19 / 44
第二章 人間の国
第19話 神の加護
しおりを挟む
「──わかりました。では、銅貨二枚ですね。必要な項目は私が読み上げますので、口頭で答えて下さい」
そう言って、俺が置いた銅貨を確認すると、アリスは必要な項目の聞き取りを始めた。
名前。
出身地。
今までの経歴、等々。
当たり障りの無い質問が続く。出身地は少し言い辛そうにしていると、アリスは、気を効かせてそれ以上は追求しなかった。意外と、自分の出自を隠したがる冒険者は多いらしい。犯罪者でも罪を償えば、冒険者としてならやり直せる。そう揶揄される程、荒くれ者が多い冒険者には珍しくない事なのかも知れない。
「はい、これで必要な情報の登録は大体オッケーね」
思いの外、アッサリと情報の登録は終わった。これで一安心と胸を撫で下ろしていると、アリスが傍らに置いてあった水晶を持ち出す。そして、それを俺達の目の前に置くと、説明を始めた。
「後は、ステータスの確認ね。これで、冒険者登録に必要な手続きは最後よ」
そう言って、ニッコリと微笑むアリス。更に、その説明を続ける。
「この水晶に手を翳せば、神の加護や熟練度がわかります。教会の水晶程、詳しくは出ないですけどね。お二人共、教会の洗礼は受けていますよね?」
神の加護?
能力の事だろうか。
それに、教会の洗礼って何の事だ?
「洗礼を受けていないと、どうなるんですか?」
何気ない俺の質問に、アリスは眉を潜めた。しかし、すぐに冗談だと思ったらしい。
「どうなるって……。洗礼を受けていない人間なんて、いる筈が無いからわからないわ。さ、さっさと終わらせちゃいましょう。ここに手を翳して」
真剣に取り合わず、そう促して来るアリス。俺は、迷った。おそらく、俺はその洗礼とやらを受けていない。しかし、ここで拒否するのも怪しまれる。何とか、冒険者としての資格だけは手に入れたい。
そんな事を考えて俺が躊躇していると、横からアスカが割り込んで来た。そして、何の躊躇いもなく、その手を水晶に翳す。
すると、置かれていた水晶が輝き始め、その横に置いてあるプレートに文字が浮かび上がった。アリスがそのプレートを取り上げ、まじまじと見つめる。そして……。
「あら、凄い。アスカさんはその歳で『料理』の加護を受けているのね。レベルは『一』。加護持ちなんて、羨ましいわ……」
アリスは、そのプレートをアスカに手渡しながら、そう告げた。このプレートが、この世界では自分の身分を証明する物になる。
「お疲れ様。次は、貴方の番よ。クロス君」
「……大丈夫。固有能力は表示されない。私達が混血である事も。詳しくは後で説明する」
促すアリスを他所に、すれ違いざまにアスカは、彼女には聞こえない様な声で呟いた。何の事か理解出来ないまま、俺は、アスカの言葉に流される様に水晶に手を翳す。彼女が大丈夫と言うのだから、きっと大丈夫なのだろう。
再び、水晶が輝き始める。そして、アスカの時と同じ様に、文字の浮かび上がったプレートを手に取り、アリスは目を見開いた。
「──あら、凄い。貴方も加護持ちなのね、クロス君。えっと……加護の名は『短剣使い』ね。レベルは……え? レ、レベル……『ニ』!?」
そう言って、俺が置いた銅貨を確認すると、アリスは必要な項目の聞き取りを始めた。
名前。
出身地。
今までの経歴、等々。
当たり障りの無い質問が続く。出身地は少し言い辛そうにしていると、アリスは、気を効かせてそれ以上は追求しなかった。意外と、自分の出自を隠したがる冒険者は多いらしい。犯罪者でも罪を償えば、冒険者としてならやり直せる。そう揶揄される程、荒くれ者が多い冒険者には珍しくない事なのかも知れない。
「はい、これで必要な情報の登録は大体オッケーね」
思いの外、アッサリと情報の登録は終わった。これで一安心と胸を撫で下ろしていると、アリスが傍らに置いてあった水晶を持ち出す。そして、それを俺達の目の前に置くと、説明を始めた。
「後は、ステータスの確認ね。これで、冒険者登録に必要な手続きは最後よ」
そう言って、ニッコリと微笑むアリス。更に、その説明を続ける。
「この水晶に手を翳せば、神の加護や熟練度がわかります。教会の水晶程、詳しくは出ないですけどね。お二人共、教会の洗礼は受けていますよね?」
神の加護?
能力の事だろうか。
それに、教会の洗礼って何の事だ?
「洗礼を受けていないと、どうなるんですか?」
何気ない俺の質問に、アリスは眉を潜めた。しかし、すぐに冗談だと思ったらしい。
「どうなるって……。洗礼を受けていない人間なんて、いる筈が無いからわからないわ。さ、さっさと終わらせちゃいましょう。ここに手を翳して」
真剣に取り合わず、そう促して来るアリス。俺は、迷った。おそらく、俺はその洗礼とやらを受けていない。しかし、ここで拒否するのも怪しまれる。何とか、冒険者としての資格だけは手に入れたい。
そんな事を考えて俺が躊躇していると、横からアスカが割り込んで来た。そして、何の躊躇いもなく、その手を水晶に翳す。
すると、置かれていた水晶が輝き始め、その横に置いてあるプレートに文字が浮かび上がった。アリスがそのプレートを取り上げ、まじまじと見つめる。そして……。
「あら、凄い。アスカさんはその歳で『料理』の加護を受けているのね。レベルは『一』。加護持ちなんて、羨ましいわ……」
アリスは、そのプレートをアスカに手渡しながら、そう告げた。このプレートが、この世界では自分の身分を証明する物になる。
「お疲れ様。次は、貴方の番よ。クロス君」
「……大丈夫。固有能力は表示されない。私達が混血である事も。詳しくは後で説明する」
促すアリスを他所に、すれ違いざまにアスカは、彼女には聞こえない様な声で呟いた。何の事か理解出来ないまま、俺は、アスカの言葉に流される様に水晶に手を翳す。彼女が大丈夫と言うのだから、きっと大丈夫なのだろう。
再び、水晶が輝き始める。そして、アスカの時と同じ様に、文字の浮かび上がったプレートを手に取り、アリスは目を見開いた。
「──あら、凄い。貴方も加護持ちなのね、クロス君。えっと……加護の名は『短剣使い』ね。レベルは……え? レ、レベル……『ニ』!?」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】
Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。
でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?!
感謝を込めて別世界で転生することに!
めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外?
しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?!
どうなる?私の人生!
※R15は保険です。
※しれっと改正することがあります。
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる