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第二章 人間の国

第41話 力の証明

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ゴーザその男を相手に実力ちからを証明してみせるだと……」


 驚きの表情で呟く、スミス。そして、依然として鼻血を垂らしたままのゴーザは憤りを顕にした。

「き、貴様……! 王国騎士団の俺にこんな事をして、只で済むと思うなよ!」

 そう言いながら、ゴーザは立ち上がり腰の剣を構える。その様子を見ていたスミスが、俺に向かって声をかけた。

「坊主……悪い事は言わねえ。サッサと詫び入れてこの場から逃げろ! 幾らそいつが下衆野郎とは言え、腐っても王国の騎士だ。並の人間じゃねえ」

 王国の騎士団と言えば、最低でも戦闘系の一般能力ノーマルスキルを一つや二つは持つと言う。師団長クラスなら、それがレベル『ニ』でも不思議では無い。確かに、幾ら魔力は低いとは言え、一般的な強さからすれば、俺の様なガキが相手になるとは思えないのかも知れない。しかし……

「心配いりませんよ。俺もでは無いんです。それよりさっきの話……」

 俺は、淡々とスミスに答えながら、先程の件について確認した。勿論、『魔法剣』を打ってもらう約束の事だ。それに対し、スミスはとにかく慌てながら答える。

「ああ! わかってるよ! 本当にゴーザそいつを倒せたら幾らでも剣を打ってやる。だが、そんな事は命あっての物種だ。普通の魔法剣なら用意してやるから、とにかく今は逃げろ!」

 まるで俺の話には取り合わず、とにかく逃げろと薦めてくる、スミス。見た目の割に、案外優しい男なのかも知れない。俺は、そんなスミスに告げた。

「約束しましたよ? さて、そうと決まればサッサと片付けますか……ヒビとアスカ俺の連れに下衆な事をしようとした罪も償って貰わないといけないしね……」

 ガキだと舐めていた俺に見下した扱いを受け、更に顔を真っ赤にするゴーザ。その後ろでは、彼の部下達も剣を抜いて構え始めた。

「ガキが……謝っても、もう遅いからな! 黙って女を差し出していれば良かった物を……大人を舐めたらどう言う目にあうか教えてやる!」

「へっへっへっ……団長、女には傷を付けないで下さいよ?」

 側にいた部下の一人が、ゴーザと同じ様に下品な笑いを浮かべる。なるほど。騎士団と言うのは、相当腐った連中らしい。まあ、この師団だけなのかも知れないけど。

「良かったよ、騎士団あんた等が下衆野郎で。お陰で、何の遠慮もしないで良さそうだ」

 言いながら、固有能力ユニークスキルを発動させる。

「──『不意討ちサプライズストライク』!!」

 薄い紅に染まる、視界。

「なっ!?」

 一瞬で俺を見失い、キョロキョロと周りを見渡し出すゴーザ。後ろの部下達も同様だ。勿論、スミスも俺を見失っている。

 俺は、ゴーザの後ろに回り込むと素早く腰の短剣を抜いた。そして、奴の喉元に刃を当て、首筋の薄皮を一枚切る。

「──うっ!」

 薄っすらと付いた、一筋の切傷からダラダラと血が流れ出すのを見て、俺は他の部下達も同じ様に切りつけた。まるで、『いつでも首を掻き切れる』と、わざとゴーザ達にわからせる様に。

 突然、ボタボタと流れ落ち始めた自分達の血に気付き、慌てふためき、混乱に落ち入るゴーザ達。恐怖にその顔を引きつらせ、何が起きたのかすら理解出来ないでいる。しかし、そんな中、その様子を冷静に見極めようとする男がいた。


「──まさか、固有能力ユニークスキル……?」

 そう。スミスだ。
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