10 / 44
第一章 転生
第10話 忌み子
しおりを挟む
「──私も……混血。忌み子なの」
目を反らし、悲しそうに呟くアスカ。
これまで、この紋様が原因で辛い思いをして来たのかも知れない。なんて声をかけて良いのか、わからない。そんな俺の様子を見て、アスカはシャツを整えながら話し出した。
「……この村、廃れてるでしょ?」
ここに来る前に俺がした話。あの時は『仕方ない』の一言で片付けられた。しかし、今度は話してくれるみたいだ。
「この村で暮らす人……皆んな、私と同じ。混血……」
村人全員が混血?
つまり、ここは『混血者の村』と言う事か。廃れた村。『仕方ない』と言う、アスカの言葉。ここまで聞けばピンと来る。
「つまり、ここは混血であるが為に差別され、追いやられた人達が暮らす村……と言う事か?」
「……ん」
コクリとアスカは頷いた。
なるほど、そう言う事だったのか。
「……驚いた。純血は、私達に近付かない。それなのに貴方は、ビアードさん達について来た。記憶が無いと聞いて、一度は納得した。でも、もしかしたら奴隷狩り……あいつ等の偵察かも知れないと疑っていた。それが……」
「それがまさか、自分と同じ混血だとは思わなかった?」
余りアスカが思い詰めない様、俺はわざと戯けて答えた。俺を疑った事に、罪悪感があるのだろう。なにしろ、結果だけ見れば、自分の仲間を疑ってしまったのだから。
「……ごめんなさい」
アスカが深々と頭を下げる。
「気にすんな。寧ろ、教えてくれて有り難いくらいだ」
冗談っぽく笑って見せる。それを見て、アスカの表情が少しだけ和らいだ。俺は敢えて、軽い調子のまま話を戻した。
「しかし、忌み子……混血と言うのは、そこまで嫌われる存在なのか? たかが迷信だろ?」
俺の問いに、少し平静を取り戻したアスカが答える。
「忌み子が災いを齎す……これは真実。歴史がそれを証明してる」
相変わらず簡潔な回答。だが、最初よりは随分、話してくれる様になった気がする。しかし、歴史が証明って……。実際に、災いを齎した事実があると言う事か? だが…
「まあ、俺は自分の『物差し』でしか物事を測らないけどね」
その災いとやらの原因が、本当に忌み子だという証拠は無い。なにしろ、俺はこの目で何も見ていないのだから。
「自分の……見た物でしか……信じない……」
何やら衝撃を受けたのか、ブツブツと俺の言葉を繰り返すアスカ。
「おい、どうした?」
「ハッ! あ、いえ……その。嬉しい……な、と……」
慌てて我に帰るアスカ。何故か、耳まで赤くして照れている。俺が歴史を信じなかったのが、そんなに嬉しかったのだろうか。
「まあ、いい。それよりアスカ。俺はこの世界について、殆どの記憶をなくしちまった。混血の件みたいにな。暫く世話になる間、色々教えてくれないか? この世界の事……」
この村にそう長居する気は無い。だが、人間が住む町に入るまでに、色々と知っておいた方が良さそうだ。この世界の常識も含め、俺は知らない事が多過ぎる。
「……勿論。私の知る事は全部……クロスになら」
辿々しいが、もはや普通に話をしてくれる様になったアスカ。やたら、頬を赤らめているのが気になるが……。まあ、いい。暫くこの村で情報を集め、旅の支度を整える事にしよう。
目を反らし、悲しそうに呟くアスカ。
これまで、この紋様が原因で辛い思いをして来たのかも知れない。なんて声をかけて良いのか、わからない。そんな俺の様子を見て、アスカはシャツを整えながら話し出した。
「……この村、廃れてるでしょ?」
ここに来る前に俺がした話。あの時は『仕方ない』の一言で片付けられた。しかし、今度は話してくれるみたいだ。
「この村で暮らす人……皆んな、私と同じ。混血……」
村人全員が混血?
つまり、ここは『混血者の村』と言う事か。廃れた村。『仕方ない』と言う、アスカの言葉。ここまで聞けばピンと来る。
「つまり、ここは混血であるが為に差別され、追いやられた人達が暮らす村……と言う事か?」
「……ん」
コクリとアスカは頷いた。
なるほど、そう言う事だったのか。
「……驚いた。純血は、私達に近付かない。それなのに貴方は、ビアードさん達について来た。記憶が無いと聞いて、一度は納得した。でも、もしかしたら奴隷狩り……あいつ等の偵察かも知れないと疑っていた。それが……」
「それがまさか、自分と同じ混血だとは思わなかった?」
余りアスカが思い詰めない様、俺はわざと戯けて答えた。俺を疑った事に、罪悪感があるのだろう。なにしろ、結果だけ見れば、自分の仲間を疑ってしまったのだから。
「……ごめんなさい」
アスカが深々と頭を下げる。
「気にすんな。寧ろ、教えてくれて有り難いくらいだ」
冗談っぽく笑って見せる。それを見て、アスカの表情が少しだけ和らいだ。俺は敢えて、軽い調子のまま話を戻した。
「しかし、忌み子……混血と言うのは、そこまで嫌われる存在なのか? たかが迷信だろ?」
俺の問いに、少し平静を取り戻したアスカが答える。
「忌み子が災いを齎す……これは真実。歴史がそれを証明してる」
相変わらず簡潔な回答。だが、最初よりは随分、話してくれる様になった気がする。しかし、歴史が証明って……。実際に、災いを齎した事実があると言う事か? だが…
「まあ、俺は自分の『物差し』でしか物事を測らないけどね」
その災いとやらの原因が、本当に忌み子だという証拠は無い。なにしろ、俺はこの目で何も見ていないのだから。
「自分の……見た物でしか……信じない……」
何やら衝撃を受けたのか、ブツブツと俺の言葉を繰り返すアスカ。
「おい、どうした?」
「ハッ! あ、いえ……その。嬉しい……な、と……」
慌てて我に帰るアスカ。何故か、耳まで赤くして照れている。俺が歴史を信じなかったのが、そんなに嬉しかったのだろうか。
「まあ、いい。それよりアスカ。俺はこの世界について、殆どの記憶をなくしちまった。混血の件みたいにな。暫く世話になる間、色々教えてくれないか? この世界の事……」
この村にそう長居する気は無い。だが、人間が住む町に入るまでに、色々と知っておいた方が良さそうだ。この世界の常識も含め、俺は知らない事が多過ぎる。
「……勿論。私の知る事は全部……クロスになら」
辿々しいが、もはや普通に話をしてくれる様になったアスカ。やたら、頬を赤らめているのが気になるが……。まあ、いい。暫くこの村で情報を集め、旅の支度を整える事にしよう。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】
Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。
でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?!
感謝を込めて別世界で転生することに!
めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外?
しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?!
どうなる?私の人生!
※R15は保険です。
※しれっと改正することがあります。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる