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第二章 人間の国
第25話 純血と混血
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「──なあ、アスカ。どうして、固有能力の存在を隠す必要があるんだ? 『純血』の中にも固有能力を持つ者はいるんだろう?」
俺は、ベッドに腰掛けるとアスカに尋ねた。
ギルドで、無事に依頼を見繕う事が出来た俺達は、討伐に行くのは明日に回し、宿に戻っていた。ようやく今、これからの行動も指針が決まり、ホッと一息ついた所だ。
「固有能力は、持っているだけでも注目を浴びる……まして、私達はまだ若い。必ず、混血を疑われる」
そう答えながら、アスカは自分の肩に目を向けた。なるほど。確かに、少しでも疑われて、肩を見せろと言われたらお終いだ。何しろ、俺達の肩にある紋様は純血の『星』では無い。お互いに意匠こそ違うが、梵字の様な紋様だ。俺に至っては、レベルが上がると同時に、その意匠は更に禍々しくなっている。
「だけど、何故、ギルドは固有能力を持っているかどうかはチェックしないんだ?」
「固有能力を確認するには、教会の協力がいる。だから、ギルドはそこまで調べない。ギルドは依頼の達成が全てだから。それに、純血の『固有持ち』は、すぐに噂が広まる。自ら、吹聴する者が殆どだから」
なるほど。ようやく理解出来た。どうやら、ギルドと言うのは、そこまで純血には拘っていないらしい。寧ろ、依頼さえこなしてくれるなら、知りたくないと言うのが本音なのかも知れない。それに、純血の『固有持ち』はすぐ噂になる、と言うのもわかる気がする。人と違う能力……そんな物を持って生まれれば、確かに自慢したくなるのが普通だろう。
「ギルドと教会って仲が悪いのか?」
教会の協力が無ければ、固有能力の有無は調べられない。裏を返せば、教会が協力さえすれば済む話だ。なのに、ギルドは教会に頼まない。そこまで拘っていないと言えばそれ迄だが……どうにも引っ掛かる。
「ギルドは良くも悪くも、中立。結果が全ての組織だから。例え犯罪者でも、依頼をこなせば評価される。過去には、亜人を使った事もあるくらい……勿論、混血も」
依頼の為なら、亜人や混血でも使う組織……と言う事か。中々、俺好みだ。しかし、アスカは更に付け加える。
「だけど、それはあくまでギルドだけ。ギルド独自の考え。冒険者達も皆、そうとは限らない」
混血への差別の事だろう。アスカは、少し寂しそうにそう告げた。
「だから、極力隠した方がいいと言う事か。混血を疑われるかも知れない、固有能力の存在は……」
「そう。それに、私達は特に……」
俺は、言いかけたその言葉で思い出した。アスカと同じ、俺の目に嵌められた黒いコンタクト。村を出る時に、アンクから渡された物だ。俺の、紅い瞳が光るのを隠す為に……。
悪魔の子。
やはり、その存在は混血とは比べ物にならないらしい。
「──なあ、アスカ。ギルドのあの水晶、固有能力を見抜けないと知っていたのか?」
俺は、敢えて話題を反らした。アスカは、それに対して淡々と答える。
「あのアリスが言っていた、神の加護……つまり、一般能力。だけど、彼女の言うその神とは『純血教』の神。『純血の神』の加護では、混血の能力を見破る事は出来ない。なぜなら、固有能力は『混血の神』の能力だから」
要点を簡潔に纏め、アスカはそう説明した。
純血の神?
その上、混血の神?
サッパリ理解出来ない俺は、アリスに詳しい説明を求めた。そして、ようやく全てを知る事になる。純血とは、そして、混血とは何なのか。
アスカは語りだす。
その、本当の意味を。
そして、この世界の成り立ちを──。
俺は、ベッドに腰掛けるとアスカに尋ねた。
ギルドで、無事に依頼を見繕う事が出来た俺達は、討伐に行くのは明日に回し、宿に戻っていた。ようやく今、これからの行動も指針が決まり、ホッと一息ついた所だ。
「固有能力は、持っているだけでも注目を浴びる……まして、私達はまだ若い。必ず、混血を疑われる」
そう答えながら、アスカは自分の肩に目を向けた。なるほど。確かに、少しでも疑われて、肩を見せろと言われたらお終いだ。何しろ、俺達の肩にある紋様は純血の『星』では無い。お互いに意匠こそ違うが、梵字の様な紋様だ。俺に至っては、レベルが上がると同時に、その意匠は更に禍々しくなっている。
「だけど、何故、ギルドは固有能力を持っているかどうかはチェックしないんだ?」
「固有能力を確認するには、教会の協力がいる。だから、ギルドはそこまで調べない。ギルドは依頼の達成が全てだから。それに、純血の『固有持ち』は、すぐに噂が広まる。自ら、吹聴する者が殆どだから」
なるほど。ようやく理解出来た。どうやら、ギルドと言うのは、そこまで純血には拘っていないらしい。寧ろ、依頼さえこなしてくれるなら、知りたくないと言うのが本音なのかも知れない。それに、純血の『固有持ち』はすぐ噂になる、と言うのもわかる気がする。人と違う能力……そんな物を持って生まれれば、確かに自慢したくなるのが普通だろう。
「ギルドと教会って仲が悪いのか?」
教会の協力が無ければ、固有能力の有無は調べられない。裏を返せば、教会が協力さえすれば済む話だ。なのに、ギルドは教会に頼まない。そこまで拘っていないと言えばそれ迄だが……どうにも引っ掛かる。
「ギルドは良くも悪くも、中立。結果が全ての組織だから。例え犯罪者でも、依頼をこなせば評価される。過去には、亜人を使った事もあるくらい……勿論、混血も」
依頼の為なら、亜人や混血でも使う組織……と言う事か。中々、俺好みだ。しかし、アスカは更に付け加える。
「だけど、それはあくまでギルドだけ。ギルド独自の考え。冒険者達も皆、そうとは限らない」
混血への差別の事だろう。アスカは、少し寂しそうにそう告げた。
「だから、極力隠した方がいいと言う事か。混血を疑われるかも知れない、固有能力の存在は……」
「そう。それに、私達は特に……」
俺は、言いかけたその言葉で思い出した。アスカと同じ、俺の目に嵌められた黒いコンタクト。村を出る時に、アンクから渡された物だ。俺の、紅い瞳が光るのを隠す為に……。
悪魔の子。
やはり、その存在は混血とは比べ物にならないらしい。
「──なあ、アスカ。ギルドのあの水晶、固有能力を見抜けないと知っていたのか?」
俺は、敢えて話題を反らした。アスカは、それに対して淡々と答える。
「あのアリスが言っていた、神の加護……つまり、一般能力。だけど、彼女の言うその神とは『純血教』の神。『純血の神』の加護では、混血の能力を見破る事は出来ない。なぜなら、固有能力は『混血の神』の能力だから」
要点を簡潔に纏め、アスカはそう説明した。
純血の神?
その上、混血の神?
サッパリ理解出来ない俺は、アリスに詳しい説明を求めた。そして、ようやく全てを知る事になる。純血とは、そして、混血とは何なのか。
アスカは語りだす。
その、本当の意味を。
そして、この世界の成り立ちを──。
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