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誕生編
友人の家でアフタヌーンティー
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ポップがドアから現れる。
「帰ってたんだな。」
「…まぁな。」
俺はソファの上で横になり、瓶ビールを呑んでいた。天井を寡黙に見つめて足を組んでいる。頭から足の先まで駆け巡る熱くて苦い苛立ちが、態度に出ているのは自覚している 。
それを見かねても、ポップは俺の怒りを図るために軽い言葉のジャブを打ってきた。
「殺しの現場に出くわしたそうじゃないか。」
「そうだ。メアリーが殺られた。」
「いい人だったよ。クッキーが旨くてさ。なにより、シチューの作り方が凝ってたよな。ほらあのママ直伝の」
「…なぁ、ポップ。」
「いややめとけ、私情で仕事を請け負うな。今回みたいなデカイ山の時は特にな。」
メアリーはこの街にきてから親身にしてくれた恩人だ。頻繁にいなくなる三毛猫を探してやったり、買い物に付き添ってやったり、甲斐甲斐しくタダで世話をしていた。そして今日、お別れを言った後に、殺されてしまった。
心中お察ししているし、弔い合戦がしたいのもわかってくれた。だがポップは色々な情報を持って多角的に考え、それで尚渡るべき橋ではないと判断したのだ。
「朝言ってた事と違うじゃねぇか。」
「総合的見解って奴だよ。お前を襲った殺し屋スマイリー。元々日本で捕まっていたが、いきなり姿を消して、リッカーマンに入った。そして今日の事件。わかるか?この一連の流れはお前を狙う為のお膳立てだ。」
あからさまな俺への攻撃。局所的、個人的な意図を感じたポップはこの話から降りて、遠い所に逃げるつもりなのだ。
「ノーズマン、お前は一体何に巻き込まれてるんだよ。」
「お前が知らない事。」
するとノックが部屋に響く。
「誰だこんな時間に、トーマスかな。」
「嫁さんから逃げてきたんだろ…昼間に呑んでるのを見た。」
「またかよ。」
ドアノブに手をかけようとしたその時だった。ひとりでにドアノブが回った。だが鍵は閉まっているので開きはしない。だから外にいる奴は荒々しく、力強くドアを叩く。
「なんなんだよ…」
「ポップ!離れろ!」
重い球体が落ちる音がノーズマンには聞こえた。
直後にドアは壁ごと崩壊する。耳に響く爆音と共に砕け散る壁とドア。その勢いで飛ばされた大きな破片と爆風がポップにぶつかって飛ばされた。俺は横になっていたソファの影に隠れて、クッションの隙間に隠したリボルバーを抜き取った。
煙が立ち込める部屋に人影が現れる。
「ノーズマン…いるんだろ?」
「誰だ。」
煙から脱け出してきた、赤い髑髏。黒いフードを深く被った男がいた。
「マスターか。」
「ひさしぶりだな。会いたかったぜ。」
「じゃあ用は済んだな。」
何処かに隠れていたポップはショットガンの引き金を引く。すると音と勢いが炸裂した。銃弾は煙を払いのけ、赤い髑髏を被った男に直撃する。勢いは止めどなく、玄関から外に弾き出された。
ポップがショットガンの銃口から垂れる煙を嗅いだ。
「実力主義万歳。」
「逃げるぞ、あんなんじゃ死にゃしない。」
「あんな近距離から撃ち込んだんだぞ。よほどの防弾ベストじゃないい限りチーズになって…」
転がっていった先の瓦礫の山が動いた。影のなか、しっかりと聞こえる呻き声に身の毛がよだつ。
「まじかよ。」
「いいからいくぞ!」
ベランダに出て非常階段を降りる。行く当てなどない、一先ず二人は場を離れた。
「帰ってたんだな。」
「…まぁな。」
俺はソファの上で横になり、瓶ビールを呑んでいた。天井を寡黙に見つめて足を組んでいる。頭から足の先まで駆け巡る熱くて苦い苛立ちが、態度に出ているのは自覚している 。
それを見かねても、ポップは俺の怒りを図るために軽い言葉のジャブを打ってきた。
「殺しの現場に出くわしたそうじゃないか。」
「そうだ。メアリーが殺られた。」
「いい人だったよ。クッキーが旨くてさ。なにより、シチューの作り方が凝ってたよな。ほらあのママ直伝の」
「…なぁ、ポップ。」
「いややめとけ、私情で仕事を請け負うな。今回みたいなデカイ山の時は特にな。」
メアリーはこの街にきてから親身にしてくれた恩人だ。頻繁にいなくなる三毛猫を探してやったり、買い物に付き添ってやったり、甲斐甲斐しくタダで世話をしていた。そして今日、お別れを言った後に、殺されてしまった。
心中お察ししているし、弔い合戦がしたいのもわかってくれた。だがポップは色々な情報を持って多角的に考え、それで尚渡るべき橋ではないと判断したのだ。
「朝言ってた事と違うじゃねぇか。」
「総合的見解って奴だよ。お前を襲った殺し屋スマイリー。元々日本で捕まっていたが、いきなり姿を消して、リッカーマンに入った。そして今日の事件。わかるか?この一連の流れはお前を狙う為のお膳立てだ。」
あからさまな俺への攻撃。局所的、個人的な意図を感じたポップはこの話から降りて、遠い所に逃げるつもりなのだ。
「ノーズマン、お前は一体何に巻き込まれてるんだよ。」
「お前が知らない事。」
するとノックが部屋に響く。
「誰だこんな時間に、トーマスかな。」
「嫁さんから逃げてきたんだろ…昼間に呑んでるのを見た。」
「またかよ。」
ドアノブに手をかけようとしたその時だった。ひとりでにドアノブが回った。だが鍵は閉まっているので開きはしない。だから外にいる奴は荒々しく、力強くドアを叩く。
「なんなんだよ…」
「ポップ!離れろ!」
重い球体が落ちる音がノーズマンには聞こえた。
直後にドアは壁ごと崩壊する。耳に響く爆音と共に砕け散る壁とドア。その勢いで飛ばされた大きな破片と爆風がポップにぶつかって飛ばされた。俺は横になっていたソファの影に隠れて、クッションの隙間に隠したリボルバーを抜き取った。
煙が立ち込める部屋に人影が現れる。
「ノーズマン…いるんだろ?」
「誰だ。」
煙から脱け出してきた、赤い髑髏。黒いフードを深く被った男がいた。
「マスターか。」
「ひさしぶりだな。会いたかったぜ。」
「じゃあ用は済んだな。」
何処かに隠れていたポップはショットガンの引き金を引く。すると音と勢いが炸裂した。銃弾は煙を払いのけ、赤い髑髏を被った男に直撃する。勢いは止めどなく、玄関から外に弾き出された。
ポップがショットガンの銃口から垂れる煙を嗅いだ。
「実力主義万歳。」
「逃げるぞ、あんなんじゃ死にゃしない。」
「あんな近距離から撃ち込んだんだぞ。よほどの防弾ベストじゃないい限りチーズになって…」
転がっていった先の瓦礫の山が動いた。影のなか、しっかりと聞こえる呻き声に身の毛がよだつ。
「まじかよ。」
「いいからいくぞ!」
ベランダに出て非常階段を降りる。行く当てなどない、一先ず二人は場を離れた。
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