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第二章 人間の国

第20話 アスカの本性

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「あら、凄い。貴方も加護持ちなのね、クロス君。えっと……加護の名は『短剣使いショート・ソード』ね。レベルは……え? レ、レベル……『ニ』!?」


 驚きの表情を浮かべる、アリス。しかし、実は俺も驚いていた。

 自分のレベルが『ニ』になっているのは、知っている。アスカと出かけたあの日、俺はあの後、更に数体の魔物を倒してそれを感じていた。そして、それを裏付ける様に、俺の肩にある紋様も変化している。なので、別にレベルが『ニ』だと言われても驚く事は無い。

 しかし、『短剣使いショート・ソード』と言う一般能力ノーマルスキルを手に入れていたのは知らなかった。しかも、レベル『ニ』。確かに、短剣捌きは上手くなっている様な気はするが。もしかして、一般能力ノーマルスキル熟練度レベル固有能力ユニークスキルに比例しているのだろうか。

 そんな事を考えていると、アリスがプレートを手渡して来た。そして、少し興奮気味に話し始める。

「凄いわね……その歳で加護持ちな上に、レベル『ニ』なんて。しかも、冒険者向きな戦闘能力スキル。見た目も悪くないし……これはもしかして、かなりの優良物件アタリを引き当てたかしら?」

 最後の方は少し聞き辛かったが、何やら、急に色目を使い出したアリス。すると、突然、背筋を冷たい物が走った。悪寒。ふと目をやると、傍らにいるアスカのが輝きを失っている。ドンよりと重い空気を纏い、ジッと無表情でアリスを見つめていた。

「クロスに近付く悪いムシ。殺す……」

 気のせいか、凍えそうな冷たいオーラが見える。開いた瞳孔と同じ、碧い殺気オーラ……。異変を察知したアリスは、慌てて弁解を始めた。

「じょ、冗談よ? アスカさん! わ、私はギルドの担当として、の冒険者を引いたかなぁ~って! あはは! わ、私達にもノルマとかあるからさ……」

 まるで命乞いでもする様に、必死で誤魔化すアリス。だが、それも無理は無い。それ程、アスカの放つ殺気は凄まじかった。

「冗談……そう……。」

 全てを凍らせる様な殺気オーラを収め、アスカはニコリと微笑んだ。その言葉とは裏腹に、特に反省している様子は無い。

「ははは……い、いいのよ。気にしないで。はははは……」

 若干、顔を引きつらせて応えるアリス。相当、恐ろしい物でも見た後の様な表情だ。おそらくもう、彼女はアスカには逆らえないだろう。何故か、そんな気がする。

「──クロス。手続きは終わった。行きましょう」


 短く、そう促して来るアスカを見て、俺は思った。もしかして、彼女は、余り怒らせてはいけない種類の女ヤンデレなのかも知れない、と──。
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