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1 企業勤めを目指そう!(アットホームな職場)

たぬきのぽんぽこ意趣返し

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    茶髪からかき分けて生えているのは、たぬき特有のまる耳。この子は狸族の少女であるポコは、ベットの上で朝日を浴びながら眠っている。

    安らかで寝息も静か。細くて白い手首を握り、脈を取ってみても正常値。あの日から1ヶ月 は経っているが、ポコは寝たきりになっていた。

「やはり、問題はお前にありそうだな。」

    ゴリラには似合わない白衣を着て、モノはトレイに載せた白いお粥をマサヨシに渡した。

「契約魔法の特攻が効かないのは、俺の魔力パスが上手くいってない、だっけか。」
「そうだ。ミコチの時もそうだったんだろう?」

    ミコチと初めて契約を交わした時は、不利な状況を覆した。だかポコの状態を比較するとどうにも腑に落ちない点が多い。というか効果が薄れているように見て取れた。

「心身健康。邪念が魔力パスの阻害があると思うのが妥当だな。」
「だけどどうすりゃい____」
「訓練だっ!!!!!!」

   モノのつぶらで大きな目が光っていた。真っ黒い眼光にはマサヨシの顔が反射していて、何故か見入ってしまった。

「____訓練だッ!!」
「いや聞こえてるよ。戸惑っただけだ。」

  








  







    マサヨシ達が住む一戸建ての家は、森林の中央に位置している。
未開拓の森「隠れ森」は、中央に向かえば向かうほど、生態系がかなり荒れ、強者が縄張りを持つ。付近の街に行こうとするならば、低級冒険者ならばまず出る事はできないだろう。
    それゆえに人に知れ渡ることも無く、生き物たちが強者をうみ続ける環境にある。これが隠れ森の実態である。



   今まさに食物連鎖に組み込まれそうなマサヨシは、何も持たないまま猿と対峙していた。

「ウキキ...」
「なんだこいつ...」

    森林の少し開けた場所で放置されたマサヨシの目の前に、一匹の猿が木の枝を握り潰して睨んでいた。
    どこからどう見てもただの小柄な猿。だが猿の持つ雰囲気は只者ではない。その眼光は潰さにマサヨシの動きを抑え、何かあると思わせるその強さを感じていた。

「....くそ。安請け合いするんじゃなかった。」

   今更後悔しても仕方がないのは分かっていた。あのゴリラと呼んでいいのかもわからないモノの万円の笑み。きっと何かしらを達成しないと帰れないのは明白だ。
   マサヨシは右手を前に、左手をその少し後ろに配置し握り拳を作る。呼吸を落ち着け、息を吐くと同時に腰を落とす。足は肩幅よりやや広め。これはマサヨシが自衛官時代に先輩から習った構えだ。

「____やってやるッ!!!」

   気迫が締まる。体の緩んでいる部分などなく、一気に筋肉を緊張させ、身体を流れの1つに組み込んでいく。脚で強く地面を踏みしめて眼光を滾らせる。

    無防備だった人間が構えを取った。これにより猿の中の勢力図が変わり、猿もその気迫をより一層強くした。

「ウキャッ!!!」

    先手は猿。その手に握っていた木の枝を投げつけるという原始的な攻撃に、マサヨシは短絡的な考えを起こす。

「やっぱ猿知恵か。こんなも_______」

   甘い。考えが甘い。この世界では魔法が土や水、血と肉と同じくらい身近な存在。ならば人間以外も使えて当然なのだ。
  
    踏みしめていた足、地面に接地していた母指球を捻って動力から筋力、筋力から破壊力へと進化する。その段階でマサヨシは気づいた。猿が笑ってこちらを見ている事に。

「ウキャ!」

    いきなり突風が煙を乗せて吹き荒れた。猿とマサヨシを中心とした暴風が周囲の景観を曇らせて、それを突き破る何かは大木に激突して止まる。

「くそがよぉ...」

   それはマサヨシだった。木の皮を削って背中をめり込ませて身動きが取れずにいる。
    前方の煙が赤く見えているのは、自分が流す血の色。額に熱くて敏感な痛みは裂傷を、その後ろをついてくる鈍痛は打撲を感じさせた。

「本当にギリギリだった、ギリ間に合ってこれは...。」

    マサヨシは自分に与えられたスキルを研究していた。だから爆発の直撃を免れたのだ。

    猿が投げつけた木のクズの先頭を転移、すぐさまマサヨシに向かって来る木クズたちに向けて射出。これにより相打ちになって地に落ちるはずだったが、何故か大爆発という結果になった。
 
(能力の対象は俺と対面する物体なのか...その後ろにいるやつまでは貫通しないんだな。クソッ、気をつけよう。)

     対応が分かったとはいえ、やはり最大の難敵は猿。木の根に居座り笑いながらマサヨシを見ているコイツは、どんな魔法が使えるというのか。

    猿はまだまだ有り余る木のクズを拾って、マサヨシに投げ続ける。
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