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第二章 人間の国

第37話 クロスケール

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 ──ざわざわ。


 俺達がギルドのウエスタンゲートを潜ると、周囲がざわつき始めた。

「おい、あれが噂の大型新人冒険者ルーキー、『独自の物差しクロスケール』だ……」

「相変わらず綺麗だなぁ……ビビちゃん……」

「俺は、何と言ってもアスカちゃんだな! あのクールさが堪んねえ!」

 口々に、俺達を噂する冒険者達。そう。俺とアスカは、これまで誰とも組む事は無かったビビとパーティを組んだ事により、冒険者達の注目を集めていた。その上、ここ数日で目まぐるしい成果を挙げ続けた為に、このギルドでは大型の新人冒険者ルーキーとして更に注目を浴びている。

 ビビとアスカの美貌見た目も相まって、俺達『独自の物差しクロスケール』はこの町のギルドでは話題の中心になっていた。

 因みに、パーティ名の『独自の物差しクロスケール』は、アスカとビビが勝手に登録を済ませた名前だ。俺の名前クロスと、口癖である物差しスケールをかけて決めたらしい。まあ、俺はパーティ名なんて何でもよかったのだが。

「ちきしょう……あんな美人を二人も連れやがって……」

「どうせ、魔物を倒してるのは炎熱姫ビビちゃんなんだろ? あの坊主は只の情夫だって噂だぜ?」

「全く、色男イケメンは得だよなぁ……大した事ねえ癖にB級パーティのリーダーなんだからよ……」

 男達の俺への嫉妬は、日に日に強くなっている様だ。まあ、殆どがビビかアスカのファンみたいな連中なのだが。そんな、馬鹿げた噂話を聞き流していると、知った声が混じっているのに気付いた。

「馬鹿野郎! お前等、何にもわかってねぇ……」

 初日に、少し痛い目にあわせた髭の大男……ゲイルだ。傍らには、例の細いのと太いのを連れている。

「あの連中の中パーティで一番のは、あの坊主なんだよ……。あの、クロスとかいうガキは只者ふうつじゃねえんだ……」

 やられた時の事を思い出したのか、少し恐怖に顔を引きつらせながら、そう、側に居る冒険者達に説明するゲルド。気になってチラリと目を向けただけで、奴は目を反らして下を向いた。

「そんなにビビらなくてもいいのに……」

 苦笑いを浮かべながら、俺は呟いた。そして、それ以上は特に気にする事もなくカウンターへ進み、昨日の成果をバラバラとアリスの前に広げる。

岩壁の巨熊ロック・グリズリーの牙と、ついでに倒した魔物達の戦利品一部です。適当に精算して貰えますか」

「相変わらず、とんでもない戦果ね……貴方達のパーティ。これ、A級の魔物まで混ざっているじゃない。まあ、どう考えても只者じゃないと思ってた所に、灼熱姫ビビさんまで加わったんだから、当然と言えば当然か……」

 驚きを通り越し、もはや呆れに近い表情のアリス。しかし、ビビの奴……結構、有名人なんだな。灼熱姫とか呼ばれてるみたいだし。

「いつも、持ち帰る戦果魔物の一部が黒焦げになっているせいですわ」

 何も聞かずとも、ビビはそう説明した。なるほど。あくまで固有能力ユニークスキルの存在は隠しているらしい。炎系の魔法でも使ったと誤魔化しているのだろう。

 すると、報酬の内容を確認しながら、アリスが問いかけて来た。

「もう、随分稼いだんじゃない? ここ数日で……」

 何気ない、世間話のつもりだったのだろう。だが、俺もちょうどアリスに聞きたい事があったので、好都合だった。

「ええ……。お陰様で、幾らか余裕が出来ましたよ。だけど、俺の目的は金だけじゃないんです」

 当面の生活費は稼いだし、アスカやビビの装備もある程度は整えた。だが、まだ物足りない。俺は、どんなRPGゲームでも十分にレベルを上げてからボスに挑むタイプなんだ。旅を続ける前に、もう少し魔物相手に経験値を積んでおきたい。それに、どうしても手に入れておきたい物もある。

「……アリスさん。スミスと言う鍛冶屋に会いたいんですが、どうすれば会えますか?」

 ──魔法剣。

 武器屋の親父から仕入れた情報だ。俺は、その存在を知った時から、どうしても魔法剣これだけは手に入れたい理由があった……。
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