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探求編
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円卓を4人の人間と一頭のゴリラが囲んでいる。椅子に座り、俺の経緯を皆が聞いている。因みにニートという事は隠している。
「それで昨日の出来事だ。頭こんがらがりそうだよ。」
「すごいよな。喋るゴリラと英語を書ける霊長類たち。まるでB級映画だ。」
机に足をのせてタバコを吹かすユーリスダグラスさんに、モノは眉間に皺を寄せてバナナの皮を投げつけた。見事に顔にヒット。皮が滑り落ちて現れたのは怒り顔だ。
「んだよクソゴリラ!」
「マナーがなってないぞ。」
「ボス…ゴリラにマナーを指摘されてる…」
身体の大きなドクターと呼ばれていた人がガスマスク越しにユーリスさんを一瞥し、少し引いていた。
ユーリスさんはタバコを靴の裏に押し当てて、吸い殻をそこらに捨てた。
「…まぁいい。それで今からは俺たちの事を話す。」
どこからかタブレットを取り出し、円卓の上に置いた。すると触らずに勝手に起動して、三角のロゴが現れる。底辺にはバイオコープという文字が現れた。
「大輔はバイオコープって知ってるか?」
「うん。生体技術を開発してたり、先進医療技術を研究してる会社だよね。」
「お題目はな。」
「僕たちはそこの私設武装部隊なんだ。」
剽軽というか、それこそB級映画に出てきそうな単語だ。
「バイオコープ社の創立時のキラータイトルは脳医学。脳ミソ全般の機能を再生する技術を研究し、一度は世間にも特効薬が広まった。」
「ブレインだよね。脳の再生を促す。でも副作用があって販売禁止になったって。」
「そうだ。俺たちドーベルマンはその被験者で、元軍経験者で構成されている。ドクターなんて元軍にはいってたんだけど、事故に合ってね。」
ドクターが割ってはいり、おもむろにガスマスクを外そうとした。それを見てユーリスさんはため息をつく。
「…いいのか?」
「うん。どれだけの事に巻き込まれているのか、体験するべきだ。」
そう言ってマスクを外した。
顔は重度の火傷をおったのか、ひどく爛れている。眉毛や髪の毛などの体毛はすべてなくなっている。それらが眼中になくなるほどの特徴的な部分があった。
顔の四分の一、右目から頭頂部にかけて、肉が抉れていた。もっといえば無くなっている。だが、その皮膚や目玉だけが無くなっていて、立派な脳ミソが丸出しになっている。その立地もおかしいが、色が青白くなっていた。
「これが君らの言う再生医療だ。だが再生する事の代償に、脳が刺激を受ける度にフラッシュバックするようになってしまう。」
ドクターはマスクをはめ直した。
「このマスクがなければ、僕は生きていけない。フラッシュバックに溺れて生活ができなくなっちゃうんだよね。」
自己の崩壊、認識力の低下。ニュースで聞いた通りの事を言っているのだろう。ただ、俺の知らない裏の世界でこんなことがおきてると想像はしても実感がなかった。
呆気にとられてる僕たちを見て、話を続けた。
「だが研究の課程で色んな副産物が生まれた。それらを更に深掘りしてできたのが脳ミソの「強化」と「付加」だ。俺らはそれのモルモットなんだ。開発に成功すれば、晴れて部隊配属、オメデトーって感じ。」
恨めしそうな表情を浮かべるユーリスは気にしていない振りを装いながら話を続ける。
「昔は色んな奴がいたけど、今は人数が減った…」
「好きな人でもいたの?」
お母さんが空気を変えようとしたのか、単に気になったのか話をふった。
「忘れたよ。いたかもな。」
「…薄情もの。」
「うるせぇ!!男心をわかりやがれ!」
やいのやいのと喧嘩しだした。それを見かねてモノは大袈裟に咳払いをした。
「それで!私たちを集めた理由はなんだ。」
「あ、あぁ。ええと…………なんだったっけ」
「ボス、フェーズだよフェーズ」
ドーベルマンが作戦行動にあたる場合。3つの工程があるそうだ。
フェーズ1で作戦行動し、失敗すればフェーズ2にあがりフェーズ3が最終工程になる。
「俺たちがフェーズ1。六時間以内の焼土作成決行だ。これは失敗したからフェーズ2に繰り上げる。」
「何がおこるの?」
「調査だ。めんどくさい奴が来るだろうな。」
暗闇の中で腕時計の画面が青白く光り、タイマーが鳴り響いた。事ついで扉が開く。そこにはボブショートが似合う呆気ない顔の少女が無表情で立っていた。
「マスター。時間です。」
「ああ。ありがとう。」
そこはカーゴの中のようだった。いくつかの武器収納ボックスとお菓子のゴミが散乱している。
「ユーリスは未だに片付けができないのか。」
スコープに片付けを頼んで奥に進む。狭い廊下の角を曲がり、通信室に入る。机と椅子を置いておくためだけのスペースで窮屈だが、文句を言っても仕方ないのでそこに座る。
なれた手付きでパスワードを打ち込むと、いきなりビデオ通話が始まった。
画面には禿げ上がり太った老人、阿久津光太郎が座っていた。
「フェーズ2だ。」
「挨拶もなしか、親友に無礼じゃないか?」
お互い憎まれ口を言い合う仲だ。阿久津は口元を曲げて笑った。
「ぬかせ」
「まぁいいさ。…ジョナサンダグラスの忘れ形見か。どうする気だ。」
「奪え。すべてを奪うための下ごしらえだ。首尾よく頼む。」
短時間な通話が切れる。気乗りはしないが、愛弟子にあえるのは良いことだ。
私は席をたって武器庫にむかった。
この島を蹂躙するための準備をするために。
「それで昨日の出来事だ。頭こんがらがりそうだよ。」
「すごいよな。喋るゴリラと英語を書ける霊長類たち。まるでB級映画だ。」
机に足をのせてタバコを吹かすユーリスダグラスさんに、モノは眉間に皺を寄せてバナナの皮を投げつけた。見事に顔にヒット。皮が滑り落ちて現れたのは怒り顔だ。
「んだよクソゴリラ!」
「マナーがなってないぞ。」
「ボス…ゴリラにマナーを指摘されてる…」
身体の大きなドクターと呼ばれていた人がガスマスク越しにユーリスさんを一瞥し、少し引いていた。
ユーリスさんはタバコを靴の裏に押し当てて、吸い殻をそこらに捨てた。
「…まぁいい。それで今からは俺たちの事を話す。」
どこからかタブレットを取り出し、円卓の上に置いた。すると触らずに勝手に起動して、三角のロゴが現れる。底辺にはバイオコープという文字が現れた。
「大輔はバイオコープって知ってるか?」
「うん。生体技術を開発してたり、先進医療技術を研究してる会社だよね。」
「お題目はな。」
「僕たちはそこの私設武装部隊なんだ。」
剽軽というか、それこそB級映画に出てきそうな単語だ。
「バイオコープ社の創立時のキラータイトルは脳医学。脳ミソ全般の機能を再生する技術を研究し、一度は世間にも特効薬が広まった。」
「ブレインだよね。脳の再生を促す。でも副作用があって販売禁止になったって。」
「そうだ。俺たちドーベルマンはその被験者で、元軍経験者で構成されている。ドクターなんて元軍にはいってたんだけど、事故に合ってね。」
ドクターが割ってはいり、おもむろにガスマスクを外そうとした。それを見てユーリスさんはため息をつく。
「…いいのか?」
「うん。どれだけの事に巻き込まれているのか、体験するべきだ。」
そう言ってマスクを外した。
顔は重度の火傷をおったのか、ひどく爛れている。眉毛や髪の毛などの体毛はすべてなくなっている。それらが眼中になくなるほどの特徴的な部分があった。
顔の四分の一、右目から頭頂部にかけて、肉が抉れていた。もっといえば無くなっている。だが、その皮膚や目玉だけが無くなっていて、立派な脳ミソが丸出しになっている。その立地もおかしいが、色が青白くなっていた。
「これが君らの言う再生医療だ。だが再生する事の代償に、脳が刺激を受ける度にフラッシュバックするようになってしまう。」
ドクターはマスクをはめ直した。
「このマスクがなければ、僕は生きていけない。フラッシュバックに溺れて生活ができなくなっちゃうんだよね。」
自己の崩壊、認識力の低下。ニュースで聞いた通りの事を言っているのだろう。ただ、俺の知らない裏の世界でこんなことがおきてると想像はしても実感がなかった。
呆気にとられてる僕たちを見て、話を続けた。
「だが研究の課程で色んな副産物が生まれた。それらを更に深掘りしてできたのが脳ミソの「強化」と「付加」だ。俺らはそれのモルモットなんだ。開発に成功すれば、晴れて部隊配属、オメデトーって感じ。」
恨めしそうな表情を浮かべるユーリスは気にしていない振りを装いながら話を続ける。
「昔は色んな奴がいたけど、今は人数が減った…」
「好きな人でもいたの?」
お母さんが空気を変えようとしたのか、単に気になったのか話をふった。
「忘れたよ。いたかもな。」
「…薄情もの。」
「うるせぇ!!男心をわかりやがれ!」
やいのやいのと喧嘩しだした。それを見かねてモノは大袈裟に咳払いをした。
「それで!私たちを集めた理由はなんだ。」
「あ、あぁ。ええと…………なんだったっけ」
「ボス、フェーズだよフェーズ」
ドーベルマンが作戦行動にあたる場合。3つの工程があるそうだ。
フェーズ1で作戦行動し、失敗すればフェーズ2にあがりフェーズ3が最終工程になる。
「俺たちがフェーズ1。六時間以内の焼土作成決行だ。これは失敗したからフェーズ2に繰り上げる。」
「何がおこるの?」
「調査だ。めんどくさい奴が来るだろうな。」
暗闇の中で腕時計の画面が青白く光り、タイマーが鳴り響いた。事ついで扉が開く。そこにはボブショートが似合う呆気ない顔の少女が無表情で立っていた。
「マスター。時間です。」
「ああ。ありがとう。」
そこはカーゴの中のようだった。いくつかの武器収納ボックスとお菓子のゴミが散乱している。
「ユーリスは未だに片付けができないのか。」
スコープに片付けを頼んで奥に進む。狭い廊下の角を曲がり、通信室に入る。机と椅子を置いておくためだけのスペースで窮屈だが、文句を言っても仕方ないのでそこに座る。
なれた手付きでパスワードを打ち込むと、いきなりビデオ通話が始まった。
画面には禿げ上がり太った老人、阿久津光太郎が座っていた。
「フェーズ2だ。」
「挨拶もなしか、親友に無礼じゃないか?」
お互い憎まれ口を言い合う仲だ。阿久津は口元を曲げて笑った。
「ぬかせ」
「まぁいいさ。…ジョナサンダグラスの忘れ形見か。どうする気だ。」
「奪え。すべてを奪うための下ごしらえだ。首尾よく頼む。」
短時間な通話が切れる。気乗りはしないが、愛弟子にあえるのは良いことだ。
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この島を蹂躙するための準備をするために。
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