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俺ルール。
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最近夢見の悪い日が増えた。朝起きた段階でイヤーな気持ちになることが増えたように思う。
夢の内容は殆どが朧気だが、「なんか嫌な事があったな」と思うようなタイミングが増えた。気がする。
そんな事を考えるようになったきっかけ。それは恐らくだが、1週間前の出来事だと思っている。
疲れた体を引きずって帰っていた。昼から夜へと世界が突き進むこの狭間の時間で、いつもなら晩飯なんだろうだとか、あの女の子から返事こないかな、だとか考えている筈だった。
だが今頭の中を占有しているのは、目の前に居座る謎だ。
「...」
夕暮れに染まったアスファルトを少し歩いた先に何かがいた。
その何かは道の脇に体育座りしている。ボロッボロの白いTシャツを着て、小さな身体を丸めていた。
「...。」
俺ルールその3「分からないものには近づかない」。自分の人生を平和なものにする為の掟、心の中で決めた鉄則が発動する。
平然を装い、何かの前を横切って進んでいけば特段何も無く通り過ぎた。
「...フゥ」
ため息をつくと、途端に背筋に寒気が通り抜ける。
「______ずっと一緒。」
耳元に囁かれる女の声。さっきまで動かなかった何かが、背後に張り付くイメージが湧く。あまりの怖さに振り向くことができず、走り去った。
大慌てで玄関を開くと暖かな生活感とも言うべき雰囲気が俺を包む。味噌汁の匂いと包丁がまな板を叩く音にテレビから垂れ流される笑い声。
今はそんな当たり前すら耳に届かない。身体を突き動かす恐怖に抗えない。
するといつもとは違う雰囲気にあてられて、母親がおたまを持ったまま廊下にでてきた。
「あらおかえりなさい!...ってどうしたのそんな慌てて。」
「ご、ごめんあとで...」
母親の言葉を超えて階段を登り、目の前に現れた扉を開いて、ベットの下に潜り込む。
布団の温かな暗闇に包まれてなお、不安は消えてくれない。
(何も見てない。おれは。なにもみてない)
暗闇の中に沈ませる意識。そこに言葉が割って入ってくる。
_____ずっと、一緒
身体が硬直していた。気づかぬ間の金縛りに心臓が跳ねる
_____ずーーーーっと。一緒に
先ほどより近づいているのか、声がより大きく聞こえてきて、尚パニックに陥った。
______近くで見てるよ。
今度は声の大きさはそこまで無い。何故なら耳元で囁かれたからだ。
これでやっと分かった。この声に聞き覚えがあったが、やっと脳内の記憶とすり合わせが出来た。この女性の正体は
「おにーちゃん、うなされてたけど大丈夫??」
妹の柔らかい声で瞼を開いた。天井に伸びる朝日、そして高校の制服に着替えた妹の上半身がある。
気付かぬ間に眠りこけていた事、それから夢を見ていないのに夢見が悪い感じを孕んで、また今日も一日が始まった。
夢の内容は殆どが朧気だが、「なんか嫌な事があったな」と思うようなタイミングが増えた。気がする。
そんな事を考えるようになったきっかけ。それは恐らくだが、1週間前の出来事だと思っている。
疲れた体を引きずって帰っていた。昼から夜へと世界が突き進むこの狭間の時間で、いつもなら晩飯なんだろうだとか、あの女の子から返事こないかな、だとか考えている筈だった。
だが今頭の中を占有しているのは、目の前に居座る謎だ。
「...」
夕暮れに染まったアスファルトを少し歩いた先に何かがいた。
その何かは道の脇に体育座りしている。ボロッボロの白いTシャツを着て、小さな身体を丸めていた。
「...。」
俺ルールその3「分からないものには近づかない」。自分の人生を平和なものにする為の掟、心の中で決めた鉄則が発動する。
平然を装い、何かの前を横切って進んでいけば特段何も無く通り過ぎた。
「...フゥ」
ため息をつくと、途端に背筋に寒気が通り抜ける。
「______ずっと一緒。」
耳元に囁かれる女の声。さっきまで動かなかった何かが、背後に張り付くイメージが湧く。あまりの怖さに振り向くことができず、走り去った。
大慌てで玄関を開くと暖かな生活感とも言うべき雰囲気が俺を包む。味噌汁の匂いと包丁がまな板を叩く音にテレビから垂れ流される笑い声。
今はそんな当たり前すら耳に届かない。身体を突き動かす恐怖に抗えない。
するといつもとは違う雰囲気にあてられて、母親がおたまを持ったまま廊下にでてきた。
「あらおかえりなさい!...ってどうしたのそんな慌てて。」
「ご、ごめんあとで...」
母親の言葉を超えて階段を登り、目の前に現れた扉を開いて、ベットの下に潜り込む。
布団の温かな暗闇に包まれてなお、不安は消えてくれない。
(何も見てない。おれは。なにもみてない)
暗闇の中に沈ませる意識。そこに言葉が割って入ってくる。
_____ずっと、一緒
身体が硬直していた。気づかぬ間の金縛りに心臓が跳ねる
_____ずーーーーっと。一緒に
先ほどより近づいているのか、声がより大きく聞こえてきて、尚パニックに陥った。
______近くで見てるよ。
今度は声の大きさはそこまで無い。何故なら耳元で囁かれたからだ。
これでやっと分かった。この声に聞き覚えがあったが、やっと脳内の記憶とすり合わせが出来た。この女性の正体は
「おにーちゃん、うなされてたけど大丈夫??」
妹の柔らかい声で瞼を開いた。天井に伸びる朝日、そして高校の制服に着替えた妹の上半身がある。
気付かぬ間に眠りこけていた事、それから夢を見ていないのに夢見が悪い感じを孕んで、また今日も一日が始まった。
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