9 / 44
第一章 転生
第09話 混血
しおりを挟む
「──あ、貴方……混血なの?」
驚きの表情で聞いて来る、アスカ。
混血?
一体、何の事だ? さっぱりわからない。この世界では、常識の知識なのだろうか。やはり、記憶を失くしているという事にしておいて良かった。遠慮なく、その辺りの話を尋ねられる。
「混血って一体、何の事だ? この紋様に何か関係あるのか?」
「記憶……無いのね……」
思い出して冷静になったのか、少し悲しそうにアスカは言った。少しだけ沈黙か流れ、アスカが再び口を開く。
「……説明する。ついて来て」
そう言ってアスカは歩き出した。無言で俺もついて行く。向かった先は小さな小屋、アスカの暮らす家だった。
「……入って」
短く促され、家に入る。木板で囲まれただけの簡素な小屋。隙間だらけの壁板から、暮れかけた夕日が射し込んでいる。部屋の真ん中に置かれた丸テーブルを挟み、二つある椅子に対面で座る。アスカはそれを見て、小さく息を吐いた。
「……混血。それは、異種族間に出来た子供」
相変わらずシンプルな説明。俺は、その言葉から情報を推理する。
異種族……つまり、異なる種族。確か神の話では、この世界の種族は大きく分けて三つ。
人間。
亜人。
そして、魔族。
確か、この三種族だ。亜人や魔族は、更に細かく種族が分かれているらしい。
そして、この種族の垣根を越えて産まれてきた子供。文字通り、異種族の間に出来た子供。それが、混血。ここまでは容易に理解出来る。
「この紋様との関係は?」
俺も、要点だけを尋ねた。
「純血は……星の形。混血は……紋様」
短く、答えだけを言葉にするアスカ。だが、要点を捉えているので、十分わかる。
つまり、純血……同じ種族同士の間に出来た子供には星。異種族の間に出来た子供には紋様。この世界では、そんな法則で、タトゥーの様な物が刻まれているのだろう。おそらく、産まれた時から。
「ここまでは理解した……と思う。でも、アスカは何故、そんなに驚いてるんだ?」
混血ってそんなに珍しいのか? いや、そもそも俺のこの体、混血なのか? 自分の体の事なのに、俺は何も知らない。その辺の話、もう少し詳しく神に聞いておけば良かった。そんな事を考えていると、アスカが俺の問いに答えた。
「混血は、忌み子。……悪魔の子。災いを齎すと言われている。だから……嫌われる」
苦しそうに、悲しそうに話すアスカ。なるほど……混血はこの世界で嫌われているのか。だから、言い難かったのかも知れない。
「なるほどな……つまり、俺は忌み子。災いを齎す悪魔の子だから、あんなに驚いていたという訳か」
気不味い空気を振り払う様に、俺はわざと明るく答えた。何も気にして無いと言う素振りで。
確かに、災いを齎すとかいう悪魔の子が、自分の近くにいたら驚くだろう。この世界では、こういう迷信が根強いのかも知れない。少し寂しいが、この村には、長居しない方が良さそうだ。しかし、そんな俺の考えをアスカが見透かす。
「──違う!」
いつに無く、ハッキリと。短いが強い口調で、アスカは俺の言葉を否定した。
怒りに近い、そんな感情が見え隠れする。無表情なアスカが目に涙を浮かべ、訴えかける様に俺を見つめる。
そして、無言でシャツを開けると、自らの肩口を顕にした。そこから覗き見える白い肌に、俺は、自分と同じ様な紋様を見つける。
「──私も……混血。忌み子なの」
驚きの表情で聞いて来る、アスカ。
混血?
一体、何の事だ? さっぱりわからない。この世界では、常識の知識なのだろうか。やはり、記憶を失くしているという事にしておいて良かった。遠慮なく、その辺りの話を尋ねられる。
「混血って一体、何の事だ? この紋様に何か関係あるのか?」
「記憶……無いのね……」
思い出して冷静になったのか、少し悲しそうにアスカは言った。少しだけ沈黙か流れ、アスカが再び口を開く。
「……説明する。ついて来て」
そう言ってアスカは歩き出した。無言で俺もついて行く。向かった先は小さな小屋、アスカの暮らす家だった。
「……入って」
短く促され、家に入る。木板で囲まれただけの簡素な小屋。隙間だらけの壁板から、暮れかけた夕日が射し込んでいる。部屋の真ん中に置かれた丸テーブルを挟み、二つある椅子に対面で座る。アスカはそれを見て、小さく息を吐いた。
「……混血。それは、異種族間に出来た子供」
相変わらずシンプルな説明。俺は、その言葉から情報を推理する。
異種族……つまり、異なる種族。確か神の話では、この世界の種族は大きく分けて三つ。
人間。
亜人。
そして、魔族。
確か、この三種族だ。亜人や魔族は、更に細かく種族が分かれているらしい。
そして、この種族の垣根を越えて産まれてきた子供。文字通り、異種族の間に出来た子供。それが、混血。ここまでは容易に理解出来る。
「この紋様との関係は?」
俺も、要点だけを尋ねた。
「純血は……星の形。混血は……紋様」
短く、答えだけを言葉にするアスカ。だが、要点を捉えているので、十分わかる。
つまり、純血……同じ種族同士の間に出来た子供には星。異種族の間に出来た子供には紋様。この世界では、そんな法則で、タトゥーの様な物が刻まれているのだろう。おそらく、産まれた時から。
「ここまでは理解した……と思う。でも、アスカは何故、そんなに驚いてるんだ?」
混血ってそんなに珍しいのか? いや、そもそも俺のこの体、混血なのか? 自分の体の事なのに、俺は何も知らない。その辺の話、もう少し詳しく神に聞いておけば良かった。そんな事を考えていると、アスカが俺の問いに答えた。
「混血は、忌み子。……悪魔の子。災いを齎すと言われている。だから……嫌われる」
苦しそうに、悲しそうに話すアスカ。なるほど……混血はこの世界で嫌われているのか。だから、言い難かったのかも知れない。
「なるほどな……つまり、俺は忌み子。災いを齎す悪魔の子だから、あんなに驚いていたという訳か」
気不味い空気を振り払う様に、俺はわざと明るく答えた。何も気にして無いと言う素振りで。
確かに、災いを齎すとかいう悪魔の子が、自分の近くにいたら驚くだろう。この世界では、こういう迷信が根強いのかも知れない。少し寂しいが、この村には、長居しない方が良さそうだ。しかし、そんな俺の考えをアスカが見透かす。
「──違う!」
いつに無く、ハッキリと。短いが強い口調で、アスカは俺の言葉を否定した。
怒りに近い、そんな感情が見え隠れする。無表情なアスカが目に涙を浮かべ、訴えかける様に俺を見つめる。
そして、無言でシャツを開けると、自らの肩口を顕にした。そこから覗き見える白い肌に、俺は、自分と同じ様な紋様を見つける。
「──私も……混血。忌み子なの」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】
Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。
でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?!
感謝を込めて別世界で転生することに!
めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外?
しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?!
どうなる?私の人生!
※R15は保険です。
※しれっと改正することがあります。
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる