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第一章 転生

第12話 岩壁の巨熊

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 ──名もなき村、郊外。


 アスカに案内された、村から程近い山間部。この辺りでは一番、危険と言われる地域らしい。つまり、魔物が多いと言う事だ。

「……本当にそれで大丈夫?」

 心配そうな顔で、アスカが俺を見上げる。『それ』と言うのはおそらく、俺が武器として選んだ短刀これの事だろう。アンクから譲り受けた、使わない短刀。銘も何も無い、量産品に類する品だ。

「ああ。剣なんて使いこなせ無いからな。これくらいがちょうどいい」

 どうせ、まともにやり会う訳では無い。不意討ちになら、この方が適している。小回りも効くし。

 俺はあの後、アスカに無理を言ってこの場所を教えて貰った。本当は一人で来るつもりだったのだが、付いてくると言って聞かないアスカに、仕方なく同行を許した。この短刀は、アスカを守る為に必要だという事でアンクに持たされた物だ。その時も、大剣で無くて良いのかと散々言われたのだが。

「心配するな。魔物が現れたら俺が対処する。アスカはその辺りに隠れてろ。いいと言うまで出て来るなよ?」

 アスカも、魔法は使えるらしい。この世界での魔法は、能力スキルでは無い。一般能力ノーマルスキルと同じで、鍛錬によって身に付けるそうだ。だが、殆どはやはりレベル『一』。所謂、初級魔法と呼ばれる物だ。強力な魔法を使えるのは、どちらかと言うと固有能力ユニークスキルで身に付いた魔法が多いらしい。

 そして、混血が恐れられる理由の一つ。それが、混血は殆どの場合、この固有能力ユニークスキルを身に付けて生まれて来ると言う事にあるらしい。アスカも何らかの固有能力ユニークスキルを持つそうだが、聞く限り、回復ヒール系の能力スキルみたいだ。

 そんなアスカを、心配しないようになだめていると、岩陰から一体の獣が姿を見せた。

《グオオオオオオオオオオオオッン!!》

 熊?

 一瞬、そう見えたその獣は、俺達を見つけると、雄叫びを上げながら立ち上がった。デカい。四足歩行の状態では気付かなかったが、ゆうに三メートルはある。そして、その巨体から俺達を見下ろし、睨み付けて来た。

「……岩壁の巨熊ロックグリズリー

 目を見開き、アスカは呟いた。

「魔物なのか……?」

 魔物と獣の境界線。それは、その魂にあると言う。魔物はこの世界の神の元へ還り、獣は土に還る。よくわからんが、この世界では常識らしい。

「……魔物。とても、凶暴な」

「なら、倒しても問題無いな」

 魔物の魂は経験値になる。つまり、レベルアップに近付く。俺は、その為にここ迄来たんだから。


「──アスカ、下がってろ……」

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