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第二章 人間の国
第38話 魔法剣
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──魔法剣。
武器屋の親父から、手に入れた情報。それは、俺のこれからの旅にとって必要不可欠な物だった。
ビビの話を聞いて気付いた事。それは、今後、魔法が通じない相手が現れるかも知れないと言うビビの懸念と同じ様に、物理的な攻撃が効かない相手もまた、存在するかも知れないと言う可能性だ。
そんな事を考えている時に聞いた、『魔法剣』の話。武器屋の情報によると、この世界に数本だけ存在すると言うその剣は、魔法の能力を剣に付与させる事が出来るらしい。いずれ習得したいとは考えている物の、俺にはまだ魔法は使えない。まさに、今の俺にとってはうってつけの武器だった。
「噂通りの変わり者みたいだな……」
思わず呟いた。タストの町から一時間程の郊外。人里から少し離れたこの場所に、目当ての人物……この世界で唯一、その魔法剣を打つ事が出来ると言う人間、鍛冶屋のスミスが暮らしている。何でも、ずっとここに一人で暮らしているそうだ。武器屋の話では、人間嫌いの中々気難しい人物との事なのだが。
俺達がポツンと一軒だけ建つ、その建物の前に差し掛かろうとしたその時──。
「──うるせえ! とっとと出ていきやがれ!」
怒号と共に、数人の身なりの良い騎士風の男達が飛び出して来た。
「き、貴様! 後悔させてやるからな!」
威勢のいい捨て台詞とは裏腹に、一目散に逃げて行く男達。俺は、その男達が去った後に現れた、筋骨隆々の男に目を向けた。
丸太の様な腕に、伸びきった黒い髪と黒い髭。その容貌は、まるで山賊だ。その男は俺達に気が付くと、ギロリと大きな目を剝いて睨み付けて来た。
「何だ、お前等。まさか、お前等も『魔法剣』が目当てじゃねぇだろうな?」
ぶっきらぼうに、そう吐き捨てる髭面の男。どうやら、この男が鍛冶屋のスミスらしい。俺は、改めてスミスに向き直り話しかけた。
「そのまさかです。俺は、冒険者をしているクロスと言います。そして、この二人は俺の仲間……アスカとビビです」
俺が名乗ると、スミスは俺達を訝しそうな目で舐める様に見回した。そして、品定めを終えたのか、スミスが口を開く。
「お前等みたいなガキが冒険者だと? ふざけるのも大概にしやがれ! ここは、ガキが遊びに来る様な場所じゃねえ!」
そう怒鳴り、スミスは踵を返して建物に戻ろうとする。俺は、そんなスミスを引き止めた。
「待って下さい! 俺達も遊びで来た訳じゃありません。それに、こう見えても俺達はBランクの冒険者ですよ」
俺の言葉に、ピクリと反応したスミスが足を止める。どうやら、話くらいは聞いて貰えそうだ。俺は、追い打ちをかける様に畳み掛けた。
「話だけでも聞いて貰えませんか? 俺には、貴方の打つ剣が必要なんです。それも、今迄に無い様な新しい魔法剣が」
眉間に深い縦皺が入り、スミスは目を細めた。
「これ迄に無い様な新しい魔法剣だと……?」
──かかった。
どうやら、上手くスミスの興味を引けたらしい。『これ迄に無い』と言う言葉に、職人としてのプライドを刺激されたのだろう。狙う通りだ。だが、事実、俺がイメージしている魔法剣は言葉通り。話に聞いている様な物とは違う、新たな魔法剣だ。俺は、それを打たせるために、わざわざここ迄やって来たのだから……。
武器屋の親父から、手に入れた情報。それは、俺のこれからの旅にとって必要不可欠な物だった。
ビビの話を聞いて気付いた事。それは、今後、魔法が通じない相手が現れるかも知れないと言うビビの懸念と同じ様に、物理的な攻撃が効かない相手もまた、存在するかも知れないと言う可能性だ。
そんな事を考えている時に聞いた、『魔法剣』の話。武器屋の情報によると、この世界に数本だけ存在すると言うその剣は、魔法の能力を剣に付与させる事が出来るらしい。いずれ習得したいとは考えている物の、俺にはまだ魔法は使えない。まさに、今の俺にとってはうってつけの武器だった。
「噂通りの変わり者みたいだな……」
思わず呟いた。タストの町から一時間程の郊外。人里から少し離れたこの場所に、目当ての人物……この世界で唯一、その魔法剣を打つ事が出来ると言う人間、鍛冶屋のスミスが暮らしている。何でも、ずっとここに一人で暮らしているそうだ。武器屋の話では、人間嫌いの中々気難しい人物との事なのだが。
俺達がポツンと一軒だけ建つ、その建物の前に差し掛かろうとしたその時──。
「──うるせえ! とっとと出ていきやがれ!」
怒号と共に、数人の身なりの良い騎士風の男達が飛び出して来た。
「き、貴様! 後悔させてやるからな!」
威勢のいい捨て台詞とは裏腹に、一目散に逃げて行く男達。俺は、その男達が去った後に現れた、筋骨隆々の男に目を向けた。
丸太の様な腕に、伸びきった黒い髪と黒い髭。その容貌は、まるで山賊だ。その男は俺達に気が付くと、ギロリと大きな目を剝いて睨み付けて来た。
「何だ、お前等。まさか、お前等も『魔法剣』が目当てじゃねぇだろうな?」
ぶっきらぼうに、そう吐き捨てる髭面の男。どうやら、この男が鍛冶屋のスミスらしい。俺は、改めてスミスに向き直り話しかけた。
「そのまさかです。俺は、冒険者をしているクロスと言います。そして、この二人は俺の仲間……アスカとビビです」
俺が名乗ると、スミスは俺達を訝しそうな目で舐める様に見回した。そして、品定めを終えたのか、スミスが口を開く。
「お前等みたいなガキが冒険者だと? ふざけるのも大概にしやがれ! ここは、ガキが遊びに来る様な場所じゃねえ!」
そう怒鳴り、スミスは踵を返して建物に戻ろうとする。俺は、そんなスミスを引き止めた。
「待って下さい! 俺達も遊びで来た訳じゃありません。それに、こう見えても俺達はBランクの冒険者ですよ」
俺の言葉に、ピクリと反応したスミスが足を止める。どうやら、話くらいは聞いて貰えそうだ。俺は、追い打ちをかける様に畳み掛けた。
「話だけでも聞いて貰えませんか? 俺には、貴方の打つ剣が必要なんです。それも、今迄に無い様な新しい魔法剣が」
眉間に深い縦皺が入り、スミスは目を細めた。
「これ迄に無い様な新しい魔法剣だと……?」
──かかった。
どうやら、上手くスミスの興味を引けたらしい。『これ迄に無い』と言う言葉に、職人としてのプライドを刺激されたのだろう。狙う通りだ。だが、事実、俺がイメージしている魔法剣は言葉通り。話に聞いている様な物とは違う、新たな魔法剣だ。俺は、それを打たせるために、わざわざここ迄やって来たのだから……。
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