずくと、
「では、昼のデザートは甘さ控えめのソルベに致しましょう」
と言った。
「あと、気持ち悪くて、重いのは無理・・・」
と俺が言うと、
「仕方ないですね、では、リゾットに致します。仕込んで参りますので、お先に失礼致します。」
遠ざかっていく足音を聞きながら、これまで会ったことがなかった腕の良い料理人が、デモンであったことに衝撃を受けたのだった。
「魔力がなくてもできる事をしてみますか?」
と提案してきた。
魔法無しの俺にとって、それこそ教えて貰いたい事だったので、食いつき気味にお願いしたのだった。
そして今、俺は屋敷の広大な庭を走っている。
いや、走らされている。
デモンに、「じゃあ、鬼ごっこをしますよ。」
と言われたとき、2ヶ月後には 侯爵邸へドナドナされる事を思い、切羽詰まっていた俺は、馬鹿にするのもいい加減にしろよと内心震えが来た。
しかし、俺は大きな勘違いをしていたのだった。
俺とデモンは もう二時間近く鬼ごっこをしている。
ふたを開けてみると、それは 地獄の鬼ごっこだった。
鬼はデモン、逃げるのは俺で固定だ。
デモンが、魔法をぶっ放しながら俺を追いかけ回してくる。俺は逃げ惑い、木に隠れたり、たまにデモンの火魔法に焙られながら必死で逃げ回っていた。
魔力がない俺にとって、反撃の選択肢はないのだ。
ひたすらに様子をうかがい、逃げるだけ。
俺は理解した。
この世界で魔力無しの武器は、危険察知能力と逃げ足だけなのだと。
動けなくなって、地面に大の字に伸びていると、息の一つも上がっていないデモンが顔をのぞかせて言った。
「坊ちゃん、チェックメイトです」
138回目のそれを言われたとき、俺はデモンに息も絶え絶えに言ったのだった。
「俺、ぜったいに痩せる・・・」
デモンはうなずくと、
「では、昼のデザートは甘さ控えめのソルベに致しましょう」
と言った。
「あと、気持ち悪くて、重いのは無理・・・」
と俺が言うと、
「仕方ないですね、では、リゾットに致します。仕込んで参りますので、お先に失礼致します。」
遠ざかっていく足音を聞きながら、これまで会ったことがなかった腕の良い料理人が、デモンであったことに衝撃を受けたのだった。
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