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決戦編
苦境の中で煌めいて
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まるで息を吹き替えしたように飛び上がる死体たち。白目を向いて、口を開いたまま、腸を引きずり、死体によっては頭を穿ってもうごいている。
生体的な活動が終わっているにも関わらず、彼らを動かしているのはナノマシンだ。呪い的ななにかでは無い。
戦闘力向上に神経遮断など、肉体随所に行き渡ったナノマシンがさも兵士のように、彼らを弄んでいる。
銃は底をついていたのか、手近な石や木の枝、自分の腕を振り回しながら襲いかかる。
「おらぁッ!」
ドクターは身の丈の倍もある丸太で、彼らを凪払った。宙を舞う兵士たちはまるで猫のような動きで着地する。そしてまた同じようにドクターや、俺、スコープに襲い来る。
「なかなかしつこいな。こっちが体力がすりきれて倒れそうだ。」
「喋ってないで動け!地下には入れさせんな!!」
打ち漏らした三人の兵士がドクターを抜けて、背後の小屋へと入ろうとした。
俺は2つのナイフを両手持ちに変えて、手際よく首を切っていく。頭と体の離れた兵士たちは地面に転がった。
「流石ノーズマン。早いなぁ。」
「ばか野郎。ゾンビじゃねぇんだ、まだ終わらないぜ。」
離れた筈のパーツがひとりでに動き、ナノマシンが接着剤代わりになって引っ付いた。
「うげぇ…悪趣味すぎ。」
小屋の屋上から射撃音がする。弾は捕獲用のネットで、空中で広がって地面で転がる兵士たちに覆い被さる。
「うぅ…たまがあんまりないよぅ…」
「敵は沢山いるけどな。」
「…」
森の影に蠢く、死体たちの群れが地の果てからこちらへと流れていく。
俺は屋上を見た。
「スコープ!この辺りにゴリラはいるか?」
「ドローンで見る限りいないわね。」
「よし!ポップ!あれやるぞ!」
[まじかよ…]
無線の向こうでキーボードを叩く音が聞こえる。
「もうすぐポッドがここに打ち込まれる。十秒以内に入れよ。」
「どうするの?」
「時間がねぇ。いいからやるぞ!」
そんな事を言ってる間に、海の向こうで大砲の音が轟いた。
屋上に登っていたスコープが慌てて飛び降りた。
「バカ!説明しなさいよ!」
すると丸いボールが小屋に飛び込んだ。衝撃は凄まじく、一瞬にして小屋が弾けて木片に変わる。四散するゴミが乾いた音を立てて転がった。
「いくぞみんな!早くのれ!」
ドクターとスコープが乗り込んだ時、また砲撃が轟いた。今度は間を置いて三回。窮屈なスペースに身体をねじ込んで、ハッチを閉めた。
魂のない亡者がモノたちを、森の中で襲いかかる。武装ゴリラに猿、トラは各々のフィジカルを活かして、彼らを倒していく。
「くそ!はなせ!」
ペンタの背中に馬乗りになっていた兵士を、モノが引き剥がして投げ飛ばした。
「大丈夫か?」
「あ、ああ。まだ続くのか。」
「わからんが終わるまで続けるしかない。」
荒れ狂う戦いの中でモノは見た。異種間共同体。妻が夢に見た、多様性を尊重し協力しあう光景。苦しみ中でもその光景に嬉しさを感じていた。
「なんだ?」
そんなことも束の間、異変が起きた。
突如として糸が切れたように死体の兵士たちが一斉に倒れる。
「お、おお。動きが止まった。」
「なんだ…終わったのか。」
唐突の出来事で困惑していると、今度は地面が微かに揺れて砲撃音が轟いた。消えていく音につられて漂う焦げた木と土の匂い。
「親父!」
「ああ、小屋に向かおう。何かあったようだ。」
生体的な活動が終わっているにも関わらず、彼らを動かしているのはナノマシンだ。呪い的ななにかでは無い。
戦闘力向上に神経遮断など、肉体随所に行き渡ったナノマシンがさも兵士のように、彼らを弄んでいる。
銃は底をついていたのか、手近な石や木の枝、自分の腕を振り回しながら襲いかかる。
「おらぁッ!」
ドクターは身の丈の倍もある丸太で、彼らを凪払った。宙を舞う兵士たちはまるで猫のような動きで着地する。そしてまた同じようにドクターや、俺、スコープに襲い来る。
「なかなかしつこいな。こっちが体力がすりきれて倒れそうだ。」
「喋ってないで動け!地下には入れさせんな!!」
打ち漏らした三人の兵士がドクターを抜けて、背後の小屋へと入ろうとした。
俺は2つのナイフを両手持ちに変えて、手際よく首を切っていく。頭と体の離れた兵士たちは地面に転がった。
「流石ノーズマン。早いなぁ。」
「ばか野郎。ゾンビじゃねぇんだ、まだ終わらないぜ。」
離れた筈のパーツがひとりでに動き、ナノマシンが接着剤代わりになって引っ付いた。
「うげぇ…悪趣味すぎ。」
小屋の屋上から射撃音がする。弾は捕獲用のネットで、空中で広がって地面で転がる兵士たちに覆い被さる。
「うぅ…たまがあんまりないよぅ…」
「敵は沢山いるけどな。」
「…」
森の影に蠢く、死体たちの群れが地の果てからこちらへと流れていく。
俺は屋上を見た。
「スコープ!この辺りにゴリラはいるか?」
「ドローンで見る限りいないわね。」
「よし!ポップ!あれやるぞ!」
[まじかよ…]
無線の向こうでキーボードを叩く音が聞こえる。
「もうすぐポッドがここに打ち込まれる。十秒以内に入れよ。」
「どうするの?」
「時間がねぇ。いいからやるぞ!」
そんな事を言ってる間に、海の向こうで大砲の音が轟いた。
屋上に登っていたスコープが慌てて飛び降りた。
「バカ!説明しなさいよ!」
すると丸いボールが小屋に飛び込んだ。衝撃は凄まじく、一瞬にして小屋が弾けて木片に変わる。四散するゴミが乾いた音を立てて転がった。
「いくぞみんな!早くのれ!」
ドクターとスコープが乗り込んだ時、また砲撃が轟いた。今度は間を置いて三回。窮屈なスペースに身体をねじ込んで、ハッチを閉めた。
魂のない亡者がモノたちを、森の中で襲いかかる。武装ゴリラに猿、トラは各々のフィジカルを活かして、彼らを倒していく。
「くそ!はなせ!」
ペンタの背中に馬乗りになっていた兵士を、モノが引き剥がして投げ飛ばした。
「大丈夫か?」
「あ、ああ。まだ続くのか。」
「わからんが終わるまで続けるしかない。」
荒れ狂う戦いの中でモノは見た。異種間共同体。妻が夢に見た、多様性を尊重し協力しあう光景。苦しみ中でもその光景に嬉しさを感じていた。
「なんだ?」
そんなことも束の間、異変が起きた。
突如として糸が切れたように死体の兵士たちが一斉に倒れる。
「お、おお。動きが止まった。」
「なんだ…終わったのか。」
唐突の出来事で困惑していると、今度は地面が微かに揺れて砲撃音が轟いた。消えていく音につられて漂う焦げた木と土の匂い。
「親父!」
「ああ、小屋に向かおう。何かあったようだ。」
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