7 / 18
花の殺人犯
宵闇にSleep
しおりを挟む
次の日から私は学校に行く事になった。
朝からちゃんとした授業を受け、特別変わりなく過ごす。いつも通り。数学の授業を受けてノートを取る。
「いいかい。この証明は必ずテストに出る訳だ。先生の経験則から言えば恋愛に証明は無い。追いかける物が見えてる分、数学の方がました。」
カリカリとノートを削る音が回りで沸き立つが、私のノートだけは文字が書かれていない。腕の走りを止めるのは、昨日の兄の心無いテキストだけ。
______明日は学校に行っていい。ミサトの家から出て、いつも通りすごすんだ。
たったこれだけだ。何よりムカつくのは兄は学校に来ていないこと。ヒナギシ先輩と仲良くしているみたいな所が尚腹立たしい。なんというか生理的に怒っている。
確かにあの綺麗なショートと完ぺきな顔立ちに近寄られればどうにかなってしまう。女の私ですらそれは理解出来るが身内からそんなデレデレ甲斐性なし野郎がでてくると、腹が立って仕方がない。まるで私が何も無いみたいだ。何も無いのだが。
気づくとミサトが私の視界に入り込んでいた。朝日に埋もれる愛らしい丸顔、そして眼鏡の向こうから潤んだ瞳が私を捉えている。怖がっている様子に理解が及ばない。
「...な、なんでシャーペンを握りおってるのかな?」
「え?______あ、アハハハハ!ナンデカナー」
「どういう話し方なの...」
気づけば机の上に置かれた私の左握り拳が、プラスチックのペンを巻き込んでへし折っていた。
この煩わしい気持ちはなんなのだろうか。
時間はすぎて空は夕暮れに染まっていた。ホコリっぽい図書室で勤務をする私は背伸びをして、受付の椅子を傾けた。
「んーー!もう終わりかぁー!ね、ミサト。」
「うん...もうそろそろだね。」
時計を見れば17時も目前だった。ヒナギシ先輩の病欠が響いてしまい、緊急で勤務についている。
「ほんとによかったの?...確かにお兄さんにはいつも通りにしろって言われてたけど...さすがに今日は...」
「いいのいいの!こんな可愛い私を置いて学校に行かせるやつなんだし、言うことなんて聞いてやらないんだから!!ふん!」
口をすぼめて、何も無いと分かっている机にかかと落とし。わざとらしくあざとく。ミサトにすら私は演技をしている。
それを見てミサトは引きつった笑顔を向けている。
「まぁまぁ...あれ?」
突然、蛍光灯が点滅を始めた。その瞬間に闇を見る私は背筋が凍った。
「なんでかな...。カミナリもなってないのに」
「そ。そうね。なんでかしらり。」
「...大丈夫?」
「大丈夫よ!大丈夫!大丈夫なんだから...」
嘘だ。虚勢なのはミサトにきっと伝わってる。
脳裏に焼き付いているのは、闇の中ですら輪郭を成す人影。
暗影を背にした更なる濃い影。それは机を挟んで私の前に立ち、私を睨んでいたのだ。まるでずっとそこに立っていたかのように、私の事をひたすら見下ろしていた。
「...そろそろ時間だしとじまり______」
その瞬間にまた明かりが潰えた。心臓が握り潰されたようにギョッとするも、何も現れず明かりが戻った。
「そうね。さ、さささ流石に...時間も時間だ______」
するとどうだ。ミサトがきれいさっぱり消えてしまった。
「ミィイイイイイサァアアアアトォオオオオオオ!!」
月夜が差し込む廊下に行灯はない。月光と非常灯のほのかな灯りが浮かぶ、宵闇に埋もれた廊下を走る。消えたミサトを探しながら駆け回っている。
(ごめんねミサト...)
頭の中で謝罪をくべる度に後悔が波立っている。今更遅いが。
風切り音が耳をつぶす中で、ふと何かが聞こえてきた。
「マテェエエエエエエエエ!!!」
まるで背中を追い掛けるように飛んできた声が覆い被さってきた。振り向けば、早すぎて分からないが恐らく人影がこちらに向かって全力疾走してきた。
「イヤァアアッ!!!」
まるでホラー映画だ。と考えてる内に肩を掴まれた。その瞬間に意識が消えそうなくらい、身体の寒気が巡ってきた。
「待ちなさい!私です!数学の立花です!!」
「_____え?」
思いがけない登場人物に違う意味で肝を冷やした。振り向けば丸眼鏡のカーディガン似あう優男(27歳独身)が、息を切らして現れた。
「なにやってんの!!」
「な、なにやってんの?いや私は残業なんですよ...じゃなくてあなたは一体なにをしてるんですか!こんな夜遅い時間に...」
イレギュラーが起きた。この状況を整えたのは私の兄。花の殺人鬼をおびき出すための囮としてこの学校に戻ったのに、誰も犠牲を出さずにしようとしたのに。
思い裏腹で状況を進み、平穏を破る声が響き渡った。
「花を見たいな。」
朝からちゃんとした授業を受け、特別変わりなく過ごす。いつも通り。数学の授業を受けてノートを取る。
「いいかい。この証明は必ずテストに出る訳だ。先生の経験則から言えば恋愛に証明は無い。追いかける物が見えてる分、数学の方がました。」
カリカリとノートを削る音が回りで沸き立つが、私のノートだけは文字が書かれていない。腕の走りを止めるのは、昨日の兄の心無いテキストだけ。
______明日は学校に行っていい。ミサトの家から出て、いつも通りすごすんだ。
たったこれだけだ。何よりムカつくのは兄は学校に来ていないこと。ヒナギシ先輩と仲良くしているみたいな所が尚腹立たしい。なんというか生理的に怒っている。
確かにあの綺麗なショートと完ぺきな顔立ちに近寄られればどうにかなってしまう。女の私ですらそれは理解出来るが身内からそんなデレデレ甲斐性なし野郎がでてくると、腹が立って仕方がない。まるで私が何も無いみたいだ。何も無いのだが。
気づくとミサトが私の視界に入り込んでいた。朝日に埋もれる愛らしい丸顔、そして眼鏡の向こうから潤んだ瞳が私を捉えている。怖がっている様子に理解が及ばない。
「...な、なんでシャーペンを握りおってるのかな?」
「え?______あ、アハハハハ!ナンデカナー」
「どういう話し方なの...」
気づけば机の上に置かれた私の左握り拳が、プラスチックのペンを巻き込んでへし折っていた。
この煩わしい気持ちはなんなのだろうか。
時間はすぎて空は夕暮れに染まっていた。ホコリっぽい図書室で勤務をする私は背伸びをして、受付の椅子を傾けた。
「んーー!もう終わりかぁー!ね、ミサト。」
「うん...もうそろそろだね。」
時計を見れば17時も目前だった。ヒナギシ先輩の病欠が響いてしまい、緊急で勤務についている。
「ほんとによかったの?...確かにお兄さんにはいつも通りにしろって言われてたけど...さすがに今日は...」
「いいのいいの!こんな可愛い私を置いて学校に行かせるやつなんだし、言うことなんて聞いてやらないんだから!!ふん!」
口をすぼめて、何も無いと分かっている机にかかと落とし。わざとらしくあざとく。ミサトにすら私は演技をしている。
それを見てミサトは引きつった笑顔を向けている。
「まぁまぁ...あれ?」
突然、蛍光灯が点滅を始めた。その瞬間に闇を見る私は背筋が凍った。
「なんでかな...。カミナリもなってないのに」
「そ。そうね。なんでかしらり。」
「...大丈夫?」
「大丈夫よ!大丈夫!大丈夫なんだから...」
嘘だ。虚勢なのはミサトにきっと伝わってる。
脳裏に焼き付いているのは、闇の中ですら輪郭を成す人影。
暗影を背にした更なる濃い影。それは机を挟んで私の前に立ち、私を睨んでいたのだ。まるでずっとそこに立っていたかのように、私の事をひたすら見下ろしていた。
「...そろそろ時間だしとじまり______」
その瞬間にまた明かりが潰えた。心臓が握り潰されたようにギョッとするも、何も現れず明かりが戻った。
「そうね。さ、さささ流石に...時間も時間だ______」
するとどうだ。ミサトがきれいさっぱり消えてしまった。
「ミィイイイイイサァアアアアトォオオオオオオ!!」
月夜が差し込む廊下に行灯はない。月光と非常灯のほのかな灯りが浮かぶ、宵闇に埋もれた廊下を走る。消えたミサトを探しながら駆け回っている。
(ごめんねミサト...)
頭の中で謝罪をくべる度に後悔が波立っている。今更遅いが。
風切り音が耳をつぶす中で、ふと何かが聞こえてきた。
「マテェエエエエエエエエ!!!」
まるで背中を追い掛けるように飛んできた声が覆い被さってきた。振り向けば、早すぎて分からないが恐らく人影がこちらに向かって全力疾走してきた。
「イヤァアアッ!!!」
まるでホラー映画だ。と考えてる内に肩を掴まれた。その瞬間に意識が消えそうなくらい、身体の寒気が巡ってきた。
「待ちなさい!私です!数学の立花です!!」
「_____え?」
思いがけない登場人物に違う意味で肝を冷やした。振り向けば丸眼鏡のカーディガン似あう優男(27歳独身)が、息を切らして現れた。
「なにやってんの!!」
「な、なにやってんの?いや私は残業なんですよ...じゃなくてあなたは一体なにをしてるんですか!こんな夜遅い時間に...」
イレギュラーが起きた。この状況を整えたのは私の兄。花の殺人鬼をおびき出すための囮としてこの学校に戻ったのに、誰も犠牲を出さずにしようとしたのに。
思い裏腹で状況を進み、平穏を破る声が響き渡った。
「花を見たいな。」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる