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第二章 人間の国

第22話 決闘

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「──こ、困った人達ですね……ププ……」


 笑いを堪えるのが精一杯だった。俺は、ちゃんと下手に出た。なのに、こいつ等はしつこく絡んで来た。つまり、これは正当防衛。なんという、わかりやすい展開! これぞ、王道テンプレ

「何、笑ってやがる!」

 微塵も動揺を見せない俺を見て、髭の大男が怒鳴り声を上げた。

「いえ、別に……ププ……」

 ダメだ。堪えられない。わかり易すぎる絡み方が、一層、俺の笑いを誘う。そんな俺の態度に、完全にバカにされたと思ったのだろう。大男は、顔を真っ赤にして怒り出した。

「テメエ! 俺達はB級の冒険者だぞ! 幾ら、テメエの能力スキルがレベル『ニ』だからって、そう簡単にやり合えると思ってんのか!」

「サッサとその女を置いて立ち去った方が身の為ですよ……ククク……」

「か、可愛い……グフフフ……」

 どうやら、アリスとの会話を聞いていたらしい。俺のレベルが『ニ』だと知っても、この態度か……。もしかして、レベル『ニ』ってのは、それ程、凄い事ではないのだろうか。

「『短剣使いショート・ソード』の一般能力ノーマルスキルは珍しい。余り、知られていなくても当然……」

 まるで、俺の考えている事を見透かした様に、アスカか呟いた。なるほど……。やはり、レベル『ニ』と言うのは、一般的に見れば達人クラス。だが、そもそも、その能力スキル自体が認知されていないから、こいつ等に舐められていると言う事か。まあ、【不意討ちサプライズストライク】との合わせ技なんて、普通は想像もしないからな……。

 しかし、わかっていた事とは言え、やはりこいつ等の目的はアスカらしい。さすがに、見過ごす訳にはいかんな。それに、正直、少しカチンと来た。余り、気分の良い話では無い。

 すると、騒ぎを聞きつけたアリスが割り込んで来た。

「ちょ、ちょっと! ギルド内での暴力行為は禁止ですよ!」

「アリスちゃん、正式な決闘なら問題無いんでしょう? 闘技場、空いてますよね?」

 騒動を収めようとするアリスに、痩せ型の男が提案する。

 決闘?

 そんなシステムがあるのか。ちょうどいい。俺は、その提案に乗る事にした。

「アリスさん。その決闘とやらでこの三人を倒したら、B級の依頼を受ける許可を貰えますか?」

「なっ!?」

 傍で聞いていた大男が、思わず声を漏らした。

「そ、そりゃあB級の冒険者三人を相手に勝てるくらいなら、ギルドとしては認めざるを得ませんけど……。でも、幾ら何でも無謀です! 一人でこの人達を相手にしようなんて……。これでも、三人共B級の冒険者なんですよ?」

 慌てて、考え直す様に促して来るアリス。しかし、既に遅かった。

「テ、テメエ~ッ!! 女の前だからって調子に乗りやがって! B級冒険者おれたち実力ちから、思い知らせてやる! 新人冒険者ルーキーだからって手加減しねえからな!」

「そこまで言うからには、私達に負けたら、その女を置いて行くくらいの覚悟はあるんですよね? クククク……」

「グフフ……それ、いいな。女、置いていけ。グフフフ……」

 三者三様に、怒りをあらわにする男達。あくまで、アスカを狙うその下衆な目に、俺は怒りを覚えた。


「──少し利用させて貰うだけのつもりだったけど……やめた。ちょっと、懲らしめてやる」
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